7、橙、発見!
あっさくっさ♪ あっさくっさ♪ たっのしいっなぁ〜♪
何でも食べましょ、よく噛んでぇ〜♪ みぃんな揃って、ご〜あいさつぅ♪
ランララ、ランララ♪ ラン♪ ラン♪ ラン♪
なぁんて、鼻歌歌ってたら、矢吹に思いっきし頭叩かれました。
「あんたね、目的忘れるなって言ったら、何度言ったら分かるの?」
「俺が覚えるまでだね、うん」
って言い返したら、
「ホント、マジありえないほど馬鹿!」
って、また叩かれました。
うぅ……。俺の頭はタンバリンじゃないのに。もしくは、シンバル?
「あ、アレじゃないか、雷門」
「「「おぉ〜!!」」」
今回はローグともかぶったから、『ゲッ』とは言えない……。
「思った以上に……」
と、矢吹。
「おおっきいですわぁ……」
と、ローグ。
うん! ナイスコンビネーション!!
「確かに、デカいなぁ」
横一列に、波月、俺、プラス肩にローグ、矢吹の順で並んで人通りの多い中、まじまじとそれを見ていた。だってさぁ、まだ全然遠くなのに、存在感、アリアリ? てか、威風堂々?
……なんか、意味が違う気がしないでもない。
「ていうかさ、この人の数の中でこぉんなちっちゃい、ローグの仲間見つけられるの?」
矢吹がローグを見ながらそんな事を言う。まあ、確かにちっちゃい。だって、掌サイズだからねぇ。
「そうですわねぇ。人に紛れていては、ここにいるかどうかさえ、確認できませんわ」
「なあ、仲間を呼んだら、来たりしないのか?」
「う〜ん、どうでしょうか? 人の声に邪魔をされなければ、簡単なんですけど……」
「人にしゃべるなとは言えないからな」
「じゃあ、いっその事、夜中とかに来る?」
「帰りの電車がないよ。それに、人がいなくなるまで待ったとしても、いつになるか分からない」
真剣ですねぇ、2人とも。俺はこういう考えるのは苦手だから、茶でも啜って待ってるかな。
「ねぇ、有澄! あんたも少しは考えなさいよ!」
「え!?」
「何よその驚き方は。まるで、『自分は聞かれる事がないから、茶でも啜ってよ』みたいに思ってたようね」
「……」
ひゃ、120%正解なんですけど……!
「黙ったって、あんた……もしかして図星!? マジありえない!」
「ず、ずぼひひゃないやい!」
「言えてないし! どんだけ焦ってんのよ、あんたは!」
焦らせてるのはどっちだ、この野郎! ふざけるなよ、この野郎! 心臓に悪いだろ、この野郎ぉ!
「はぁ〜〜〜。ホント、使えないわね」
「悪かったな」
「……はぁ」
そ、そこまでため息をつくなよ! 俺の幸せまで逃げそうじゃないか!
「何とかこの人込みの中から、探すしかないのでしょうか」
「そうなるかな」
「そうするしかないわね」
と言う訳で、俺の意見なんて言う暇もなく、探す事に決まりました。いや、訂正。俺の意見なんて聞く気もなく、そう決まりました。
で、波月と俺、矢吹とローグがペアになって探す事になったけど……。
「私はソラ様といたいです!」
というローグの涙目にやられ、波月と矢吹、俺とローグのペアになっちゃいました。
「何残念そうにしてんのよ。変態」
「うっさい」
「まあまあ。早くローグの仲間探して、帰ろうよ」
「「アイアイサァ」」
って、ローグと矢吹は言ったけど、
「ありありさぁ」
って、俺だけが言った。あれ、どうしてだろう。なんだかとても寂しいぞ……。
〜 数時間後 〜
一人フラフラ(正しくは2人?)していても、一向にお仲間さんは見つからなかった。てか、いない。てか、いたとしても見えない。ツアーの外国の方やら、キャピキャピしたおばちゃん達やら、修学旅行生みたいな人達やらで見つかりそうにない。
「そ言えば、今探してる仲間って、何色?」
「何色?」
「あー、誰って事」
「ああ、そういう事ですわね。えっと、ウネビガラブですわ」
「何色?」
「えと、それは担当の色の事、ですわよね?」
「もちろーん」
「橙ですわ。私と見た目はほとんど同じですの。オレンジのドレスに、長いオレンジの髪をポニーテールにしてますの」
「ふむふむ」
「で、目はパッチリしていて、綺麗な橙色ですわ」
「じゃあ、あんな感じの?」
人々の間を縫うようにして浮いている、飛行物体を指しながら言った。それを例えるなら、……オレンジ色のちっさい風船?
「ええ、そういう感じですの。……って、ソラ様! 見つけてたなら、早く言ってくださいですの!」
「だって、違うかもしれないじゃん」
「違う事なんてありません!」
「え、ゴメン」
「謝ってる暇があったら、早く追ってくださいですの!」
「ありありさぁ」
って、言ったものの、人が多すぎて動きにくい。もっと減らねぇかな、人。
「もう、じれったいですの! 私が行きますの!」
てかさ、元からそうしてれば良かったんじゃね?
いいなぁ、俺も飛びてぇなぁ。てか、何故に飛べるんだろ。ローグに羽はないのに。
「ウネビガラブー! ウネビガラブーー! ウネビガラブッ!」
……最後の方、逆ギレ気味に聞えたのって俺だけ? いや、きっと俺だけじゃないよな。うん、きっとそうだ、そうだよ。うん……。
「……ふぅ、やっととうチャック!」
ウネビガラブっぽい妖精と、ローグの隣にやっと来れた。結構時間かかったなぁ。やっぱ俺、人多いトコ嫌いだな。
「誰だ、これは?」
う〜ん、偉そうだな、このガキ! ていうか、妖精?
「これじゃありませんわ。ソラ様ですの」
「空?」
「いえ、ソラ様です」
「蒼い奴じゃなくて、これか?」
これ言うな、俺は人だぞ。
「そう、これですの」
ローグ、お前までこれって言ったら、俺の立場ないじゃん……。
「ところでお前はちゃんと満喫してるか? 人間界ライフ」
……カッコよく言ってるつもりっぽいけど、なんだかダサく聞こえる。
「おいそこ。ダサいとか言うでない!」
「す、すみません!」
ありゃりゃ? 俺、ダサいって口で言ってないんだけど。もしかして本当はしゃべってた? 独り言的な感じで。
「いや、我は読心術が得意なのじゃ。気にするな、少年よ」
少年じゃない! 確かに幼い顔してるかもしれないけど、少年なんかじゃないやい!
「じゃあ、なんじゃ?」
青年です!
「そうか。ならば、青年と呼ばせてもらおう」
え、名前じゃなくて、あえて青年?
「あえて青年じゃな」
……今更って思うかもしれないけど、心の中で話すのって、なんだか複雑。
「ホントに今更じゃのぅ」
「すみませんですの。私、会話についていけないんですけれど……」
「そうか、お前は読心術ができんからの。まあ、他愛もない話だ、気にするでない」
「そう言われると、気になりますの」
「気にするなと言われておるのじゃ、気にするな」
「嫌ですわ。話してた内容、詳しく教えていただきましょうか」
もしかして、この二人って、仲悪い?
「そう、そのとおりじゃ。私は、この威張りくさった感じが嫌いなのだ」
「誰が威張りくさってますの? 貴方の方が偉そうですわ!」
「失礼な! 戯言も大概にしろと、いつも言っておったであろう!?」
「そんなの知りませんわ! それよりも、あなたの言う事など、さらさら聞く気はありませんわ!!」
「なんじゃと!?」
「なんですの!?」
あの……俺がいる事を忘れられると、立場がかなり苦しくなるんですけど。ていうか、もう十分に苦しい状況なんですけど。
「……ああ、すまぬな、青年。ついついこいつ相手だと話しすぎてしまうのじゃ」
「すみませんね、ソラ様。さあ、みんなの所へ戻りましょう」
て訳で、とりあえず、仲間一人、回収できました。
「回収?」
あ、すみません、ちょっぴり失礼だったな。仲間一人、発見いたしました。残りは、あと、5匹です。
「5匹?」
……残りはあと、5人です。今は、赤と橙だけだけど、早く全色集まるといいなぁ。