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13.隘路

 暖房をつけたままの部屋に戻ると、何となく、張り詰めた気持ちが温んだような。まだ、渦巻く気持ちは収まってくれないけど、ほんのちょっとくらいは、落ち着いた、かな。

 本の続きは読みたい、けど、知られる可能性がちょっとでもあるのは、やっぱり、苦手だな。借りてるものだから、お風呂に持っていくにもためらわれるし、今は、テレビを見にいく人で談話室も混んでる時間。ブックカバーでもあればいいんだけど、その持ち合わせもない。

 しょうがないか、そんなデリカシーの無い人だという感じも無いし、もし、その予感が恥れてたとしても、……、他の人から見た『恋』を訊くのも、答えにつながるヒントになるかも。そこまで考えられるくせに、行動に移すのにはまだためらう。


「紗彩ちゃん、今空いてる?」

「まあ、うん、大丈夫。何かある?」


 何をするのかを見つけられない私には、ちょうどいい助け舟だ。女の子らしく恋バナといきたいとこだけど、私も紅凪さんもあいにくまだいない。それでも、何気ない日常の話のし合いでも、けっこう楽しい。久々にランニングしたからちょっと筋肉痛になりそうとか言って笑ってた。体育の持久走とは違うの?って訊いてみたけど、どうやらちょっと違うみたい。私も、今日はちょっと話してみたいことはある。お昼休み、私たちみたいな物好きくらいしか寄らない旧校舎で、明らかに何かあったような二人。……今更だけど、紅凪さんの恋の話とかも聞けるかも。


「そういうの、本当にあるんだ……」

「私も初めてかな、漫画とかだったら良く見るけど、本当にあるって思わなかったな」


 目の前で、頬を赤らめながら俯く紅凪さんを見て、それを見た時の加奈子さんの姿が、ふと頭に浮かぶ。見た目は大人っぽいのに、初心なとこあるんだ。


「わたしも友達で女の子の恋人いるって人いるけど、そういうのは聞いたことなくて……」

「一緒にいた先輩もそんなのだったなぁ、……どうなんだろうね、こういうことするのって」

「何とも言えないけど……、好きになって、我慢できなくなったら、しょうがないのかなぁ……」

「やっちゃダメなんだろうけどさ、……でも、そんなに思えるの、ちょっと羨ましいよね」


 なんか、立ってる場所はおんなじみたい。真っ直ぐで、真っ白な気持ち。私も持ってるはずだけど、今は少しだけ彷徨ってる最中。知らなさすぎて、それが恋かもまだよくわからない。恋するって、どんな感じ?そう訊くには、紅凪さんも経験がないみたいで。


「それ、ちょっとわかるなぁ、それくらい誰かのこと想えるって、どういう感じなんだろ」

「本当にねぇ、……」


 何て、続ければいいんだろう。まだ、私の中に入ってくれない感情は、手に取ろうとするとつるりと滑る。

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