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いいから魔法を教えやがれ!  作者: サトウユミコ
第一章 無銭飲食の犯人
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ライトニング

エクセルはうなり声が聞こえたほうを注視する。林の中から二つの緑色の光が見えた。


『1匹か』


 しばらく獣の動きに集中していると、一瞬強い風が横切った。


「ガウッ!!」

風の音が合図となったか、林から飛び出した獣の影は、一気にエクセルに距離を詰める。狙うは右腕。よだれをたらし牙をむいて、大きな口を広げる。


 ザッ


 エクセルの右足が大地を踏む。半身ほど体をよじらせて、獣の攻撃をかわした。獣はそのまま草むらに着地すると、反転し、後ろ足を蹴る。再び右腕が狙われた。


「しつこいっ」


 両手に握りしめたショートソードで一撃を放つ。月の光が反射して、弧を描く。


「ギャウッ」

わずかに飛び散る獣の血が、エクセルの腕にかかる。剣は獣のどこかを切り裂いた。

魔法ランプと月明りに照らされて、獣のシルエットがあきらかになってくる。


『ジャッカル!』

エクセルはショートソードを握りなおして獲物に向かって構えをとった。

肩口を斬られたジャッカルは、より殺気を増して今度はエクセルの太ももを狙って飛びかかる。


「ライトニング!」

エクセルの声とともに、空中に光が現れ、ジャッカルの体に雷がまとわりつく。一瞬ひるんだ隙にすかさずエクセルのショートソードが振り下ろされる。

しかしジャッカルは獣、しびれながらも、横に跳び、剣をかわした。


「逃すかっ」

ジャッカルが飛んだ方向にエクセルも体の重心を移動させ、振り下ろした剣を片手で横に切った。

間合いの伸びた剣はジャッカルをとらえた、ように見えた。が、実際はブンと音を立てて空を斬った。


 もうひとたびジャッカルは横に跳んでいた。着地するやいなや、クルリと身をひるがえし、林のほうへ逃げ出す。


「ライトニング!」

エクセルの声とは違う女の声が響くと、視界を奪うほどのまぶしい光が現れ、轟音とともに複数の雷がジャッカルに命中した。

ジャッカルは悲鳴をあげる暇すらなく、バチバチと小さな光を帯電させ、地面に倒れていた。

血と肉の焦げる臭いが充満するとともに、落雷後特有のオゾン臭も充満した。


 エクセルは声のしたほうを見やる。

 そこには長身長髪の薄白い人影が歩いていた。


「ワンスペル魔法が使えるのはすごいけど、アタシにはまだまだほど遠いわね」

白い髪をなびかせて、赤いルージュが塗られた唇がクスリと笑う。

エクセルはその姿に自分が思い描いていたある姿を投影させて、確信を持った。


「あんた、ファティアか……?!」


挿絵(By みてみん)

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