白髪のエルフ
街灯の魔法ランプが消え、月明かりのみが石レンガの小道を照らすころ、エクセルと兵士3人は軍隊アリのように、一列に歩いていた。
誤認逮捕であったことが目撃者の証言により証明されたため、釈放されたからだ。
取り上げられていた、銀のショートソード、革のカバン、水筒などの道具を一式装備したエクセル。途中まで読んでいた魔導書もしっかりとカバンの中に入っている。
「お詫びついでと言っちゃなんですが、エクセルさんのお力をお借りすることはできませんでしょうか?」
エクセルの次に歩いてた兵士がぼそぼそと小さな声で話す。
エクセルは振り向きもせず、歩きも止めず、返事もしない。
「さっきのワンスペル魔法お見事っした! エクセルさんなら犯人の魔法にも負けないと思うッス! 犯人逮捕にご協力をお願いするッス!」
列の最後に歩いていた兵士が、やや興奮気味に声をあげる。真ん中を歩いていた兵士は、今声をあげた兵士にげんこつを落とす。
「うるせえぞバカヤロウ! 市民の眠りの妨げになったらどうするんだ。……で、ワンスペル魔法ってなんだ?」
兵士二人は小声で話し出す。
「ワンスペル魔法っていうのは、たった一言の呪文で魔法を成立させてしまう高度な魔法なんスよ。魔力消費が高くてコスパ悪いッスが即効性があるから緊急時によく使われる魔法ッス」
「さっきの光がビリビリしたやつがそのなんちゃら魔法ってやつだったのか。ところでなんでお前そんなに詳しいんだ?」
「いやぁ、実はッスね……」
「お前らいい加減にしろ。明日から給料減らすぞ?」
エクセルについてた兵士が振り返り、二人の兵士をにらみつける。
「たかが無銭飲食だろ?」
歩きながらエクセルはそう言った。
「いいぜ、やってやる。オレのワンスペル魔法でどうにかなるんならたやすい御用だ。それに……」
右手を軽く握りしめ、夜空の月を見上げて、続きの言葉は心の中でつぶやいた。
『白髪のエルフってのが気になるしな』