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じじい

 頭が混沌して頭痛がひどいのじゃ……。

 意識が朦朧とする……


 わし、ゼンジはスバル様が子供の頃から従者をしてるのじゃ。

 異世界人とダークエルフの末裔であるわしらは肌が黒くて魔法と隠密に長けた種族なのじゃ。

 森で平和な暮らしをしていたのじゃ。

 だが、街に出稼ぎに出ていた若者が帰ってきてから種族の様子がおかしくなったのじゃ。


 女神教の布教――


 明らかに怪しい宗教が種族に蔓延したのじゃ……。気がついた時にはもう遅かったのじゃ。

 わしもスバル様も女神教を信じておらん。

 だが、スバル様の母親であるミキ様が……、女神教の司教として――


 いや、今更言っても仕方ないことじゃ。

 スバル様は女神教に絶対服従のポーズを取りながら、ミキ様を正気に戻す方法を探していた。


 そんな時、大司教であるベスタ・デリ・フルーチェから王系スキルの探索を依頼されたのじゃ――





 ふと、頭の混沌が収まり、身体の痛みが収まった。

 少しずつ目を開けると、目の前には――わしを叩きのめした武人がいたのじゃ。

 見た目は普通じゃが、漂う覇気が今朝と比べ物にならない。


 ――こいつはマジでヤバいのじゃ。ランクの法則が全く当てはまらないのじゃ。

 通常、Fランクであるこの武人がBランクであるわしに勝てるはずがない。

 ランクが一つ違うだけで、その差は別次元になるのじゃ。

 BランクであるわしはAランクのスバル様に絶対勝てない。


 なのに、この武人は――


「おお、起きた? 生きててよかった。ていうか、刃物向けた時点で自分にも返ってくるって覚悟してるもんな、多分」


 ぼやけた目がだんだんと焦点があってきた。

 武人の隣には、わしを石で叩きつけたおなごがいるのじゃ……。あの時は殺気を感じられず躱すことが出来なかったのじゃ……。

 ……あの石の攻撃がなければ態勢を整えて反撃できたのじゃ。なんという戦闘センスなのじゃ。

 二人の横にはうさぎと犬が二本足で立っていた。

 うさぎはけだるそうに剣に寄りかかっている。

 犬は偉そうに腕を組んで仁王立ちをしている。


 ふぉっ!? わしは二匹を見ておしっこちびりそうになったのじゃ!?

 た、魂の格が明らかに違うのじゃ! す、推定でAランクオーバー……いや、Sランクに近い実力じゃ……。底が見えん……人外級なのじゃ。

 身体が震えて声が出せない……。た、助けて……。


「ねえねえ、マサキ、これから何するの?」

「んあ? まあ俺を襲った理由と、女神教について聞く感じかな?」

「きゅきゅ? 自白魔法使うの?」

「ふふ、そんな事しなくても偉大なるご主人の前では全てまるっと話してくれるのだ!」


 わしは深呼吸をして恐怖を押し殺す……。きっとスバル様はこいつらに殺されたのじゃ。

 女神教を出し抜いて王系スキルを奪い取る作戦じゃった……。

 くっ、従者であるわしが生きる理由がないのじゃ……。


 ふぅ……。腹をくくったのじゃ。スバル様がいないこの世界など必要ない――


「ん、なんだ? じじい……やんのか?」

「面倒きゅ……、ビビアン、黒男をだしてやるのね」

「ふむ、ご主人から許可をいただけたら――」

「ああ、いいぞ、どうせ尋問する予定だし」

「しからば、【放出】」


 犬が小さな手を振りかざすと、漆黒の闇が現れた。

 そして、闇から二人の人間が放り出された――


「ス、スバルさ、ま……、ま、まさか、生きているとは……、ぐっ、じ、じいは……じいは……」


「……ゼンジ爺……心配、かけたな……」


 わしは敵前なのに嬉しさで涙が止まらなくなった。意識が朦朧としているスバル様を抱きしめながら泣き続ける。

 ……わしを打ちのめした武人たちは何もせず、ただ待っていてくれた……感謝するのじゃ……。




18時にもう一回更新します!

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