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僕らのおはなし  作者: 私さん
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なりたい自分

「Hi master!お久しぶりデス!」

「おおっ!トムさんいらっしゃい。その方達は?」

「演劇メンバーでっせ!ようやく集まったネ!」

「それはよかったねえ。」

トムはこの店のマスターと話し込んでしまった。

残ったメンバーはどうしていいかわからずただテーブル席に座っている。

「財布おじさん、名前なんだっけ?」

えりなちゃんだ。

「佐藤…健…です。」

「なにそれ、平凡すぎて逆に覚えにくい…。佐藤とか阿部並みにクラスに2、3人いるような名字じゃん。」

自分もそう思う、と思ったが口にしない。

それを言ったら全国の佐藤さんと阿部さんに失礼だ。

「Oh no!つい話こんジャタネ!エート、…名前忘れたヨ。」

俺の方を見て言っているから俺の名前を忘れたのだろう。

「だよねだよね、そうだよね!名前、覚えにくいよね。そうだよね!」

突然えりなちゃんが立ち上がって大きな声で言った。

「名もなき貴様らは雑魚。いや雑魚以下だ。…仕方があるまいこの私が"命名ノ儀"をしてやろう…!」

「Wow …これが日本のブンカ、チュウニビョウ、ね!」

かっこいいね!とトムが言う。

「まず、トムはMr.トムでしょ、かなえは"かなちゃん“、ちそらは“猫目さま”、聖理奈は“ぽん”花音は“お花”、春樹は“先生”、圭は“おかん”、聡志は“大凶”、優馬は“パリピ”、健は〜…OK。シュガーで行こう。」

「oh あなたもシュガーさんね!親戚イッパイ羨ましいです!」

そっちの砂糖じゃないしあなたが今まで出会ってきた佐藤さんはきっと俺の親戚ではない。と口にしようかと思ったがトムの輝く目を見ると言う気も失せる。

「ちなみに私のことはニトちゃんって呼んでね!ニートだからニト。よろしくねん♡」

誰だお前、と言いたくなるほどの裏声。

「素敵な名前アリガトね!とまあオフザケはここまでにしてオオヨソの計画ハッピョウするよ!1年後にさっきの劇場で公演をシマス!だけどミンナ初心者だし出会ったばかりね。お互いのことを知るために2週間後のゴールデンウィークでポートレイトやってモライマス!」

「ポートレイトってなんですか?」

ポンちゃんがキョロキョロして周りに聞く。

「自分自身の半生をテーマにして演出も構成も自分で考えて演技をすること。うーん…一人芝居ってやつかな。」

「ohシュガーさん詳しいね!そんなカンジヨ!テーマは“なりたい自分”にするよ!ナンデそうなりたいと思ったのかキッカケもいれてね!アドバイスはするけど基本的には自分でカンガエテネ!練習は劇場の地下でやるよ!8日間あるゴールデンウィークは楽しい楽しい合宿をシマス!その最終日にみんなの前で発表ネ!OK?」

なんだかんだ言って本格的だ。

「細かいショウサイはメールするよ!なるべく練習にはサンカしてね!今日は遅いし解散にするよ!」

Mr.トムがそう言ってお辞儀をしたのにつれてみんなお辞儀する。それぞれ帰り支度を始める。

俺も帰ろうと思い支度を始めると後ろから声をかけられた。

「あのさ〜シュガーくん、いきなりで申し訳ないんだけど、お家に止めてもらえないかなあ?」

「大凶さん…どうしたんですか?」

「ほら、俺いまホームレスでさあ…。」

「あー…すごく申し訳ないんだけどうち、妻と子供いるから…」

「そっか〜ごめんね。」

グオオ〜と大きな音でお腹を鳴らしている。

「今日も劇場で寝泊まりするかあ…。」

もしかして勇太が聞いた声の主は大凶だった気がしてきた。

「あの、家には入れられないけど、コンビニ弁当ぐらいなら買うよ?」

「え、本当⁉︎」

「うん。それぐらいしか出来ないけど…。」

「あああありがとうございます!」

手を握ってブンブン振り回してくる。

「あの〜うち、泊まります?」

控え目な声。オカンだ。

「え⁉︎…オカンって大学生だよね?彼女とか家に呼べなくなるよ?いいの⁉︎」

「彼女いないし作る予定すらないしなんせこの童顔だしおまけに身長159㎝だし…。あ、自分で言ってて辛くなってきた。」

「え、本当に居候するね!ありがとうオカン!」

オカンは自分の言ったことに凹んでいるし大凶は居候できるところを確保し喜んでいる。チグハグな2人だ。

「さすがに大学生って言っても親の仕送りとかバイト代で生活してるよね?オカンの生活資金、少しは寄付するから…。」

「ありがとうございます。助かります…。」

「今日の食料買ってくよ。ただ、大凶もバイトしなよ。」

「はーい。」

やる気のない大凶の返事だが今はその返事を信じるしかない。

近くのコンビニで2人分の晩ご飯を買った。

その2つをオカンに渡すと「俺の分まで…」と感動された。

2人を見送った後そのまま家に帰った。

家に帰ってから自分の夕飯を作らないといけないことに気が付いたが時計を見たらちょうど日付が変わっていて作る気も失せたのをいいことに一杯飲んで寝ようとビールを開けて椅子に座った。

「なりたい自分…ねえ。」

勢い良くビールを煽った。



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