活動報告1
数ヶ月ほど前から、知人からの頼み事を引き受けている。
始めはただただ【面倒くさい】と思うだけであった。
約束をしてしまった以上は、最低でも1度は行く必要があるだろう。その後は、適当な言い訳を並べ行かないようにすれば、その内相手も諦めてくれるだろう。そんな風に考えていた。
そして一番最初の当日。
予め知人から場所と時間は聞いていた。その場所とは自宅から徒歩で数分の場所にあった。自分の行動範囲内の中にこのような場所があると言う事すら、その時に初めて知った。
約束の時間の10分ほど前に現地に到着した私は、その場所の入り口ドアを軽く3度【コンコンコン】とノックをしてみた。
ノックの後、相手方の反応を待ってみたのだが何の反応も無い。
そっとドアノブに手を掛け、ノブを回しドアを開こうとしてみたのだが、どうやら施錠されているようでドアはビクともしない。
私は、時間を間違えたかな?と思い、ポケットの中に入れてあったスマホを取り出し現在時刻を確認してみた。約束の時間の3分前を示している。
施錠されている。中には誰も居ない。このまま帰るにはもってこいな状況が揃っている。私は帰ろうと思った。元々自分から好んで来た場所ではない。ハッキリと言えばヤル気なんて微塵も無かった。
『帰るか!』
そんな気持ちが浮かび上がったのだが、何故かその時の私はもう少しだけ待ってみようと言う、本来の私の性格からしたら、選択する事の無い選択を選んでしまっていた。
私は本来、彼女とのデートの待ち合わせですら5分も待たされたら帰ってしまう。行列に並ぶのは無理。病院は朝一番か午前の最後。そう決めているぐらいに【待つ】と言う行為が出来ない人間だ。そんな人間なのに、この時は何故か待つと言う選択を選んでいた。
入り口の真ん前で待つ事が憚られたので、少し横にズレ腰を落とし歩道にしゃがみこんで待っていた。どのぐらい待っていただろう?少なくともタバコを2本程消費するに要する時間は待っていた。
そんな事をしていると、少し体格の良い優しい顔をしている私と同じぐらいか少し年下ぐらいの男性が建物の角を曲がり、こちらに向かって歩いてくる。男性は私の事を認めると、これまた優しそうな声を発して私に声を掛けてきた。
「もふもふもんさんですか?」
そう問われた私は、頷いて答える。
「お待たせしてしまって申し訳ないです、人を迎えに行っていたのですが、遅れてしまって」
そんな事を私に話し掛けながら男性はドアに掛けられているカギを解錠していく。そのまま私を促すようにドアの中へと消えて行く男性の後に続き私も建物の中へと足を踏み入れた。
建物の中は、20畳程の広さを持つ部屋が広がっていた。
大きなテーブルが1つ。お世辞にも立派だとは言えない応接テーブルとソファのセットが1組。雑多に詰め込まれた本棚が数本。
壁一面に貼られた何かのお知らせやらの紙。
室内は土足禁止だと言うので、私は入り口で自分の履いていた靴を脱ぎ、備え付けられているスリッパに履き変えて中へと進み、所在無さげに突っ立っていると私の後ろ、すなわち入り口から数人の人間が入って来た。
私はその人達の邪魔にならないようにと、自分の立ち位置を部屋の奥へと進めた。
入って来た人達を見てみる。私がこれまで生きて来た中で、スレ違った事はある。同じ空間に居た事もある。けれど決して自分から話し掛けたり、話し掛けられたりする事の無かった人達だった。
彼等・彼女等は、この国において【障碍者】と呼ばれる存在の人達だ。
私は過去に、この【小説家になろう】にも自身の体験を元にした【風俗】にまつわる小説を何点か執筆投稿している。
その過去の体験により、人を外見やその人の在り方で差別的な目で見たり、哀れんでみたり、見下したりするような事は決してしない人間だ。
普通の自分と同じ人間のように、失礼にならない程度に私は人生の中で初めて、これから同じ空間に身を置き、話をするであろう障碍者の方々を見ていた。
そんな人間観察を続けていると、私に最初に声を掛けてきた男性が私を含めた全ての人間に対して、テーブルの周りに置かれた椅子に座るようにと促してきた。
全員が座った事を確認した男性が、私の座る椅子の横に立ち、障碍者の方々に向け声を掛ける。
「今日からみなさんのサポートをしてくださる、もふもふもんさんです、みなさんよろしくお願いしますね」
そう言って私をみんなに紹介してくれた。
私は、椅子から立ち上がり障碍者の方々に向けて。
「もふもふもんです、みなさんよろしくお願いします」
そう言って頭を下げ挨拶をした。
男性からの紹介と私の簡単な挨拶の後、障碍者の方々は私に向けて大きな拍手と共に大きな声で。
「「「よろしくお願いします」」」
そう声を掛けてくれた。
この時点で、私は自分の心の中でこんな風な事を考えていた。
ある意味、健常者と呼ばれる私達なんかより、この人達はもっともっと【純粋】であり私以上に誰かを【偏見】の目で見たりする事など無いんだろうな。と……。
その後は今日の作業の進め方、達成目標等の発表の後にそれぞれが、それぞれの割り振られた作業を進める準備に入った。
私は今、俗に言う【障碍者支援・応援】の為の施設へと来ている。難しい作業のサポートや障碍者の方々への、ほんの小さな手助けをするために。
私は現在、ほぼ毎月のように自分からこの施設に来て、障碍者の方々と同じ作業をする事が非常に【楽しみ】になってきている。月に一度しか訪れない、貴重な時間になっている。
これから、私がここで何をして、障碍者の方々とどう接し、何を感じたのかを【小説家になろう】の投稿と言う形を借りて発表していこうと思う。
賛否はあるだろうが、どうか私と言う障碍者と接する事が一度も無かった、平凡な男が何を感じたのかを発表する事を許して欲しい……。




