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プロローグ

「正しさって何だろうね?」

 男は窓の外に映る山々へ視線を移した。瞳にはその風景が映っているものの、彼の意識はそれよりももっと遠くにあるように見えた。

「人間が考える『理』というのは、結局のところ完全じゃないよね」

 彼は苦々し気にそうつぶやいた。そして、近くの机の上にある、「六法全書」を持ち上げる。鉛筆の跡だろうか、黒い筋が至る所にひかれているうえ、ところどころ凸凹になっている木製の机とは異なり、その法学書はまるで購入したばかりであるかのように、きれいなままだった。それは、消しゴムのカスや埃が足の踏み場もないほど落ちていたり、壁紙の色もくすんでしまったりしているその部屋の中では、本当に異彩を放っていた。

「見なよ、たいそうご立派な装丁をしているじゃないか」

 彼はその本を、大げさな様子で掲げる。

「こんなに分厚いのに、この中に書かれているものだけではすべての犯罪を裁くのは無理だなんて」

 そう言うと、彼はそれを近くのごみ箱へと放り投げた。重さに耐えられなかったのか、ごみ箱は本を受け止めきれずに倒れた。その様子を彼は冷ややかに見つめる。

「所詮、人間が作ったただしさなんてそんなものだよね。どこまで行っても『情』が邪魔をする。

完全な理性は人間の中には存在しない。なぜなら、理性を欲したのは『情』だったのだから」

 それならば、と彼は視線を「私」に向ける。

 彼は満面の笑みを浮かべていた。言葉とは裏腹に、彼はとても感情的なのではないかと私は思った。

私には、その様子がとても××だった。


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