小さなまじょとさがしもの
小さなまじょが 歩いて行きます
ひょこひょこひょこひょこ 歩いて行きます
黒くて高い とんがりぼうし
かぶって ひょこひょこ 歩いて行きます
右手ににぎった 小さな木のつえ
まじょは ひょこひょこ 歩いて行きます
ひょこひょこ 歩いた その先には
何やら さがしている おじいさん
「おじいさん おじいさん 何かを さがしているの ですか」
「ああ まじょさん わしはね」
まじょに 答える おじいさん
「ばあさんが かわいがっていた 小鳥を にがしてしまったよう なのじゃ 家の どこを さがしても いない ばあさんが がっかりする前に 見つけて やりたいのじゃ」
まじょは ちょっと 考えてから 軽く 木のつえを 一ふり
そして、おじいさんに こう言います
「おじいさん おじいさん あなたは とても つかれています 一度 家に帰って みませんか いいこと あるかも しれませんよ」
「うーん」
考えこんだ おじいさん でも 小さなまじょの 言うとおりです
「わかった いったん 帰ってみるよ」
家に帰った おじいさん
ゆっくり とびらをあけますと そこには 笑顔のおばあさん
「おじいさん おじいさん どこへ 行っていたんです わたしも ピッピも 待ってたんですよ」
えっと思って 見てみれば おばあさんの肩に 青い小鳥
さがしていた 青い小鳥
「え えーと 何で ピッピが ここにいるんじゃ」
やっぱり 笑顔のおばあさん
「ああ 今日は暑かったでしょう まどの近くに ずっといたんですよ カーテンのかげに かくれていたのね」
「そうかそうか」
おじいさんも 笑顔になります そして 思いました
「まじょさん ありがとう あなたの言うとおり 家に帰ったら いいことが あったよ」
小さなまじょが 歩いて行きます
ひょこひょこひょこひょこ 歩いて行きます
肩からくるぶしまである まっ黒なふく
着こんで ひょこひょこ 歩いて行きます
先っぽが 大きく上を向いてとがった 黒いくつ
はいて ひょこひょこ 歩いて行きます
ひょこひょこ 歩いた その先には
お店の前で さがしものする おねえさん
「おねえさん おねえさん 何かを さがしているの ですか」
「ああ まじょさん わたしは」
まじょに 答える おねえさん
「夫から贈られた 大事なかみかざりを こわしてしまったの とても 大事なものだから 同じものがないか さがしているの」
「それで 見つかりましたか」
「さがしているけど ないの こわれてしまったかみかざりは 異国で作られた とてもめずらしいもの ここの町では なかなか 手に入らないみたい」
とても悲しそうにしている おねえさんの顔を見た 小さなまじょ ちょっと考えてから 軽く 木のつえを 一ふりします
そして おねえさんに こう言います
「おねえさん おねえさん あなたは とても つかれています 一度 家に帰って みませんか いいこと あるかも しれませんよ」
「うーん」
考えこんだ おねえさん でも 小さなまじょの 言うとおりです
「わかったわ いったん 帰ってみるね」
家に帰った おねえさん
ゆっくり とびらをあけますと だんなさんが テーブルの上で 何かしています
「どこへ 行っていたの 今ね 新しいかみかざりを 作っているんだよ」
「え 新しいかみかざり」
「こわれてしまったかみかざりは もう直せないけど 分解してみたら どういうつくりか わかったんだ 材料なら この町でも 手に入るから 新しく 作っているんだよ」
「そうだったの」
「でね」
だんなさんは ちょっとはにかんで 言いました
「糸を通すところが ちょっと むずかしいんだ 君は ぬいものが 上手だから いっしょに 作ってくれないかな」
「うん」
おねえさんは 笑顔で うなずきました そして 思いました
「まじょさん ありがとう あなたの言うとおり 家に帰ったら いいことが あったよ」
小さなまじょが 歩いて行きます
ひょこひょこひょこひょこ 歩いて行きます
ふたつのひじからかざりの下がった まっ黒なふく
着こんで ひょこひょこ 歩いて行きます
小さな白い花のかざりのついた とんがりぼうし
かぶって ひょこひょこ 歩いて行きます
ひょこひょこ歩いた その先には
森のまわりで さがしものする 木こりのおじさん。
「おじさん おじさん 何かを さがしているの ですか」
「ああ まじょさん わたしはね」
まじょに 答える 木こりのおじさん
「大事な商売道具の おのを なくしてしまったのだよ あれがないと 仕事ができない 急いで 見つけないと」
とてもあせっている 木こりのおじさんの顔を見た 小さなまじょ ちょっと考えてから 軽く 木のつえを 一ふりします
そして きこりのおじさんに こう言います
「おじさん おじさん あなたは とても つかれています そこの切り株に こしかけて 休んでみませんか いいこと あるかも しれませんよ」
「うーん」
考えこんだ 木こりのおじさん でも 小さなまじょの 言うとおりです
「わかった ちょっと 休もう」
木こりのおじさんが 休んでいると 「ワンワン」という鳴き声が 聞こえてきました
「あれは うちで 飼っている ペスじゃないか」
ペスは ちょっとだけ 木こりのおじさんの顔を 見ましたが 「ワン」と一声ほえると どんどん 森のおくに 入っていきます
「おいおい ペス どこに 行くんだよ」
木こりのおじさんは あわてて ペスの後を 追いかけます
ペスは とても大きな木の下の草むらの近くで 止まると また 一声 「ワン」とほえました
「この草むらを さがせと言うのかい あっ」
そこには 木こりのおじさんが なくしたおのが あったのです
「ふふふ わたしとしたことが こんなところに 忘れていったのか」
「それにしても」
木こりのおじさんが 見上げた先には とても大きな木がありました
「なんて 立派な木だ これなら いい材木が たくさん 取れそうだ」
木こりのおじさんは おのを ふり上げます
「ワン」
ペスは そんな木こりのおじさんの ズボンのすそを かんで 止めます
「何をするんだ ペス 木が 切れないじゃないか あっ」
ペスが 見ている先 そこは とても大きな木に たくさんの木の実がなって それを 鳥たちが 食べていたのです
「ふふふ この木を 切ってしまっては鳥たちのごはんが なくなってしまうか わかったよ この木を 切るのはやめよう」
ボト ボト
その時 とても 大きな木から 大きな木の実が 二つ落ちてきました
「ふふふ 切らなかったお礼 というわけか」
木こりのおじさんは 笑顔になりました そして 思いました
「まじょさん ありがとう あなたの言うとおり 休んだら いいことが あったよ」
小さなまじょが 歩いて行きます
ひょこひょこひょこひょこ 歩いて行きます
すると 声がします
「小さなまじょ 小さなまじょや」
小さなまじょが お空を見上げると そこには 大きなまじょさまの顔が ありました
大きなまじょさまは 小さなまじょのお師匠様 とてもやさしい人です
「大きなまじょさま こんにちは」
「こんにちは 小さなまじょ あなたは 何かを さがしていたのですか」
「いいえ 大きなまじょさま わたしは 何も さがしていませんでした」
「そんなことは ありませんよ ほら」
大きなまじょさまが 大きなつえを 一ふりすると いろいろな画面が うつりました
笑顔で おばあさんと 青い鳥のピッピと 話す おじいさん
笑顔で だんなさんといっしょに 新しいかみかざりを 作る おねえさん
笑顔で おくさんといっしょに 木の実を 食べる 木こりのおじさん
となりでは ぺスが おのを見つけた ごほうびに もらったほねを かじっています
「ああ わたしは この笑顔をさがしていたんですね 大きなまじょさま」
小さなまじょが そう言うと 大きなまじょさまも 笑顔になりました そして こう言いました
「そうですよ わたしの大事な小さなまじょ」