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ゴミタローとクズジロー

作者: 明純 直人

ゴミタローさんは駅の清掃員さんです。

今日も朝から駅の階段を掃除しています。


ゴミタローさんはホームレスのクズジローさんと仲良しです。

クズジローさんは駅前の高架線の下に住んでいます。


ゴミタローさんはクズジローさんと駅のゴミ箱の前でよく会います。

ゴミタローさんがゴミを回収するときに決まってクズジローさんが空き缶を漁っているからです。

ゴミタローさんはクズジローさんがゴミ漁りしているのを見るたびに注意するのですが、クズジローは注意をやむやにするためにいつも適当な話題を振ってくるので、ゴミタローさんもいつの間にか仕事をほっぽって、クズジローさんとよくおしゃべりをするのでした。


ゴミタローさんの上司はバイトリーダーのイキリトくんです。

イキリトくんは大学生だけども、仕事の手際がいいのでゴミタローさんよりも年下なのにバイトリーダーの地位にいます。


イキリトくんはゴミタローさんのことを定職につけないゴミだと言っていじめます。

ゴミタローさんは悔しいけど、定職に就けていないのは事実なので、何も言い返せませんでした。


ある日、いつものようにイキリトくんがゴミタローさんをモップの先っぽでつついてなじっていると、クズジローさんがたまたまその様子を目撃してしまいました。


クズジローさんはイキリトくんがゴミタローさんのことを定職につけないゴミヤローだと言っているのを聞くと、顔を真赤にして二人に近づいていきました。


「やいやいやい!人生には色々あるんだぞ!定職についていないくらいで、人をいじめていいと思っているのか?!」

クズジローさんは面識のないイキリトくんに対してつっかかっていきます。


イキリトくんはなにか叫びながらこちらに近づいてくる汚いホームレスに気づき、びっくりしました。


そして、こういう人とは基本的にコミュニケーションが通じないから逃げようと思い、イキリトくんはゴミタローさんとの会話を適当に切り上げて、ゴミタローさんだけを残してその場からいなくなりました。


クズジローさんはゴミタローさんに声をかけると、ゴミタローさんは「うちのリーダー様、変な人来たと思って逃げちまったよ」とクズジローさんに対してケラケラ笑って言いました。


「ああ、あれが前から言ってたリーダー様かい!迷惑かけちまってたらごめんな!!それにしても、怪物でも見たみたいな怯えた顔して逃げてったなあ!そんなに怖がらなくても、別にこっちはなんもできんのに。」と、クズジローさんが返してゲラゲラ笑います。


ひとしきり笑ったあと二人は「じゃあ」と言って、ゴミタローさんはイキリトくんを追いかけて元の掃除の仕事に、クズジローさんは雑居ビルの方に足を向けて空き缶探しにいきました。


その日二人が笑ったのは、後にも先にもその時だけでした。


おしまい。


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