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鈴生りに咲く花の彩り。  作者: しっちぃ


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22.逡巡

 四時間目の終わりのチャイム、もう鳴ってる。ギリギリ、机の上の教科書とノートはこの時間のだけど、ノートなんて取れてるわけが無いや。船を漕いで、時々自分の名前を呼ばれたり、チャイムの音が鳴ったりで気が付いて。今日の分の授業、全部紅凪さんのノート見せてもらわないとな。午前中に、移動教室がなかったのにも救われた。


「紗彩ちゃん、大丈夫?」

「いや、ノート全然取れなかったな、帰ったら見せてくれない?」

「いいよ、最初からそのつもりだったし」


 そういえば、今朝そんな話してたっけ。色々な記憶があやふやになって、浦島太郎にでもなった気分。それでも、さすがに忘れてない。昨日の夜にした、加奈子さんとの約束は。

 お昼の食堂はめちゃくちゃに混むし、購買で何か買ってこよう。ついでに、眠気覚ましになりそうなものも。どうせ食欲もないし、菓子パン一個くらいでどうにかなるでしょ、多分。こっちだって割と混むけど、並ぶだけで十分くらい経つなんてことにはならないし。

 廊下に立つと、さすがに冷えた空気に起こされる。購買のほうももう結構人がいて、人にもまれるだけで、結構疲れる。何となく手に取ったコロッケパンとミルクティーをお昼にして、ミントのタブレットも買って教室まで戻る。

 机に戻ると、押し込むようにほおばって、喉に引っかかったのをミルクティーで洗い流す。加奈子さんはいつもお弁当だし、お昼休みの真ん中くらいにはもういたはず。今から行けば、余裕で間に合うはず。

 借りた時に入れられてた袋を手に、旧校舎に向かっていく。いつもだったら、冷えた空気に急かされるみたいに足早に歩いてるのに、……なんか、今日は足が重い。本だって重くないし、ミントのタブレットを二粒も食べたから、眠気はもうないはずなんだけど。

 昨日まででも、ちょっと長いって感じる旧校舎に続く道が、どこまでも遠くにあるみたいで。それでも、しばらくしたら、着いちゃって。

 二階の部室の前で、また躊躇。そしたら、足音で気づいたのか、内側からドアが開く。


「紗彩ちゃん、こっちおいで?あったかいし」

「あぁ、そうですね」

 

 こんなに緊張したこと、あったっけ。あるとしたら、星花に受験したときくらい。部屋に入るときも一瞬足が止まって、隣の椅子に座るのにもまた躊躇。機種変する前のスマホでも、こんなガクガク止まらないってくらい。

 やっぱり、……好きだな、私、加奈子さんのこと。それも、何よりも深く。少女漫画の主人公にでも、なったみたいな気分。

 

「もう読んだんだ、早いねーっ」


 その返事を出そうとして、もう、喉がカラカラになってる。

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