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ガラスの教室  作者: おこた
第1章「1ページ目からの停滞」
4/4

4.待機時間

俺たちはまだ体育館付近で待機している。クラスが発表されたのはいいが、その後どうするのかは指示が出ていないようだ。俺より先に来ていた新入生も他へ移動せずにお友達と喋っているようなので、そういうことだろう。喋りたいだけかもしれないけど。まあ、落ち着かないのか昇降口の方まで走って向かっている輩もいたが、まだ昇降口は解放されていないらしく、ほとんどの新入生はここでしばらく待たされることになるだろう。もうちょっと遅く家出てもよかったな。

「しっかし、待ち時間長いねー」

真央は言う。彼は両手を腰に当ててつまらんといった様子だった。そうだな。けど、もうしばらく待つんだよ。待ち時間が長い理由としては、単純に入学式までの時間が余っているということ。あとは、制服のサイズがちょっとでかいから着心地が悪い。さらに恥ずい。ということで、俺にとっては割とこの待ち時間は苦痛であった。よって待ち時間が長く感じるというわけだ。聞こえるのは生徒たちの声と車の走行音くらいで、とにかく退屈だ。そして時折聞こえてくる女子たちの笑い声が余計に退屈さをと羨ましさを強調してくれた。なんであそこにいる女子は楽しそうにしてんのに、俺らは突っ立ってるだけなんだ?とでも言いたそうな顔を真央は作っていた。俺も同感だよ。

「...話題がないんだよな」

返事をしないのは良くない。俺はとりあえず退屈な理由のひとつを述べた。

「同じく」

...。

「だから待ち時間長く感じるんだぞ?話題がないなら作るのがコミュ力お化けだよ」

「そうだね。じゃあ、次期コミュ力お化けの明様、わたくしたちに話題をお与えください〜」

「俺がなりたいんはコミュ力お化けじゃなくて陽キャなんだよな...まあどうでもいいけど」

「おう。陽キャってなりたくてなるもんじゃないし、コミュ力お化けも十分陽っぽいけど。で、何話す?」

「話題ないんだよなあ」

佐藤家の奥義、話題がないということを話題にする低度なテクニック。

「そんなんわかっとるわ話題よこせや」

「おん?敬意が足りんぞ。ま、話題欲しいのは俺も一緒だし別にいっか。適当に誰かに話してみるとかは?」

と言うと、真央は宇宙人に出会ったけど本物なのが信じられなくてリアクションに困っているというような反応をした。

「...お前、それ...。コミュ力お化けであるお前にしかできんだろうな」

「真央もついてくんだよ。ひとりになったらいかん」

「とかいってるけど明、本当はひとりだと陰キャ発揮して話しかけられんからついてきて欲しいんだろ?んもー明ってやつはしょうがねえな俺もついてってやるよ。けど話しかけんのはお前だからな俺はついてくだけだぞあと俺も話題に参加したいからそこはよろしくコミュ力お化けさん頼むぞ」

「突如長文こわ。あと次期コミュ力お化けじゃねえのか?」

「細かいなあ。嫌われるよん?」

「誰に?」

「いろんな人。とくに音葉ちゃんとか?」

「あん?」

そこで音葉の名前出すなよ。性格悪いだろお前。嫌われたくはないから細かいところは気にしないことにする。

「...んで、誰に話しかける?」

「そうだなー。もう結構メンバー固まってる感じかな?やっぱりやめとくか」

「んーお前逃げんなよ?」

逃げてないもん!だって知らん奴にいきなり話しかけられたら気持ち悪いだろ!というようなことを真央に伝えると、

「じゃあ明は気持ち悪いんだね。そっか、残念だなー。音葉ちゃんに報告しておくねっ」

「やめろい!てかなんで音葉なんだよ!」

「えー?からかうために決まってるやん。みんなー、明気持ち悪いらしいよー」

「やめろって言ってるだろ...、いや、まあお前にバラした俺が悪いのか」

「そうだよ。こういう風になりたくないなら最初から言わんほうがいいぞ」

お前...、お前が教えろって言ったじゃんか。それか、友達の頼みでも自分が嫌なら断っていいんだよってことを教えてくれてるのか?...やっぱお前いい奴だな。

「まひろくんありがと〜!」

「えっ...」

「ごめん明、俺ちょっと用事できちゃったから行くわ。また後でな」

「逃げんじゃねえ。せっかく感謝の気持ち伝えようととしたのに」

逃げようとした真央を捕まえた(声で)。すると、奴はこんなことを言い始めた。

「いや、だって、突然そんなありがとうとか言われると...、きもいよなお前だと」

「あ?」

ちょっと傷ついたぞ今のは。本気じゃないのは分かってるけど。...本気じゃないよね?

「だ、だって...。明、気持ち悪いんだもん」

「まだそれ引きずるのか!」

まあいい。とにかく、今は誰に声かけるかが重要だ。

「んー。ぱっと見、話題を欲してそうな人はいないかな。...あ」

「ん?」

「普通に話題思いついたぞ!」

真央はなんかの公式を見つけたみたいに自慢げに話題の内容を漏らした。

「音葉ちゃんのことだよ!」

「...」

ふむ、確かにその話題なら話すことは多い。やつは公式にどんな名前をつけるか考えているようで、めっちゃテンションが上がっている。マヒロの公式かね。というか声でかいんだわ君。誰かから反応きたら逃げますよ僕は。

「...えっと...、うん、いい話題じゃないかな...?えと、その...明くんはどうかな?」

「ん?...音葉の真似してる?」

「よく分かったねー」

「お前、さすがになめてるだろ、全然似てねえぞ。そんなにうんとかの単語使ってないし、音葉はそんなに間長くない。恥ずかしいとき以外」

「おお、詳しそう。じゃ、しばらくはこれで時間稼ぎする?」

「いいねー(棒)」

真央は俺の棒読みを無視して、音葉についての話題で時間をつぶすことを決定した。

「えー、では。俺は言うて音葉ちゃんのことあんま分かってないから、ちょっと教えてもらおうかな」

一瞬、音葉ちゃんのことあんま好きくないって言うのかと思った。いくらお前でも許さんところだった。

「そうね。何から話していくべきか...」

「えーと、お題出そっか?」

「おねがいします」

「おっけー」

こういうのはある程度お題を予想して答えを考えておくことが大切だ。そりゃそうや。さて、真央のほうはというと、割とちゃんとお題を考えているようだった。音葉についてということだから、音葉を知るために知っておいたほうがいいことの中でより優先度が高いものを選んでいるように見える。そう見えるだけで、どんなお題なら俺を恥ずかしくできるかとか考えているかもしれない。

「準備できたよー」

お。できたようだ。

「かかってこいっ」

「えーでは。音葉ちゃんの特徴とか」

「特徴?」

「例えば、どういうとこがかわいいのかとかさ」

あー。うん。理解しました。

「しばらくお待ちください」

「おう。ていうか話すこといっぱいあったからお題請求したんじゃなかった?」

「いやそうだけど。どれを説明するかっていうのを」

「あね。じゃできるだけはやく頼むー」

真央くんが待ってくれてるから、期待に応えなきゃ...!やっぱり個人的にすごく惹かれたところを出すっていうのもいいんだが、俺の性癖かもしれんし、マニアックすぎたみたいな可能性もある。無難なとこから攻めるかな。

「それでは、いきます。初手は外面からね。まず、声がかわいいです」

「おお、そこか。やはり明氏は目のつけどころが違うな...」

「ちょっと子どもっぽさが抜けてない感じというか。そこがとてもかわいらしいということですね。音葉は美しい系とかわいい系で言ったらかわいい系ですし、子どもっぽい声というのが音葉のかわいさや愛らしさを引き立てていると考えます」

「...なるほど...、深いね」

「んな深いかねえ。まあこれは言うて誰でもわかるやろ」

「そっか...!これは期待が高まりますね」

「プレッシャーやめろ。じゃ次。髪です」

「ほう?」

「個人的に、セミロング?っていうのか?が好きなんですよ。まあ音葉を好きになったからってのもあると思うけど、あの丈が最高なんよ。もうね、あれでポニテやられたら死んじゃうよまじで」

「あー!それは分かるかも。ポニテいいよね」

「うん。実を言うとぼくポニーテールだいすき」

「うんうん、音葉ちゃんのポニテ、いい感じだな」

「」

「...、想像してみただけでござるよ...?」

「他の人の好きな子で想像すんのかよ」

「なんだよ、悪いか?」

「まあ、悪いんだよなあ...」

「えーなんでだよー!いいじゃんそんくらい。想像しないって脳に命令させるのは不可能やで」

「んー。しょうがない...」

想像するなってのは厳しかったな。すまん。

「ていうか想像ってどういう想像だと思ったん?」

「あー、俺は、...、興奮したのかなあって...」

真央が俺の発言を理解しようと頑張ってくれているようだ。数秒後、真央は口を開いた。

「いや、お前、やってんのかよ!ちょっとびびったわ!」

「おい待て、どういう解釈したん?」

「お前が音葉ちゃんでしちゃってるって話だろ?」

「...その通りや」

「うおーまじか!実際にやってますって告白はあんまされねえからなんか新鮮だわ!」

「もういいよ、ここまで知られたらもう隠すもんなんてねえよ!」

「ほう?なら、いろいろきかせてもらいましょう!」

こうして地獄のインタビューが始まったのだー。

「じゃーまずは、どういうシーンでやっておりますか」

「そりゃあ...、まあ、えっちしてるとこだよ」

「具体的にどうぞ」

「具体的に?どうやろな...。最近は音葉が上かな...」

「うーわ、かすやん。だいぶかすやん、お前、音葉ちゃんにそんなことさせてんのかー。いくら本人じゃないとはいえ、それはちょっと引くかも」

なんなんだまじで、きくだけきいといて。これからは自己責任やぞ。

「いや、だいたいみんなそんなもんじゃないの?やりたいって思ってやってるわけだから、自分のシチュ想像すんのは当たり前だろ」

「当たり前かは知らん。けど、そういうもんなのかー」

そういうことだ。ってことにする。これ以上話が発展されると厄介だから、この辺で元の話題に話を戻しておきたい。

「脱線しちゃったし、続きしようぜ」

「えーいやだ!もっとききたい〜」

「うるさいのう。今度話すから今は話戻そうぜ」

「しょうがねえ...後できくからなー?忘れたとか言わせんぞ」

「わかったわかった。えーと?髪の話ね。そう、ポニテが良きって」

「そうねえ。で、これわかりあえるか分からんけど、どういうのが好き?結ぶ高さとかテールの長さとか」

あれテールて言うんか?

「でもそういう細かいとこはあんま考えたことないなあ。ちょっと時間くれ。......」

妄想タイムに突入した。目は瞑らんが、音葉のことならそこまでしなくても深い妄想に浸れる。

「てかポニテまじでいいんだが。今日イメチェンしたとかでしてきてたとかいったら倒れるかもしれん」

「倒れろそしたら。俺が保健室まで連れてってやる」

「...お前も一緒に倒れてくれる?」

「まあ可能性としては確かにあるね。わからんけど。つまり音葉ちゃんを狙ってないもしくはポニテが性癖じゃないメンバーを集めねーと」

「んー、蒼とかでいいんじゃね」

「たしかに、やつは恋とか興味なさげだもんな」

いい感じに区切りがついたと思ったので妄想に戻る。

「いや、そこで話終わらせんのか。ええけど別に」

「.........ととのいました」

「その心はっ!」

「結ぶ高さはまあ耳より上かな。んで、長さの判定はなかなか微妙やが、セミロングのポニテってやったらどれくらいになるかってのがわからんけど大体うなじくらいでは?」

「お、お前...!やっぱわかりあえるじゃねえか!」

「え、ま?」

「うむ。ぼくとおなじでふ」

語尾えぐ。

「(。´-ω-)」

「d(˙꒳˙* )」

「じゃーこれでひとまず終わりにする?」

「えー?もっとあるだろなんか」

「いやいい感じに時間つぶせたやん。それにちょっと前に昇降口に突っ込んでった猛者とかおったし」

「まあね。お前が恥ずいだけなのは分かるが」

おおうエスパーおる。

「ええやん。とりあえず音葉の話は終わりよ」

「りょーかい。そっちもまた今度聞くわ」

「いつになることやら...」

「ん?いや明日とかだぞ?」

「んん?」

「おう」

いつもなら真央はそういうのはすぐ忘れるもんなんだが、今回はそうはいかないらしい。話題考えなあかんやんけ。

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