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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第一章 妖精との出会い
6/80

6、仲間探しに出発!

 気持ちいいはずの、翌朝。快適なはずの、翌朝。目覚めがいいはずの、翌朝。

 けれど、俺にとっては、翌朝もクソも、何もねぇ。在るのはただ……。

 「ね、ねね、寝坊したぁっ!」

 といった具合に、最悪の翌朝だね、うん。

 神様ぁ、何故に起こしてはくれなかったのですか? どうして俺を、叩き起こしてくれなかったのですかぁ!

 「遅刻だ遅刻、遅刻だぁぁぁぁぁぁ!」

 「朝から騒々しいよ、ソラにぃ」

 「すみません! 遅刻だぁぁぁぁぁ!」

 「だから、ご近所とあたしに迷惑でしょ!? もうちょっと静かに慌てなさい!」

 「どんな感じに?」

 「静かに慌てればいいの」

 「……」

 それ、答えになってないよね。

 「あ、そういえば、携帯鳴ってたよ。ええっと、確か『スターウォーズ』」

 「は、波月だ!」

 「音楽と人のイメージがつり合ってないよ、ソラにぃ」

 「……ど、どうしよ。こ、ここ、こ、ころられる!!」

 「スルー!? ……ていうか、『ころられる』って何!?」

 「……舌が回らなかった」

 「ばかにぃ」

 「ば、ばば……」

 「落ち込んでる暇あったら、急いだら??」

 「あ、そうだった!! 遅刻だぁぁぁぁぁぁ!!」

 「ホント、騒々しいね、ソラにぃ」

 財布、携帯、ローグをバックに詰め込んで、家を飛び出しました! 間に合うかなぁ。

 「って朝食作ってない……」

 後でウミにこっぴどく叱られそうだなぁ。



                    ******



 ぜぇハァ、ぜぇハァ、ぜぇ……。つ、ついたぁ、駅。自宅から全力ダッシュで4分かかる筈の駅に、記録更新。2分で着いた。

 き、奇跡としか思えないぞ。

 「あ、有澄! 遅いわよ!」

 ……顔を上げてすぐ見えるのが矢吹だと、生きる気力をなくしそうだ……。

 今日は制服じゃない奴は、腰の部分が細くなってる白いワンピに、つばの広い帽子を被っているだけの、なんともシンプルな格好をしてた。

 「ソラ、電車が来る。早く切符買って」

 と急かす波月は、夏でも長袖長ズボン。もちろん、冬でも長袖長ズボン。って、それは当たり前か。

 黒いジャケットの下には、カッコいい骸骨がプリントされた白いTシャツ、そして、ダメージカットされたジーンズといった、カジュアルな格好だった。……カッコいいなぁ、波月。こういう格好似合うよなぁ。

 「早くしなさい、この寝ぼ助!」

 「五月蝿い! 誰も寝坊なんて一言も言ってないだろ!」

 「言わなくても分かるわよ。だって、寝癖が直ってないもの」

 「忘れただけかもしれないだろ!?」

 「かもしれないって事は、ありって事でしょ!?」

 「なしって事だね!」

 「いいえ、ありよ!!」

 「いや、なしだっ!!」

 「いいえ―――!」

 「いや―――!」

 「口喧嘩は! ……普段から十分に聞いてるから、もういいよ。ソラ、早く切符買って。電車が来たみたいだ」

 「う、ウイッス……」

 普段はとても大人しい人に怒られる事が、一番恐いかもしれない。というか、言い方が恐かったよ、波月。さすがっちゃあ、さすがかなぁ。

 「え、ええと、えっと、……どこ駅だっけ?」

 「浅草駅だよ。ホラ、早く!」

 財布を矢吹に奪われ、勝手にあさられ、勝手に切符を買って押し付けてきた。

 「早くしないと置いてくわよ!!」

 あぁどうせなら、波月がよかった。

 なぁんて思いながら、波月達を追ってホームに下りた。



                  〜 数分後 〜



 しばらく電車に揺られつつ、再び眠りにつきそうになった頃、浅草に到着しました!イエィ!!

 食って食って遊んで食って、遊びまくるぞぉ〜!!

 「目的、忘れてない?」

 「何が♪」

 「語尾が楽しげな時点で、あんた、忘れてるでしょ??」

 「だから、何を♪」

 「馬鹿」

 「酷いですわ! 私の仲間を探してくれるんじゃなかったんですの!?」

 「あ!」

 「……忘れてたでしょ。今の今まで」

 いつの間にかバックから飛び出てきてた、ローグに睨まれる。その赤い瞳が、潤んでいた。

 わ、忘れてたなんて、口が裂けても言えない……。

 「まあ、とりあえず、この暴食馬鹿はほっといて、探してみましょ?」

 「はいですの!」

 「そうしようか」

 あれ? 皆様同意見!?

 「あの、謝るんで、仲間に戻してくれません?」

 「で、思い出せそうな地名とか他にある?」

 波月、スルーなの?

 「よく思い出してみたんですけど、カミナリマンが一番印象に残っているんですの」

 「カミナリマン?」

 「似たような発音だと、雷門っぽいけど違うかしら」

 「それかもしれませんわ」

 「とりあえず行ってみようか」

 ローグに矢吹まで!?

 「あ、あのぉ……」

 「地図によると、雷門は……あっちみたいだな」

 「さぁて、仲間はいるかしら」

 「いると嬉しいのですが……」

 三人揃って、完全にスルー!?

 ……何か、ものすごーく悲しいよ。

 足並みそろえて歩いていく三人のうちの一人、神は振り向いた。

 「早くしないと、置いてくよ?」

 「はじゅきぃ〜〜〜」

 「泣くなよ、ソラ。ホラ、行くよ?」

 「あ゛い」

 「……やっぱ、ソラは面白い」

 やっぱ、波月は神様です。

 波月が貸してくれたハンカチで涙を拭き、その頼りたい背中を追って、俺は走っていきました。

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