エリさん
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非常に面倒である。
幼馴染のミヤビでさえ、話を聞かなくて厄介なのに、生徒会長であるエリさんはもっと厄介存在であった。なにせエリさんはこの学校でトップクラスの実力者である。
エリさんは何食わぬ顔で教室へ入ってきた。クラスメイトたちは驚きの声をあげた。
ていうか、自分の影響力を理解してほしいと思う。
こら、俺にベタベタ触るな。……もういいや。
「え、なんでエリ様と仲良くしてるの!?」
「雲の上の存在じゃん……、まって、眩しくて見れないって!」
「や、やば、綺麗……。天使……」
「マサキ……、エリ様と知り合いだったのか」
「ていうか、超親しそうだね」
「うん、お姉ちゃんと弟って感じで尊いわー」
エリさんはこの帝国の大貴族の令嬢であり、超レアのスキル【魔帝】の持ち主だ。【魔帝】がどんなスキルか知っている人は少ない。エリさんはめったに本気を出さない。
一般人で田舎者の俺が関わっていい人じゃない。
「あらあら、すぐに出ていくから安心してほしいわ」
「マジっすか、早く出ていって下さいよ。……Fクラスにエリさんが来たらみんな緊張してヤバいでしょ」
「えへへ、もぐもぐ……」
ヒカリはおやつを食べながら満足そうな顔をしていた。
あれは帝都で人気のクレープじゃねえか!? なんだってそんなもの教室に持ってきてるんだよ。……あれか、アイテムボックス持ちか。
エリさんは常識が通じない。ていうか、四帝全員、常識が通じないと思う。
これは全員と面識がある俺だから言えることだ。
はぁ……、どのくらい強いのかわからないけど、ぶっちゃけ司祭よりも強いと思う。
『――エリ・マシュマロの表面的な強さはA−ランクと推測します。ですが……実力が見えない部分が多数存在します。先の女神教との戦いではSランクしか使えない『エンシェントノヴァ』を放ちました――』
マジか、古代魔法っすか。
ていうか、システムさんはその戦いを把握してるんだ。
『はい、悪魔を通して情報を入手しました』
俺がシステムさんとそんなやり取りをしていると、エリさんが俺の肩を組んできた。
顔が近いって、やめろって! 俺は年上興味無いんだよ! 純粋で地味な子がタイプなんだよ!
「あらあら、恥ずかしがらないでね。もう行くから安心して欲しいわ。あっ、このクラスの生徒さん達に伝えたい事があるわ――」
「なんだよ、嫌な予感しか――」
もう敬語もどうでもいいと思ってきた時に、エリさんは爆弾発言を教室に落とした。
「私、エリ・マシュマロと円卓ガールズはマサキ・セキグチを全面的に支援するわ。ふふ、これは生徒会の公式発表と思って構わないよろしくね。マサキ君の敵は私の敵……、よろしくね」
「はっ?」
俺は開いた口が塞がらなかった。
生徒たちも驚き過ぎて声が出せないでいた。
そして、エリさんは言うだけ言って颯爽と去っていった。
協力って……、エリさんは俺と女神教の関わりに気がついているのか?
はぁ……、面倒だけどちゃんとお断りをしなきゃな。
エリさんたちを危険に晒す必要ねえし。
エリさんが爆弾を落としたあと、クラスメイトたちが俺に殺到してきた。
「なんでエリ様と知り合いなんだ!」
「ていうか、マサキって強かったの?」
「おいおい、ブラフかよ、まあ俺は知ってたけどな」
「エリ様と付き合ってるの? 協力関係って……学校の勢力図が変わっちゃうじゃん!」
「マサキ派閥ができるのか……」
「すげえな、Fクラスの星じゃねえか」
くそ、面倒だな。とりあえず適当に返事をしてこの場をやり過ごす。
だが、エリさんと付き合っているのだけは断固否定しておいた。
誤解は嫌だからな。絶対付き合いたくない。
生徒達を適当にあしらっていると教室の端っこで俺を見ているジャイアとサナエの姿が見えた。
本当は、俺が教室に入った瞬間駆寄ろうとしたのは知っていた。エリさんがいたから戸惑って動けなかったようだ。
今も、クラスメイトに囲まれている俺を見ているだけで近寄ろうとしない。
少しだけ寂しそうな顔に見えた。
俺は生徒たちを引き剥がして、いつもみたいに大声でジャイアに声をかけた。
「おう、ジャイア! 昨日はよく死ななかったな! マジ頑丈じゃねえか!」
俺がそう言うと、ジャイアの顔がパッと明るくなる。
ジャイアは嬉しそうに大声で俺に言う。
「がははっ! 俺様は頑丈だからあれしきの事問題ない! き、貴様は怪我は……」
サナエが深呼吸をして、一拍置いて俺に近づいてきた。
少し顔を赤らめて嬉しそうな声で俺に言う。
「ふ、ふん、あんた怪我はなかったの? ていうか、あのあと逃げるなんてマジ駄目でしょ? 先生ブチ切れてたよ」
「そうか、だって取り調べとか面倒だろ。それに先生はどうでもいいよ。あっ、サナエ、お前よくあの司祭の前で口答えしようとしたな。マジすげえよ。尊敬するぜ」
「ば、馬鹿、そ、そんな事ないよ……、わ、私は……あんたの心配を――」
「まあいいか、お、そうだ、ジャイアとサナエにこれやんよ。ギルド長からもらったお守りだ」
俺はポケットから小さな魔石を取り出した。
ギルド長からと言うのは嘘で、俺が魔石に魔力を注ぎ込んだものだ。
これがあれば、もしも俺が遠く離れている時に二人に何かあっても問題ない。
「お、俺にくれるのか……、ふ、ふん、悪くない魔石だ。あ、ありがとな」
「う、ん……、すー、はー、……う、嬉しいよ。あ、あ、ありがとう」
うん、二人とも練習の成果が出てるみたいだな。
他のクラスメイトの視線も柔らかくなっている。昨日の女神教の襲撃が良い方向に向かった。
――だが、俺は女神教を許さない。子供を攫って洗脳するなんて――鬼畜の所業だ。
「あっ、マサキ、ロリコン先生が来たよ。早く席に着こう!」
「ああ、ヒカリは可愛いから気をつけろよ」
先生は教室に入ってくるなり俺を見て、超絶嫌そうな顔をしていた――
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