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俺の青春は灰色のようだ  作者: 赤ワンコ
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第三章 名前3-3

 先輩が視界から消え去った後、俺は決心がつかずその場でうろうろしていた。

 部室に行くのは嫌だ。しかし面接公開処刑も嫌だ。

「…むううぅぅぅぅううううう…」

 俺は見事に五分五分な葛藤に頭を抱える。これがМさんだったら、悦んで部室に突っ込み、彼女たちの足の感触を楽しむのであろうが、悪いが俺にはそんな趣味はない。

 愛なき痛みなど誰得なのか。

「…ぬうううううううう‼」

 結局俺は、今後の人生のことを考え、地獄に自ら足を踏み込むことにした。

「………はぁ」

 なんてこった。ほんの一昨日までは、この部活に入ることが何よりの夢だったはずなのに…今は全くの反対である。

「…ぁ、ノックしなきゃ」

 部室にたどり着き、ドアノブに手をかける直前で、昨日の失態に気づいた俺。 

 まじ天才。

 コンコン。

「入るな」

 なんか早峰さんの声が聞こえた。

「んでだよ‼ノックしただろうが⁉」

「逆になんでテメェの面ァ喜んで拝謁しなきゃなんねぇンだよ…」

「………」

 正論である。

 だがここで帰るわけにはいかんのである。というかせっかく決めた覚悟だ。ここで萎えさせてたまるか。

「もういい。入るぞ‼」

 ガラッ

 ベチャ⁉

「へぶあっ⁉」

「入んなっつったろォが‼なに綺麗にシカトしてやがんだよテメェ‼」

 ………入室そうそう、くっさいびちゃびちゃの何かが俺の顔面に激突した。

 ………………まさかの濡れ雑巾だった…。

「…オイ…貴様…いくら俺でも堪忍袋はあるからな…?」

「なにドアあけっぱにしてやがんだコラァ‼さっさと閉めろやこのスカタン‼」

「あ、はい」

 ………袋は怒号でしぼんでしまった…。

 叱責をうけないよう、静かに静かにドアを閉め、改めて部室を見渡してみる。

 全国大会常連ではない文化部の一つであるのに、まるで校長室のように広いオサレな空間。その広々空間に堂々とした存在感を放っている巨大ソファに、足を組みながら寝転んでいる金髪少女が、剣呑な視線をグサグサと向けてきていた。

「う………あ、橘さんいたんだ…」

 彼女から目をそらしたその先に…一回り小さいソファに、なにやら禍々しい表紙の何かを読んでいる黒髪少女がいた。

「ごめん、うるさかった?」

「…………」

「…なに読んでるの?」

「…………」

「……なにかしてほしいこととか…ある?」

「…………」

 …無視ですかそうですか…。

「おい貴様…なんで俺には奴隷宣言しねぇんだよ?」

 突然見ないようにしていたところから、聞きたくないイラついた声が…。

「…誰が奴隷宣言だ…」

「はぁ?そこの眼鏡になんでもするって言ってただろうが…オラ、あくしろよ」

 ………この女には、逆らわないほうが賢明だろう…。

「…すみませんねお嬢さん。何かしてほしいこととかありますか?」

「死ね」

「直球⁉」

 ど真ん中ストレート‼もう怒りもないよこの野郎‼

「は?お前『野郎』って意味知ってんの?腐ってもこの高校入学してんだろうが。一般常識も理解してないそのスカスカの脳みそでどんな不正入学したんだ?通報するから教えろよ」

「………あの…すみません…。…人のは心というものがあるのでして…ほんの少しでいいので…優しさを見せていただけないでしょうか…?」

「んなもん知るかよ。嫌ならとっととどっか行け」

「…えぇ…」

「それともなにか?俺に態度を改めろって?悪いがコレが俺だ。直すなんて死んでもしねぇからな‼馬鹿め‼」

「………わーったよぅ…我慢する…」

 …はぁ…まぁ、今日はそういう日なのだろう…というか、彼女はいつも猫を被っているわけで、そういうしがらみから解放されるのがこの部活だったはずだ…。仕方ない…のか?

「ただ、死ぬのはアウト。それぐらいの線引きぐらいさせてくれ。ほかになんか…えっと…あ」

 とはいえ、どんな状況でさえ、あこがれだった早峰さんとの会話である。なにか話のネタを探そうとキョロキョロしていると、一式のティーセットを見つけた。

「お茶かコーヒーぐらいなら淹れれるけど…どうする?」

「…………コーヒー」

「おっけ」

「……なんなんだよ…コイツ…」

「あん?なんか言ったkヘブ⁉」

「うっうるせーばーか‼さっさとつくれよばーかばーか‼」

「…はぁ」

 …今日の俺は紳士的だ…運が良かったな…。

 あっという間にすぐに沸く♪ポットでお湯を沸かす間に、コーヒー豆を挽いておく。…つーか何でここまで本格的なのか…インスタントでは先輩の舌を満足させられないと言うのか…。

 なにか一般的な部活の常識がゴロゴロと覆るような気分に浸っているうちに、三人分のコーヒーが完成した。一口飲んで、まぁまぁな出来にホッとする。あまり腕は落ちていないらしい。

「ほら。できましたよお嬢さん」

「……どうも」

「ファッ⁉」

「…んだよ…口をねじ切られてぇのか…?俺でも感謝はするわボケ…」

「あ…あぁ…」

 ………すっげぇ違和感……いや、違う。そうじゃない。

 いつのまにか俺の常識観念がずれていたことに対し、軽い戦慄を覚えつつ、もう一つを橘さんに献上する。

「…一応淹れておいたけど…まぁいらなきゃいらないで…どうぞ」

「………」

 相変わらず無言で『人を支配する100の方法』なる怪書を読みふけっているが、カップを投げつけられなかったので、良しとする。

「…ふぅ」

 散々な目にあったとはいえ、一仕事終えた後というのは気分が良い。淹れたコーヒーで一服しようと、どこかに座ろうとしてはたと気づく。

 …この空間には、三つほど座れる場所が存在している。

 一つは、早峰さんが座っている巨大ソファ。しかし、彼女が大部分を寝転がって占領しているため、座ることはできない。

 一つは、橘さんが座っている。

 そしてもう一つは…橘さんの近くである。

 そんなの無視すればいいのは分かってはいるが、なにやら彼女から発する負のオーラが、俺の進行を精神的に阻んでいる。

 ……どうしよ…?

「………」

「…なにこっち見てンだよテメェ…」

「…………」

「…なにこっちに来てんだよテメェ…」

「……………」

「なに俺の方にケツ向けて座ってんだテメェ‼」

「スワッ⁉」

 さりげなく巨大ソファに座ろうとしたのだが、目ざとく(当たり前とも言う)実況してきた早峰さんに回し蹴りを後頭部に食らった。

 そのまま地面キス。ただしコーヒーは死守。食べ物を粗末にしてはいけない。

「な…コーヒーに波一つたっていない…だと⁉」

「そこの感想を述べるな。具体的に言うともう一回謝罪を要求する」

「はぁ?レディにケツ向けといて謝罪?頭沸いてんのかテメェ?」

 …ブチッ

「…ごめん。さっきの言葉はそこまで怒る要素なかったけど、なんか今までの蓄積のせいでキレちまったよ…いい加減にしろよ?」

「ぅ…フン、知るかよ不純物。関係ないヤツに八つ当たりとかホントクソだな。そんなんだから一生童貞なンだよ種無しが」

「うん。八つ当たりの部分に関しては言い返せないし悪いと思ってるけど、さっきの台詞は俺の怒りのウェイトをかなり占領したぞこん畜生」

「あ゛あ゛⁉実際童貞だろォが文句あんのかゴラァ‼」

「ああ⁉」

「ンだよ‼」

 まさに一触即発。そんな状況に変化を与えたのは、彼女の拳でも、俺の悲鳴でも無かった。


「うえぇ‼…砂糖入ってない…苦いよぅ…」


「「……………」」

 …読書を中断し、コーヒーに手を付けた橘さんの、悲痛な告白だった。

「………ぁ」

 俺たちが、その可愛らしい悲鳴を余さず聞いていたのを、空気から悟った彼女の顔は、みるみるうちに真っ赤になっていき…

「っこ、殺す!我に対する記憶を全て抹消すべくぼこぼこにすりゅう‼」

「ハァ⁉俺まで巻き込むんじゃねぇよ眼鏡‼やるならこのスケベだけにしろ‼」

「スケッ…⁉ぬ、売れ衣だ‼ソファに座っただけなのに‼」

「知らぬわ貴様ら‼うわああああああ忘れろぉぉぉおおおおおおおおおお‼」

「ちょっ襟首掴むなこのオタク野郎‼ボタンが取れちまうだろぉが‼」

「…あ、今早峰さん、女の子に野郎って…」

「いらんことばっかり覚えてんじゃねぇ‼いいぜ眼鏡‼協力してコイツボコボコにしようぜ‼」

「フン‼貴様と共闘するとは業腹だが、仕方ない‼うおおおおおおおおおお響け我が右腕ええええええ‼」

「い、痛い痛い‼いやまって普通に痛いから‼」

「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼」」


「やぁお前ら!私が来るまで大人しくしていたか⁉遅れてすまないな‼大輝には伝えていたが、今日は生徒会があt」


「「「………………………………」」」

「……………」

「「「……………………」」」

「………仲がいいことだな‼私も混ぜろ‼」

「「「誰と誰が仲良いって⁉適当なこと言ってんじゃねぇってうわあああダイブしてくんなぁあああああ‼‼むきゅ⁉」

 ☆

 …今日俺は、三人の美少女ともみくちゃになった。

 ………字面はすげぇ青春してんのに、悲しいかな。

 まったくうれしくねぇよ畜生‼

改めた読み返すと、名前要素あんまりないっすねぇ…

もしかしたら、もしかしたら、題名変えるかもしれません…すみません。

新規作家だもの♪大目にみててね♪

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