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筋骨隆々な彼女

 


 前のエピソード――第1話私の仕事

 第2話筋骨隆々な彼女


 宿屋に一泊後、早朝に寝てる勇者を担いで逃げた。


 そして、深夜。魔王城の地下にあるメイメイの寮にて、ピンク一色の部屋のベッドに二人で座って話していた。


 風呂(男湯)上がりのメイメイは少し顔を赤くして、赤ぶちの眼鏡をかけいつものショートボブを手で揺らすように自分を扇いでいた。


「メイメイって確かもっとこう、青年というより……熱血な感じだったよな。いや、性格じゃなくて……三メートルの巨体で太眉で輝く白い歯、顔がソースというより煉瓦液のようなごっでりがっちり……つーか固形物。そしてショートボブの髪型で吐き気を催すように調整した感じだったのに」

「いや、えっとそこまで気分を害されてたのは初耳なんですけど」

「あ、いや周りも陰口バリバリ罵詈雑言だったよ。僕が個性なんだと説得したから耳に入ってないだけで。バリバリ罵詈雑言」

「そうだったんですか、ありがとうございます。最後に気に入った言葉を言うの止めてください」

「んで、本題だが、どうしてこんなことになったんだ?バリぞう」

「略すなというか、それただの『言』をいれてないだけです!」


 あぁ、悪い悪い。と茶化したのを謝ってから話を聞く体勢になる。


 自身の体の構造から変化する魔物は上位級になればそこそこいるのだが、それは自分自身の体についてよく知ってるからこそできる芸当だ。


 他人の体を構造を弄くることができるのは最上位の魔物を統べる師官レベルである。


 メイメイの話を聞き、そいつの特徴を教えもらうとある師官に記憶が行き着いた。


 毎週の出席確認には一度も来ずに、最上位レベルのやんちゃな魔物達の見張りを僕に擦り付けた部下、ハスバールである。


 その後も出会った場所や経緯を細かく聞いた。


 書類にしなければ魔王が、自分の子が突然整形して帰省したショックを受ける。


「ハスバールのせいで恥ずかしがってた女装癖を解放され、人間の中で女装で生活してバレないかドキドキしてた……と」

「ドキドキなのはスカートでノーパンだからです」

「個性個性コセイこせいこせいこせいこせい」

「呪詛のように自分に言い聞かせないでくださ い」


 切り替えるように、勢い良く立ち上がりメイメイの頭をくしゃくしゃに撫でた。


「うお、おお、おお、どうしたんすか!」


 赤面しながら野太い声がでていて、あまりにも不可思議な光景に少し笑ってしまう。

 こういう些細な所をそのままにするのも、ハスバールらしい。


「メイメイのお陰で、万年欠席のあいつを捕まえられそうだ!ありがとう!」


 おやすみと一言添えて、手を頭から離しドアに向かって歩いていく。


 後ろから女性の、あの宿屋にいた娘の甘い声が僕を呼び止めた。


 手をふとももの間に入れそれを擦り合わせながら、こちらを上目遣いで見てくる。


「どうして、あたしがメイメイだと分かったんですか?」

「大切な部下なんだから、どんなに変わっても分かるよ」


 そう言って僕は部屋を後にした。


 今はノーパンなのだろうかと、疑問を抱きながら。




 部屋であいつを捕まえる用意をして、僕は寝床につ……かずに朝まで残った書類作業をしていた。


 三十分の睡眠後、魔王に書類を渡しメイメイのことを告げると、悲しく、辛く、しかし嬉しいような複雑な表情をしながら涙をこらえて「魔王離れと言うやつか……」と言った。



 春の陽気な午後、勇者は町中にあるベンチでアホ面を空に晒しながら足を伸ばして寝ていた。


 勇者の体勢的には胸を張るようになっているが、無い胸はいくら張っても無いだけである。

 肩を落としながら怠けてる勇者の肩をぽんぽんと起きろ、の合図をする。


「あ、あぁ、うんにゅらっちゅ、ごめんごめん私寝てた」

「前半には突っ込みいれるべきですか?」

「あ、うんちシュラッシュの「聞きたくないです」

「そうそう、今日はリドリドが行きたい所あるんだっけ?できれば……人がいないところがいいな」

「まぁ、人はいませんよ」

「よかったぁ」


 勇者は極端な人見知りである。

 勇者と仲良くなった方法の話しはまた今度するとして、無数の姿に変わる厄介なハスバールを捕獲となると、僕だけでは難しいので勇者を利用する。


 勇者は半径一キロを浄化する桁外れの能力を持っている。下級の悪魔なら一瞬でお陀仏だし、最上位の悪魔でも体が痺れて数分は動けなくなる。

 僕はこれをクソホーリーと呼んでいる。


 昨夜考えた緻密な作戦を一通り頭の中で繰り返していると、小さなフードを揺らしながら黒髪の少年が近づいてきた。


「あ、サリドさん!お久しぶりです!」


 無邪気な笑顔で僕に挨拶してきたのは、ハスバールという師官の地位にいる魔物だ。


「久しぶりー元気してた?じゃない!!出席確認来い!」

「あらま、虫の居所が悪い感じかー。逃げよっと」


 僕はハスバールの胸ぐらを掴み、おでこをガツンと合わせた。


「痛いことは好きか?」

「もちのろんで嫌い…」

「嫌なら、隣の女の子の胸を大きくしろ」

「は?」

「僕はね、おっぱいが大きい方が好きなの」

「……は?」

「美乳だけでもいいから」

「えっと、えっと、意味分かりませんが、おっぱいでかくすれば逃げれるかんじ?」

「そうそう」

「わかりました」


 やった!

 いつもいつも、この勇者が子供ボディじゃなかったら美味しい思いができたか!と考えていた。

 抱きついてくるし、無防備に薄着になったり、話すとき大きく体を動かすし、その他もろもろ!


「そ、それじゃあ、パパっと終わらすので離してください」


 胸ぐらを離して、自由をハスバールに与えると肩と首をコキコキならしながら真剣な表情で、今まで呆気にとられてた勇者のもとへ歩み寄る。


「よっしゃ、さっさと胸揉んで大きくするぞ」


 ほぼ脊髄反射の動きで後ろからハスバールをヘッドロックした。


「サリドさん!なにしてるんすか!……まっ、決まってるっ……かんっ…………ぜんにっ……」


 そのまま僕は勇者に視線を合わせるが、もう遅いことが分かった。


「変態さんだ……いやだ……へんたいさん、すけべへんたい、きらい、こわいよこわいよ……」


 一瞬の静寂のあと大声で泣き出した瞬間、その音を置き去りにして僕の脊椎に蹴りを入れた。脳の働きを一気にシャットダウンされ、朦朧とした意識のなか手元からハスバールが逃げ出すのを理解した。


 なぜだ。いつもならこの程度の攻撃は耐えるはずだ。

 僕の体に異変が起きてる。

 ハスバールになにかされたのか?

 いや、ちがう。



 過労だ。



 僕は叫んだ。


 閉じかける、落ちかける意識を奮起させて。


 ハスバールだけは逃がさない。


「勇者様!ク……ホーリーを!」

「なにそれ!!わかんない!!」


 そうだった。僕が勝手に呼んでるだけだった。


「がふっ」


 ちくしょう、勇者に喉を蹴られた。


 このまま、ちっちゃい胸のままハスバールを逃がすのか……。


 いや、まだだ!


 これなら分かってくれる!


「勇者様!必殺技を使ってください!!今すぐにっ!!!」

「えっ、えっ……」


 鬼気迫る僕に圧されたのか、すぐに勇者は腰に携えた剣を抜き地面へと突き刺した。


「「ぎゃああああああああああっっ!!」」


 ハスバールと僕は叫び声を上げ、頬を地面につけた。


 糸一本の意識のなか見たのは、黒装束で深く黒い三角帽をかぶった魔王様だった。

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