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「2人とも顔を上げてくれ! 私は大したことはしていないぞ」


 ネビアは土下座をしている俺とカナを立たせようと肩をトントンと叩いて立ち上がらせる。

 まさかネビアがあんなに強いだなんて思っていなかった。もしかすると、俺たちの中で1番強いんじゃないか? これならこれからのクエストも楽々にこなせる。大量にクエストをこなせば億万長者も夢じゃない!


 邪な考えを浮かべながらネビアの方を見つめる。


「どうしたムショ? そんなに見つめられると照れるな……」


「なぁにムショさん。もしかしてネビアのパンツでも見えちゃったの? 変態ねぇ」


「なっ、そういう目で見てねぇよ!」


 口に手を当て、ニヤニヤしながら言いたい放題のカナ。それを聞いて頬を少し赤らめて照れている。見当違いの2人に呆れた俺は顔に手を当てて溜息を吐く。

 確かにチラッと見えてはいたが、俺が考えていたのはそこじゃない! 


「それより! さっきのネビア凄かったな。あんなのが出来るなら先に言ってくれたらよかったのに」


「隠してるつもりはなかったのだがな。あれは鍛錬の賜物だ。だが、あまりに敵がいると多用もできないんだ……」


 何か条件でもあるのだろうか? 非常に気になる。

 3人で雑談を交えてつつ話していると、スプリントバッファローが気絶して静かになったおかげで小さな野生の魔物もちらほら出てきた。


 そこに1匹のウサギのような魔物がネビアの後ろの方から近づいてくる。俺たちを警戒しているのか、耳を常に動かしている。ネビアは後ろにいるウサギの魔物に気がついていないようだ。


「おいネビア、後ろにウサギの魔物が——あっ」


「どうした? へにゃ……!」


 ネビアに伝えようとしたその時、ウサギの魔物は高く飛び跳ね、ネビアの背中に弱々しい飛び蹴りを喰らわせた。蹴りを当てられたネビアは俺の目の前に倒れ込んで動かない。


「大丈夫か? 見事な不意打ちを喰らわされたな……ネビア?」


 倒れているネビアに声をかけるが反応がない。あれ? あのウサギは俺でも倒せるくらいの弱い魔物だったはず……。さっきのネビアを見る限り、やられる要素は全くない。


「おーい。大丈夫か?」


「もう……動けない」


 倒れているネビアは小さな声で呟く。何を言っているのか聞き取れなかった俺はネビアの肩を持ち上げて仰向けにする。


「実は、私は耐久力が絶望的になくてな……先ほどのウサギ相手でも、不意を突かれて一撃でも喰らってしまったら使い物にならなくなってしまうんだ……というわけでムショ、背負ってもらえるとありがたい」


 そう言い残すと、ネビアはパタリと動かなくなった。


「紙防御……」


「紙防御でも無職よりマシじゃない。ププッ」


 この女神は一言余計なことを言わないと気が済まないのか……? まぁ実際、無職の俺より役に立っているのは確かではある。


 だが? この女神に言われるのは癪に障る。大体、今の所この女神は俺より遥かに上級職のハーピスト。なのにカニに効果のないスキルを使うわ、ハープを落としてしまうわ。今のところ俺とほぼ変わらないからな!


 馬鹿にしてきたカナを数秒間睨み、その体勢のままネビアを背中に抱える。


「なによ?」


「お前、俺と大して変わらないからな」


「変わるわよ! ねぇ! ちょっと、待ってよムショ!」


 そのままカナをほったらかしてギルドへ帰りました。


 戻った俺たちは受付嬢からスプリントバッファローの報酬を受け取る。本来なら5頭討伐が目的だったのだが、ネビアの活躍により10頭も討伐することができた。支払われた報酬は50万ドール。さらに、数頭のバッファローに高値で取引される部位が多くあった為、プラス30万ドール手に入った。


「大金ですね! 10頭で50万ドールなら大儲けですよ!」


「ああ、頑張った甲斐があるものだ」


「今夜はパーッと飲みましょ! ムショ、良いわよね?」


 期待の眼差しでこちらの返答を待っている。ネビアの頑張りで50万の大金が手に入った。カナも一応頑張ってはいたことだし、許してやるか。


「ああ! 今夜は宴だ!」


 3人から笑みが溢れ各々注文を始める。その間に俺は朝に情報提供してくれた酒飲みのおっちゃんに一言文句を言ってやろうと席へ向かう。おっちゃんは朝と同じ席で楽しそうに飲んでいる。


「おい、おっちゃん!」


 声をかけるとおっちゃんは茹で上がったタコのように真っ赤な顔で振り向く。


「おお! 無職のムショじゃねえか! どぉおしたんだ、ちゃんと飲んでるか?」


「どぉおした——じゃない! 朝おっちゃんから教えてもらった情報嘘だろ! もう少しで仲間が轢かれる所だったんだからな」


 普段なら歳上の人に強く言えない俺だが今なら言える! それに相手は酔っているから強めに言っても問題はない。俺はここぞとばかりに強く言う。


「んぁ? 俺はぁ間違ったことは言ってねぇぞ。ちゃんと言ったじゃねぇか! 走り続けたら疲れるから見つからないようになって……」


「へっ? 疲れるのはバッファローの方じゃないのか!?」


「なに言ってんだよぉ! バッファローが疲れる訳ねぇだろ! 考えりゃわかるだろぉ!」


 しまった……俺の勘違いだったのか……。


「おっちゃんごめん。俺の勘違いだったみたいだ……」


 謝る俺におっちゃんは「ガハハッ!」と笑いながら許してくれた。カナたちの所へ戻ろうとおっちゃんから離れようとした時、おっちゃんは少し悪い顔を浮かべて俺に自分のジョッキを差し出す。


「一杯飲んだら許してやるよ! ほれ!」


 差し出されたジョッキを受け取ると気合を込めて一気に飲み干す。それを見たおっちゃんは豪快に笑い褒める。許してくれたみたいだ。一気に飲んだせいか、それともおっちゃんの飲んでいた酒が強いせいか分からない。どちらにしろ顔が赤くなっているのが自分でもわかる。


「じゃ、悪かったなおっちゃん。飲み過ぎるなよ……」


「おぉ! 無職のムショも今度から気を付けろ! あっ、おいムショ!」


 ふらついた足で席を離れようとする俺を呼び止めるおっちゃん。振り向いて顔を傾ける。


「最近ここいらで四天王の1人が来てるらしいからきいつけろよ!」


「わぁかった! サンキューなぁ!」


 おっちゃんの軽く聞き流し、俺は盛り上がっているカナたちの所へ戻って行った。



 続く










ここまで読んでいただきありがとうございました。気になった方、面白いと思ってくれた方はブックマークと評価の応援よろしくお願いします。ではまた次回お会いしましょう。またね。

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