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変神 - へんしん -  作者: ぼを
11/15

第11話 今の僕にできる事

 結局、鍛冶屋には定刻に到着した。主人は、僕の元気のないのを気にかけてくれた。僕は普段の倍も働いた。

 僕は、シーナを迎えに行く気になれなかった。またあの青年を見るのが怖いと思ったからだろう。然し、迎えに行かなければ、シーナを機織小屋まで送り届けるのはあの青年なのだ。

 仕事が終わってもすぐに帰宅する気になれず、僕は自宅界隈の小さな商店街に足を運んだ。街中には行きたくなかったが、出来るだけ多くの人に紛れていたいと思った。巧い具合に、今日は丁度、小さな商店街ではあるが、市が立っており、普段よりも賑わっていた。食料品の問屋や、普段は出ていない露店商の声が中々威勢良く、なんとなくではあるけれど、気分が晴れてくるような気がした。

 数ある露店の中に、装飾品を扱う店を見つけた。銀製の腕輪や、首から提げる物が主だったが、商品の中に、この辺りでは珍しいと思われる、真珠色に鈍く光る小さな巻貝をあしらった耳飾を、一対、見つけた。値札を見ると…今の所持金では、手が出ない。

 まだ、シーナの誕生日を祝う饗宴への参加を決めた訳ではない。けれど、仮令参加しなくても、個別でシーナに贈り物が出来るといいと思ったのだ。

 僕は、鍛冶屋に戻った。そして、まだ片付けをしている主人に頼み込んで、半月分の給金を前借させて貰った。主人は何の不平も漏らさずに貸してくれたが、一言、お前さんの様子を見ていると心配だ、後悔のない使い方をしろ、と添えてきた。僕は適当に首肯した。

 果たして、僕はシーナの為に、巻貝の耳飾を入手した。僕はまるで、戦場にて敵陣の旗を取り上げたかのような気分になっていた。自分には、あの青年と闘えるだけの充分な力があるような気がした。それで、なんとなく興奮しながら、自分の部屋に戻った。

 扉を開けると、そこには小さな白い封筒が落ちていた。どうやら、扉の隙間から入れられた物のようだった。中には一枚の紙切れが入っており、そこには、シーナの誕生日に行われる饗宴の、場所と時間、持参すべき金額が示されていた。自分には少し高額に感じられたが、充分用意できる範囲だった。

 夜、恐らくあの青年に送って貰ったのであろうシーナは、僕の部屋にはやってこなかった。少しだけ期待していたので、不意に寂しくなった。


 シーナが、故意に僕を裏切るような真似をしたのではなく、ただ僕がそのように自分の中で妄想してしまっているだけではないのか、と意識する瞬間は、慙愧に堪えないものがあった。然し、確かに僕は、彼女の外見以外の部分にも、少なからず変化を認めていた。彼女には以前の僕との記憶が幾らも残っている訳だから、僕に対しては、仮令、以前と同じ感覚、感情で以って接する事を止めていたとしても、記憶を複写することにより、まるで同じように取り繕う事は出来る筈だ。そしてそこに、僕の懸念がある。一度、彼女ときちんと話し合わなくてはならないと思った。彼女の気持ちを確かめて、そして自分の気持ちを伝えなくてはならないと思った。


毎日、午前7時頃に更新予定です。

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こちらの小説も是非ご覧ください。↓↓↓


「少女になったボクは、少年になったキミに恋をする」

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