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鈴生りに咲く花の彩り。  作者: しっちぃ


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25/33

25.発現

「えー?うーん……、女の子同士ってこと以外は、いつもの加奈子さんが読んでる本って感じしましたね」

「あー……、確かに、私が刺さったのも、そのせいなのかな?知ってる作家さんだったし」


 本当に、よく似てるな、私達。嬉しいけど、何のなぐさめにもならない。一番、同じであってほしいとこ、絶対に同じにならないんだから。


「私もすっごくハマっちゃって……、シリーズのまだあるみたいだし、自分で買って見てみますね」

「いいよ、私も持ってるし……、続きも貸すよ?」

「いいですよ、貸してくれる度に加奈子さんが大丈夫じゃなくなっちゃいそうですし」

「そ、そんなことないって……、でも、紗彩ちゃんの感想は聞きたいかも。一人じゃ持たないかもだし」


 そういう顔も、きっと真っ赤。そういうとこもかわいいし、好き、になっちゃったんだけど。


「じゃあ、それは話しましょっか。……それで、一個気になってるのがあって」

「え、何?」

「私、その、……好きって気持ちが分からないのって、寂しいけど、なんか羨ましいって思っちゃうとこがあって」

「どうして?……私は、ちょっとかわいそうって思っちゃったな。」


 恋なんてしてなかったら、私もそう思ってたかもしれない。無邪気に、誰かに恋できないなんて寂しいなって。もう、そんなこと思えないや。純粋に、恋に憧れられなくなって。悪いことじゃないんだろうけど、こんな風に憧れを捨てたくなかった。……叶うはずの恋なんてしちゃって、それも伝えることもできなくて。


「それは……、何か、その人のこと、ちゃんと見れるから、かなって」

「あはは、恋は盲目なんて言うもんね。……私は、してみたいかな。他のこと、何も見えなくなっちゃうような恋とか」


 無理やりひねり出した言葉に、まっすぐな憧れで返される。やっぱり、加奈子さんらしいや。羨ましいほどに。……でも。

 ……そんなにいい物じゃないですよ、加奈子さん。

 なんて言ったら、その気持ち、伝えるしかなくなっちゃう。まだ、伝える勇気はない。それを出さないといけなくなるのは、多分、本当に追い詰められたとき。例えば、思いついてしまった言葉が、本当に口から零れだしちゃった時とか。


「……紗彩ちゃん、ねぇ、それってどういう事?」


 柔らかい声は、いつもより震えてるように聞こえて。その言葉の意味に気づいて、……どうしよう、私、今、何て。背中から、汗がじわりと浮かぶ。顔だけじゃなくて、体が丸ごと火照ってく。心臓の奥、キュッと縮む。この気持ちに、気づいたときよりずっと。

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