「家の鍵」
ピンポーン
俺はチャイムを押した。
しかし、誰も出てこなかった。
うえはの家族は三人家族でうえはの両親は共働きであった。まだ五時だったので両親がいないことには納得がいっていた。
けれど、きょう学校を休んだうえはがいないことは疑問であった。うえはに限って学校をさぼるとは考えられない。
俺は恐る恐るドアを開けた。
かぎは掛かっていなかった。
「うえは」
ためしに呼んでみた。
・・・・・
応答はなかった。
俺はただならぬ緊張感を感じた。
うえはの家は何度か入ったことがあったので間取りはわかっていた。
うえはの部屋の前についた。
「うえは」
もう一度言ってみた。
中から物が落ちる音がした。すると、
「ごめん。気づかなかった・・」
中からパジャマ姿のうえはがでてきた。
うえはがいて安心した。
「大丈夫?」
俺は心配そうな顔で聞いた。
「うん。きょう一日休んでなんとか・・」
「ならよかった。明日はこれそう?」
「うん。もう少し寝て明日に備えるよ・・」
「なんかごめんね。昨日も遅くまで家の手伝いしてもらって、それで体調まで崩させちゃって」
「気にしないで気にしないで・・」
そんなことを言われても気にしてしまう。
「あ、家の鍵あいてたけど大丈夫だった?」
「お母さん閉めてかなかったんだ。よかったなにもなくて。ありだとね・・」
そんな会話もあり、ようやく俺は今日来た意味を思い出した。
「ちょっと少しだけ時間ある?」
「どうしたの?」
「ちょっと相談」
「顕が?めずらしいこともあるものだ」
笑っていた。いつものうえはがそこにいた。
俺は安心した。
「入って」
何年振りかにうえはの部屋に入った。
やはり女の子らしい部屋であった。