1/14
プロローグ
魔法の光でともされた街灯で、うっすらとレンガの通りが見えるようになったころ
ドン・ドン・ドン!
突然魔導士ギルドの宿泊室の木製扉が、強く叩かれた。扉の周りには屈強な体格をした中年男性が3人、それぞれ同じ装備品を携帯し、同じデザインの服を着ていた。いわゆる制服だ。
部屋の中には、少年のような姿をした軽装の人物が一人、両手に持たなければ支えられないほどの重い書物を読んでいたところ、扉の音に驚いて、手を止めた。
「エクセル・ファオラスだな! ここにいるのはわかっている! おとなしく牢屋に入りたまえ!」
男たちは命令口調でがなり立てる。エクセル、と呼ばれた人物は本を丁寧にカバンにしまうと、扉を開けた。
「おいおい、牢屋って、オレ何にもしてねーんだけど」
目を細め眉間にしわをよせ、男たちに話しかけるエクセルだったが……
「問答無用である。貴様が無銭飲食の犯人であろう! 捕まえろ!!」
制服を着た男たちにとらえられてしまったのだった。