8、妹は強し……。
更新がすっかり出来なくて、すみませんでした……。
「で、見つかったんだね、この子」
「この子ではない、ウネビガラブじゃ、少女」
「……あの、少女じゃないんですけど」
「じゃあ、なんと呼べと?」
「んー、そうねぇ……」
やっと見つかった一人目の仲間のウネビガラブは、結構お堅い方らしく、会話がはかどりません。ていうか、話を進める前に名前を覚えて欲しいよ。
「下呼びでいいよ、真璃で」
「じゃあ、真璃と呼ばせてもらおう。そっちの少年は?」
「波月です。ヨロシク」
「じゃあ、主は波月じゃな」
「なんで! 俺は青年なのに!」
「でかい声を出すな、周りに迷惑であろう。青年」
「……うぅ」
た、確かに、他の人から見れば、空に向かって叫ぶ変な人にしか見えない。てか、絶対そう見られてる。ちなみにここはいつものマック。お気に入りです。
「で、他の奴らどうしたのじゃ? まさか見失ったのか?」
「勝手にアナタ達が行ってしまうのが悪いんですの! 私、一人で寂しかったんですのよ!」
「それはお前が悪いのだ。ちゃんと目的地も探さずに彷徨うなど、旅人において許せない行為じゃ」
「旅人じゃないからいいですわ!」
「それでも、迷ったのはお前のせいじゃろ!」
「勝手に行っちゃう人達もどうかと思いますわ!」
「ああいえばそういう、だからお前は嫌いだ!」
「私だって、アナタの事嫌いですの!」
「まあまあ、落ち着いてよ二人共」
「ソラ様は黙ってらして!」
「青年よ、首を挟むではない!」
「……俺って、いつもこんなキャラ?」
自分が、すごく哀れになってきたよ。……ああ、ヤベェ。ネガティブになっちゃいそう。
「とりあえず、場所を変えたほうが話しやすそうだね」
と言う、優しい優しい波月のお言葉で、それは何故か分からないけれど、俺の家へとやって来ました。あ、用があるとかで、波月は帰りました。その後、何故か矢吹も帰りました。
で、結局俺だけ。だから、俺の家に来るのは当然ですね。当たり前すぎますね。
「お帰りソラにぃ!」
あぁ妹よ、帰ったぞ。それを言う前に、
「うむ、意外と広いの」
って、ウネビガラブに先に言われてしまいました。
「ソラにぃ、また変なの連れてきたわね?」
「あのさ、結構前に言ったと思うけど、その、ね?」
だからさ、あの、説明しますから、とりあえずその恐ろしい拳をどうにかしてください。ついでに殺気も消してね。お願い。兄は怖くて怖くて仕方ないよ。
「と言う訳でしてね、こうなりました」
「全然分からないんだけど? ちゃんと説明してって言ったよね?」
「え、でもさ。回想の部分で事細かに……」
「どの部分? ていうか、この世界に回想なんて甘ったるいシステム、ありません!」
「え!? じゃあ、今までのは何だったのさ」
「適当に誤魔化しときなさい。ただ単に行を開けてみたとか、意味もなくやったんだとか。考えれば、いろいろ出てくるわよ」
なぁ、我が妹よ。その中に一つもポジティブな考えのものがないのは、何故なんだい?
「ともかく、私はこのちっこいのにうろちょろされるのは癪に障るわ。出て行く、もしくはこの家で働いてもらうわ」
「そんな、無茶なぁ」
「ソラにぃ、きちっとしなさい、きちっと!」
「ありありさぁ……」
「……働くって言うのは、実体化すればできますのよ?」
「「ふ〜ん」」
右から左へ受け流す、俺とウミ。
……って、へ? 何だって?
「今、実体化って言った?」
「言いましたの」
ウミの質問に、快く答えるローグ。
「そうすれば、仕事できるって?」
「ええ、そうですの」
俺の質問にも、快く答えてくれました。
……って、そういう問題じゃなくて、そういう事ってもっと早く言うべきじゃね!? てか、できれば出会った時に言うべきだったよね!?
「どうしてもっと早く言わなかったの!?」
「隣に同じく!」
「え? だってそんな事、どうでも良い事でしたから」
「いやいや、どうでもよくないよ? 良くないようで、実はかなり重要だったよ?」
「あら、そうでしたの」
「『そうでしたの』じゃないわ! 実体化できるんだったら、早くなってよ!」
「は、はいですの! 分かりましたの」
そう言って、ひらひら机の上に舞い降りて、ローグと(無理矢理)ウネビガラブは、目を閉じた。何かを囁くように口が動いているのは分かるけど、それ以外何も分からない。
「ねぇ、ソラにぃ。テーブル、壊れないかな?」
「きっとそこまで大きくならないよ。……多分」
俺らぐらいの大きさになられると、かなり困るけどなぁ。貧弱なテーブル君の事だから、すぐに折れちゃうかも……!?
いつの間にか輝きだしたローグは、煙に包まれて消えた。
……え? キエタ? キエタノ? えぇっ!? 消えた!?
と、思ったら―――。
「What!?」
テーブルがきしんだ音と同時に、再び二人は現れました! あぁ良かった良かった!
メキメキ……バキッン!!
ふ、不吉な音が聞こえたような……。
「!! ノーーーーーーーーーーーーーーーーウッ!」
見事に真っ二つにテーブルが割れてましたよ、えぇ綺麗に半分こですよ。
ああ、生活費が……生活費が、削られ……。
「ソラにぃ? ソラにぃ!? 気を確かに!」
「……ああ、親愛なる妹よ。もう、俺らの家庭は崩壊だ。ホームレス生活へ出発進行だよ」
「何弱気な事言ってるの! バイトすれば、何とかなるって!」
「……俺、まだ中三だから、そゆの無理……ああ、もう絶望だ」
「不吉だよ! 不吉だよ、ソラにぃ! 絶望だなんて、言わないでよ!」
「じゃあ、大凶を引いた、受験生のとある日?」
「それもそれで不吉だよ!?」
「だったら、受験日の日に滑って転ぶという醜態を晒した受験生?」
「そんな人いるの!? じゃなくて、そんな事じゃなくて、もっとポップに!」
「ポップに不吉な事を言えばいいんだね、了解」
「いいよ! もう何も言わないで、ソラにぃ! 私まで気分がブルーになりそうだから」
「そっか」
「あ、あの〜……実体化、してみたんですけど?」
何だね、悪の元凶よ。俺はもう疲れたんだ、もう眠らせておく……
「れ!?」
な、なな、ななななな、ななな!!
何が言いたい!? とか疑問に思わないでください。ちゃぁんと、後で説明しますんで。
「……誰」
冷たいよ一言が、我が妹よ。
「えっと、私はローグですの。こっちのいじけているのが、―――」
「いじけていない。ただのウネビガラブだ」
「「……えぇっ!?」」
さすが妹。良くぞハモってくれました。
って、事じゃなくて。この子、誰? って、ローグか。その隣は、ウネビガラブ?
ローグもウネビガラブも、小さかった妖精の姿を、そのまま大きくしただけみたいな格好だった。てか、多分、そのまま大きくなっただけ? 見た目は、同い年に見える。え? どっちの同い年? もち、俺ですよ。
「実体化は好きじゃないのだ。気にくわん、このドレス」
「だって、それがしきたりですの。仕方ないですわ」
「お前に文句をつけて変わるのなら、世界も変わろうぞ」
「それ、どういう意味ですの!?」
「そういう意味じゃ」
「何ですの!?」
「何じゃコラ!」
……実体化しても、性格とかは変わらないのね。
「大きくなったんだから、ホラ、仕事を手伝いなさい! ローグは皿洗い、ウネビガラブは部屋の掃除。分かった?」
「何故私が皿など洗わなくてはならないんですの!?」
「我は掃除など大嫌いじゃ!」
「そ。じゃあ、出てけ」
冷たっ! たったそれだけの言葉なのに、棘がありすぎて痛いよ!
「「それは」」
「文句、あんの?」
「「いえ、何でもございません」」
うわぁ〜、可哀相。絶対こき使われるよ、ローグとウネビガラブ。
って、あれ? 仕事をあげたって事は、ローグ達をここに置いてもいいって事か!?
「ウミ! いいのかい!」
「何よ今更。仕方ないじゃない。ソラにぃの頼みだし、断らないよ」
「うぅ、いつもこうだとありがたい」
「何か?」
「い、いえ! 何でもございません!」
「じゃあ、ソラにぃも自分の部屋掃除、それと私の部屋も掃除しといて。終わったら、夕飯の買出しね。帰ってきたら、洗濯物干して、お風呂を洗う事。洗い終わったら、夕飯の用意よろしくね」
「……それ、俺の部屋掃除以外、ウミの仕事じゃ……」
「何か?」
「いえ! 何でもございません!」
今日で分かった事。妹に逆らうべからず。必ず神の鉄槌、もしくは天罰が下る。