「嘘」
食卓にご飯を並べ終えると、
「はい!席について!」
うえはがいうと、俺は心の隅でお前はお母さんかと突っ込んでしまった。その心の叫びが顔に出てしまっていたらしく、
「なにニヤニヤしてるの、気持ち悪い」
俺は急いで顔をたたいた。
「いつも通りやで」
「嘘ついてるときに必ず語尾がやでになるよね」
うえはが馬鹿にした顔で笑っていた。俺は今まで気づいたことがなかったがうえはは簡単に見抜けるみたいだった。
「嘘ついてないもん」
とっさに言ってしまった。
「嘘つく人には夕飯は抜きです。」
うえはが食器をもっていきそうになったので、俺は慌てて阻止した。
「すいませんでした。以後気を付けます。」
「よろしい」
やはりお母さんである。妹といいうえはといい、うちには何人お母さんがいるのかと思った。
「ただいま!」
そんなことを言っていると妹が帰ってきた。
「紗夢ちゃん帰ってきたのね。おかえりー」
うえはは玄関にむかった。カレーを持ったまま。
「あ!今日はうえはちゃんの手作りカレーなんだ!」
紗夢は嬉しそうだった。紗夢はうえはの作るカレーが大好きであった。俺は食卓から、
「早く手を洗ってきなさい」
紗夢にお母さんのように言ってみた。無視された。いったいこの家の俺の序列はいかがなものかと疑った。
みんな席についてスプーンを持つと
「手を合わせて、いただきます。」
うえはの音頭で
「いただきます」
食事が始まった。
「やっ・・」
俺がそう言いかけたときそれを打ち消すかのように
「おいしい!」
妹にコメントを持っていかれた。一度言いかけたので小さな声で
「おいしいなー」
とつぶやくように言った。
「よかったー」
うえはは嬉しそうだった。
やはりうえはの作るカレーは最高だった。
「今度私に作り方教えて」
紗夢がうえはにいうと
「しょうがないなー」
やはり嬉しそうだった。