「何げない日常」
退院から二か月がたった。
いつも通りの生活を取り戻していたそんなある日の帰り道、
「そろそろクリスマスだね。」
うえはが突然言った。
「もうそんな時期か。ってことはき、期末テストがあるやん。」
俺の脳裏にはテストでいっぱいになった。
前回の中間テストはいろいろバタついていたせいかよいといえる結果を何一つ残すことができなかった。状況的にはうえはも同じだろう。彼女も入院していたので中間の結果がないすなわち、この期末テストが二学期の成績の鍵といっても過言ではない。なのに平然としていた。
「期末、大丈夫そうか?」
「大丈夫だよ、顕みたいに毎日夜までゲームしてないもん。」
「俺だって毎日はさすがにやってないわ!」
なんだかうれしかった。こんなばかばかしい会話が普通にできていることが。今の俺にはこのことこそが生きがいであったかもしれない。
「顕は今回のテスト取らなきゃやばいでしょ?」
「それはうえはも同じだろ」
「なんかね。今までの成績からの平均を使って前回のテスト結果にしてくれるらしいから、そこまでやばくないんだよね。テストやってないのに結果だけはあるみたいな。」
うえはは馬鹿にしたように俺に言ってきた。
「そんなにせこいだろ。」
俺はそんなことは知らなかった。つまりうえはは今夏に全然やばくない。ってことはつまり・・・やばいのは俺だけ。どうしよう。
いつの間にか焦っていた。
「しょうがないな。うえは先生が顕の先生になってあげましょう。」
「えーー」
「ここは二つ返事で。はい。お願いします先生。でしょ」
俺はふと思った。こんなセリフをどこがで見たことがある。見たことがあるというより俺が考えたことがあるような・・・・あっ、
「それ、俺の小説に書いてあったセリフだろ。」
これには確信があった。うえははライトノベルをあまり読まない。しかし、あの時俺の小説をめっちゃ真剣に読んでいた。その時に覚えたに違いない。
「ばれたか」
うえはは笑っていた。
でも嫌な気持ちは少しもなかった。