「究極の選択」
俺は胡坐をかいて座った。
実際のところ一番楽な姿勢はオネエ座りである。しかし、俺はオネエではない。も一度言おうオネエではない。誰かさんのように。とにかくオネエ座りをしたかった。
しかし、なんとなくうえはの前でオネエ座りをするのは気が引けた。そこで胡坐をかくという決断に至ったのだ。
「なんか飲む?」
「いいよ、いいよ。病人をこき使うほど落ちぶれてない」
「気を使うなんて、気持ち悪い」
「俺だって気を使うことだってあるさ」
たわいもない、いつもの返しである。
「じゃあ本題、なんだけど・・」
そこで俺は今日ここに来た意味をうえはに説明した。
話し終わると
「はい。これ。」
とオネエに渡されたものを渡した。
「なんか。見友ちゃんにも迷惑かけちゃったな。」
「病人なんだから、あいつだって理解してるよ。」
「そうなんだけどね。学校行ったらあやまっとこ」
「心配性だな」
すると
「部活のことなんだけど・・」
うえはが低いトーンで語り始めた。
「私はさ、部活がなくなることは正直いやだよ。それはそうだよ。今まで大切にしてきたものがなくなっちゃうんだよ?誰でも悲しくなるでしょ。」
泣き出しそうであった。
それでもこう続けた。
「少なくとも私は部活はなくしたくない。」
うえはから何か強い意志を感じた。
「でも私は幽霊部員は嫌だよ。部活はあるものじゃなくて参加するものだから。」
俺が思った通りであった。
うえははこの部が大好きであり、そんなことはとうにわかっていた。こんな話をうえはにして申し訳ないと思うくらいであった。
「でも最終的に。ほんとに究極の選択になったときだよ。幽霊部員を入れるなら廃部にするしかない。」
こんなことをいうとは思わなかった。
けど、そこまで部を思ってくれていたと思うと正直うれしかった。
「まぁほんとにそれは究極の選択だな。それは避けたいね。だからこそさ、何か方法をと思ったんだ。」
「今すぐには考え付かないかな。でもやる気は人一倍あるから」
その言葉に俺は勇気づけられた。うえはは笑っていた。
「今日はこの辺にして俺は帰るわ。早く治して明日は学校行かないと!」
「うん。ありがと。」
「しっかり考えとけよ。明日聞くからな」
俺は冗談交じりに言った。
「わかってます。部長」
また笑ってくれた。俺はほっとした。それと部長と言われたのが少しだけ照れ臭かった。
「まっ・・・・」
ドアが閉まった。