第2話 着飾ってみた事
面接は、正午過ぎからだった。それで僕は少し早起きをして、シーナの居る機織小屋に向かった。彼女には生まれた時から両親がなく、物心がついた頃には織り娘だったという。だから、彼女は機織小屋に住み込んでいた。
シーナは、織り娘仲間で唯一同年代のケイトに手伝ってもらって、服を選んでいる所だった。否、実際はシーナにはそんなに何着も服を所有するだけの財産的なゆとりがあるわけもなく、どうやらケイトから貸して貰う物らしかった。ケイトについては僕は詳しくは知らないのだが、週に数回、織り娘以外の仕事を入れており、そちらの稼ぎが可也いいらしい。ケイト自身は、僕から見ても美形の範疇に入る少女で、シーナは時々そのことを羨望していた。だからと言ってシーナがケイトを妬んだり嫉たりすることはなかった。それは、シーナの性格からくるところも大きいのだが、ケイトが十七という年齢にして少女らしさを保持していない事に大きく起因していた。僕はケイトとはそれほど仲が良いと言う訳ではないのだが、それでも、彼女は僕等とは少し違う、大人の雰囲気を持っているのが解った。彼女は度々、僕等のような人間を、見守るような、時には蔑むような眼差しで見ているのを僕は知っている。だから、僕はケイトとは決して親密な関係にはなれないだろうとは思っているが、シーナにとってはいい相談相手になっているようだった。
シーナは、少し大人びて見える服装をした。普段よりも少し長めのスカート、落ち着いた感じの色合い。トビ色の、肩よりも長い髪は首の後ろの所で結い、普段しない化粧をした。
シーナは姿見の前で幾度も自分の姿を確認した。くるっと廻ってみたり、少し上目遣いにしてみたり。それから、小さく溜息を吐いた。
「こんなくらいが限界かなあ…」
シーナが言った。
「あたしとしては…」ケイトが言った。「できるだけ綺麗に見えるようにしたつもりだけど」
シーナは大きく二、三度、かぶりを振った。
「そうじゃないの。折角着飾ってもらっても、素材が素材だから…このくらいが限界なのかな、って思ったの」
ケイトは、ふうん、と漏らした。
「確かにあなたは美人じゃないね。でも、悪くもないと思うけれど」ケイトは化粧道具を片付け始めた。「あんまり気になるようだったら、あたしの所にまた相談においで。少しはましになる方法を教えてあげるよ」
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