「安心、安定そして」
治療中のランプが消え重いドアが開いた。
中から白衣を着た医師が出てきた。
「先生、うえはは、うえはは、」
俺はしがみつくような勢いで聞いた。
怖い顔をした医師の口が開く。
「運がよかった。後遺症もない。もう少し時間がたてば麻酔も切れるだろう。」
難病の時が止まっていただろうか。
「成功・・した・・んだよな・・」
俺は誰に聞いたかわからないが声がもれていた。
「そうだよ顕!やったぞ!」
池真が俺に言った。
「よかった・・・・・」
咲はそう言って泣き崩れた。
「急いで報告しないと両親にこのことを真っ先に伝えなくては。」
緒方先生は喜びを隠しつつ職務を全うしようとしていた。
「先生も喜んでくださいよ。」
池真が茶々を入れた。
「おぅそうだな。」
先生から笑みがこぼれた。
どのくらいの時間がたっただろうか。
うえはは麻酔が切れ、目を覚ました。
うえはが目を覚ました時目の前にいたのは顕だった。
「顕・・・・・」
うえはは顔を赤らめていた。
うれしかった。なぜかわからない。しかし、目を開けたときに顕がいてくれたことそのことがうれしかった。
「うえは・・・」
俺は思わず声がもれた。
一瞬、俺とうえはしかいない空間になった。
目が合っただけで俺が言いたかったことが伝わった気がした。
(うえは、無事でよかった。)
(ありがとう。顕)
そんな空間も長くは続かなかった。
「うえはーーーーー」
咲は泣く目をうえはに押し当てるように飛びついた。
「咲、心配かけてごめんね。」
「うんうん。無事でいてくれてほんとによかった。」
「俺も心配したぞ。」
池真がとっさに突っ込んだ。
「池真もありがとう」
うえはから笑みがこぼれていた。
俺はそれを見てほっとした。
それから退院まで俺は病院に通い続けた。
もちろん池真や咲と一緒に行くこともあったが、一人で行くことが多かった。それを求めいていたのかもしれない。
退院までどのくらいかかっただろうか。
最後の精密検査を終え、無事うえはは退院した。