プロローグ 銀腕の聖女♂とキュウリ
対して面白くありませんが読んでくれたら嬉しいです!
「聖女様………野菜は何がお好きですか?」
ここは辺境にある教会。その懺悔部屋にて、一人の若い農夫の男がカーテン越しに懺悔ではなく質問を口にしていた。
「野菜ですか……?」
そしてその質問を受けた聖女は返事に困っていた。
目の前のカーテン越しでも分かるほどに鼻息を荒くした男をどうすれば帰せるのか、と。そも、ここは赦しを乞う場所でありアイドルの握手会みたいなものではない。最近増えた、応援しているだとか、好きなものは何かとかそんなことを言ったり聞いたりする場所ではないのだ。
が、わざわざこんな辺鄙な場所にある教会に来た信者を手ぶらで返すことも出来ないので、潔く答えることにした。
「えと……きゅ、キュウリですかね」
「ほぉぉ………エロいですね」
「えっ!?」
何故だろうか。聖女の解答にそんなことを呟いた。きっとこの信者はあらぬことを妄想していたに違いない。太くて、固くて、長いモノを聖女が咥えているところを。だが、この信者は知らない。彼が妄想したソレが今、目の前に居るこの聖女にも付いている事を。
「キュウリなら僕の畑でも育てているので今度、取れ立てを持ってきますね!」
「………あ、ありがとうございます」
伊達に辺境の教会の聖女をやっているだけのことはある。信者のセクハラを笑顔で躱すのだから、それはもう凄いの一言に尽きるだろう。心の中では───
───その腐った妄想を懺悔しろやあぁぁあ!!
───と、思っているのだけれど。やはり、顔に出したりはしないで懺悔部屋から出ていく変態信者を笑顔で見送るのだった。
今日は今ので八十人目。全員がこの聖女───レイル・ノヴァに会いに来た彼の信者だ。そして、皆、さっきのような質問やら応援、果ては口説きにさえ来る。ここは辺境であり、統治国であるサルバリノ王国に行くにも馬を走らせて十日程掛かるにも関わらず、八十人中、二十人はサルバリノの貴族連中だ。しかも、全員が彼を口説きに来ていたのだ。そんな、男にモテまくる彼は今日も精神的に窶れ、教会を閉めるのだった。
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