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02

 気がつくと、俺は見たこともない街の入口に立っていた。

 入口の看板にはリングスの街と書かれている。


 リングスって言う街なのか。RPGで出てきそうな名前だ。


 入口を潜り抜けてあたりを見回してみると、武器やで道具を購入している騎士。

 薬屋で薬草の買い物をしている魔法使いなど、心躍る風景がそこには有った。


「そうそう、これこれ! 俺が期待していたのはこの景色!」


 このワクワク感! 新しいゲームを買ってからプレイする前みたいな感じ!

 俺は胸の高鳴りを抑えながら先へ進む。


 早くギルドに行って冒険者登録だ!

 この武器と共に! 地面に突き刺さっているエクスカリバーを見て思わずニヤけてしまった。


 でも良いんだろうか? 初めからこんなチート武器を持ってしまって。

 でも仕方がない、なにせ俺は転生者! 普通じゃないのが普通というもの。


 突き刺さったエクスカリバーを引き抜こうと、持ち手を掴み力を入れた。

 しかし、エクスカリバーはピクリとも動く気配はない。


「あぁ、そっか。普通剣って重たいんだっけ‥‥さすがに片手じゃ厳しいよな」

 自分の言ったことで納得した俺は両手ならいけるんじゃないかと考えた。 

 腰を据え、両手でしっかりとエクスカリバーを握る。それから勢いよく引っ張った。


 すると、抜くことには成功した。

 だが、持ち上げるのは無理があった‥‥


 ハァ……ハァ————この剣どうなってるんだ?

 あの女神は俺専用の武器って言ってたけど、重すぎてそれどころの話じゃない。


 だが、ここに置いて行くと誰かに盗まれかねない……ハァ。

 俺は重い剣を引きずりながらギルドの場所を知っている人を探す事にした。


 道行く人にギルドの場所を聞くと、街の中心から少し北の方にギルドがあるらしい。


 ギルドに向かっている途中、道行く人が俺の方にチラチラと視線を向いている事に気が付いた。


 その理由はすぐに判った。この剣だ。

 引きずりながら歩いてるがこれは大剣じゃない。

 背中に掛けたり腰の辺りに刺して堂々としているもんだ!


「後であの女神に文句言ってやる! 大体あの女神が——」

 独り言を呟きながら、街にいると言っていた女神を探し出すと決意した。


 歩き続けて数十分後。


「ここだ!」

 冒険者ギルドと書かれた看板の横で俺は力尽きて倒れ込んだ。

 重い剣となれない土地のせいで余計に疲れた‥‥。


自分の辿った道を見ると、エクスカリバーのおかげでしっかりと地面に長い一本線が引かれていた。


 時間をかけて息を整えたところで、入口の扉に手を掛ける。

 中に入って右の方に目をやると昼間から酒を飲んで盛り上がっているパーティ。左の方には討伐依頼の紙を眺めている冒険者一行がいる。


ここがギルド……現実世界ではゲーム画面でしか見ることの出来なかった場所にいるんだ!


「俺も今日からここにいる奴らと同じ冒険者の1人になれる!」

 俺の独り言を横で聞いていた酒飲みのおっちゃんが話しかけてきてくれた。


「おう、兄ちゃんも冒険者志望か! このギルドはここいらで一番デカいギルドだから依頼には困らねぇぞ! それに酒もうめぇ。兄ちゃんが冒険者になったら一緒に一杯やろうや!」

 そう言って応援の言葉をくれた。


「ああ! その時はよろしく頼むよ。一つ聞きたいんだけど、受付って奥の方で合ってる?」


俺はお礼と質問を酒飲みのおっちゃんに言う。


「おうよ! 受付はそこのカウンターだぜ。気張って行けよ兄ちゃん!」

 奥のカウンター指差した後、酔った手で俺の背中を叩いて激励した。

 

「痛って! ありがとう」

背中が痛いけど、こういうのってなんか良いな。


身を引き締めた俺は、カウンターの向かいに座っている受付嬢に向かって出せる分のイケメンボイスで声をかける。

「お嬢さん。冒険者登録をお願いします」


 その5分後、俺は重りの剣と共にギルドの入口で抜け殻のように佇んでいた。



 続く




ここまで読んでいただきありがとうございました。気になったり面白いと感じていただけた方はブックマークと評価をしてもらえると嬉しいです。では、次は第三話 無職でもギルドに登録して良いですか?(仮)でお会いしましょう。またね。

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