「さすが」
食事を終えて団欒のひとときに入る。
俺と紗夢はソファーに座りテレビを見る。うえはは台所で夕飯の片付けをしていた。傍から見ればこの光景は家族のようかもしれない。
しかし、家族ではない。なのになぜかリラックスできている自分がそこにはいた。これが普通なんだと。。
「片付け終わったらうえはもテレビ見なよ」
「もう少し待っててすぐ終わるから」
うえははお母さんだと思ってしまった。
「なんかいった?」
声に出ていたようだ。
聞かれていなかったことに感謝感謝。
「甘いもの食べたいな」
紗夢がいった。
「今日は買ってないんだよね」
俺がいうと突然うえはが
「ジャジャーン!」
なんとそこには紗夢の大好きなプリンが。
「やったー!」
紗夢はかなり喜んでいた。
「さすがうえは!」
俺は軽く褒めてみた。
「もっと褒めてくれてもいいんだよ?」
少し照れながらも嬉しそうだった。
「気が利く人はちがうわ」
紗夢に軽く馬鹿にされたような気持ちだった。
「うるせ」
このときの俺はまだ気づくことが出来ていなかった。
こんな平凡な日々で何一つ変わらない会話、そして当たり前のようにいる紗夢やうえはのことを俺はただただ平然と当たり前だと思っていた。
くだらない会話がどれだけ嬉しかったことか、いつも一緒にいてくれることがどれだけ幸せだったことか。この時の俺はまだ知る由もなかった。
しかし、こんなことを言ってはいけないとは思うが、当たり前の日常に感謝しながら生きてる人がいるだろうか。当たり前の日常に感謝できる人を探してみたいものだ。
もしかしたらこれは当たり前でなくなってしまったことへの怒りからかもしれない。
しかし、気づけなかった俺を今激しく恨んでいる事は事実である。サインがなかったわけではない。気づかなかっただけいや、気づこうとしてないかった。
少しずつ始まっていることに。始まりもただただなんの代わりもない日であった。