「自作小説」
俺は急いで二階に上がり自分の机の引き出しを開けた。そこには中学二年から書き続けていたノートの山があった。その中から「堕天使」をとりえはのもとへ急いだ。
「はいよ。これなら読めるはず。ふりがな書いてあるし。」
「なんか何年も一緒にいたけど顕にこんな趣味があったんて知らなかったわ。」
「知ってたら怖いよ」
俺は苦笑いをしながら答えた。うえはは食入るように俺の小説を読んでいた。ちなみにこの堕天使は中学三年になったころ勉強というものを極度に嫌い現実逃避をしていた。そんなときこと現実逃避を舞台として小説を書こうと思って書いたものだった。この本の主人公は事故で寝たきりとなってしまう。そんなとき一人の女の子と出会う。その女の子は実は主人公にしか見えておらず、女の子のおかげで主人公は奇跡的に寝たきりでなくなる。設定はうであった。しかし実際に書いてみると女の子の年齢や容姿をかんがえるとどうしても幼女好きの主人公になってしまい、ボツ作にしようと思っていたものであった。しかしこの話は俺が書いた中でもわかりやすいほうであり、読みやすいのは事実であった。だからうえはに読ませてみたのである。
「どうだい?」
「これならわかる!」
「そこまで難しい言葉使ってないもんな」
「さっきの小説はかなり難しいね」
「あの本の単語がわかるようになったらちょっとやばい」
「なんで」
「そのうちわかるよ」
この質問には説明しようがなかった。いや説明しようがなかったのではなく説明したらいろんな意味で終わっていた。
「夕飯まだ?」
俺はこれ以上の質問は避けようと話を変えた。すると、
「もう少しで読み終わるから待って」
この返しには驚いた。こんなに真剣に読んでくれてたなんてよほどの小説好きなのかと思った。と同時に嬉しかった。今まで自己満足で終わっていたものを他人に読んでもらう事は正直テレもあった。けど、こうしてうえはに読んでもらったことが嬉しかった。いや、うえはに読んでもらったから嬉しかったのかもしれない。なんだかやりきれない気持ちがそこにはあった。
「この単語なに?」
「それはしらなくていい」
「なんでよ。教えてよ。」
「ご飯食べたらな」
この単語は教えられなかった。なぜなら、読み方がうえはだったからである。中学三年の時名前のアイディアが浮かばずうえはの名前を使っていたことを今になって思い出した。
「手伝うから食べようよ」
俺はうえはに訴えかけた。
「わかったよ。まじ関女」
関女は堕天使に出てくるワードでまさかこのタイミングで使うとは思っていなかった。