特別編 虹色ラプソディー 後編
タイトルの通り、後編です。終わります、今回で。
グダグダで、ベッタベタな展開とか言われても、分かりきっている事なので勘弁してください(オイ
それでは、コラボ最終回! お楽しみあれ~。
少し前の出来事のはずなのに、意外と人は忘れてしまっているもので、矢吹さんの家すら分からずに迷子になっている人だっている。ずばり、私達の事です。
「こっちやっと思うんやけどなぁ」
なんてヒノちゃんは言うけど、この道に来るのは5回目だったりします。
「じゃ、今度はこっちに行ってみようよ」
「せやな」
「あ、待って。今、私達が来た道だから、こっちに行こう」
「あれ、そうだったっけ」
「んー、どうやったやろ。まぁええわ。カイリについてくで」
……ど、どうしよう。こっちじゃなかったらどうしよう!
「おー、あったあった! すごいね、海梨ちゃん!」
適当だったなんて、今更言えません。
「じゃ、孝くんの言ってた通りにやろか」
「おー!」
「お、おーっ!」
って、
「よ、呼び鈴押してからじゃなきゃ失礼になるんじゃ」
ガチャリ
「あー、せやったな」
もう遅いよぅ。
「開いちゃったし、いいんじゃない?」
「いいのかな」
「ええやろ。顔見知りやし」
ずかずかと、「お邪魔しまーす!」と叫んで入り込んだら、エプロン姿の矢吹さんがかなり驚いた顔で出迎えてくれました。
「あふぇ!?」
もぐもぐと、何かを食べている最中だったみたいで、飲み下してからまた口を開きました。
「えっと、呼ばれた?」
「呼びました」
正しく言えば、呼ぶ前に入ってきてから呼びました。……分かりにくいですね。
「あの、何のようですか? 映画を見に行ってたんじゃ?」
「えっとですね」
何かを話し出そうとしたなっちゃん。人差し指を唇に当てて、少し首をかしげたまま固まった。微動だにしません。ヒノちゃんも矢吹さんも動きません。
「ちょ、ちょっとタイム!」
再び動き出したなっちゃんは、隠れてポケットを探ってから、何かを見つけ確認して帰ってきた。
「映画に行く前に、忘れ物を忘れたみたいなんで忘れにきました!」
「……へ?」
「忘れ物したみたいなので、ちょっと捜させてもらってもいいですかっ!」
「あぁ、なるほど。いいですよ、好きに探して」
「おおきに」
ナイスフォローと、小声でヒノちゃんが言ってくれた。
「甘い匂いがしますねぇ」
「ふんふん、ほんまやな」
リビングに着くなり私達を出迎えたのは、甘ったるい匂いの重い空気。そして、ねずみ色の煙。
「えへへ、チョコを作ってたんだけど、うまくいかなくって」
矢吹さんが照れくさそうに持って来たのは、なんともいびつな形をした何か。チョコというからチョコなんでしょうけど。
「味はいいんですよ、見た目はこんなんですけどね」
よく見れば、頬や手、エプロンが汚れてる。そんなにハードなものじゃないと思うんですけど、煙の正体が気になる。
「この煙は?」
「あぁ、お鍋にチョコをそのまま入れてみたんです」
な、なんて荒行を!
「チョコを溶かすのがあんなに大変だなんて、知らなかったですよ」
いえ、チョコはそう溶かすものではないですから。湯銭とかで溶かしますから。
「なんとか作った結果、これなんですけどねぇ」
身を翻して、銀のトレーに乗っていたチョコを全てゴミ箱に捨ててしまった。
「もったいなくないですか?」
「チョコの材料はいっぱい買ってきたからいいの」
「折角作ってたのに、味見をしないのはもったいないんとちゃうん?」
「さっき食べたんですけど、堅すぎて顎が壊れるかと思いましたよ」
あのチョコに、一体何を入れたんでしょうか……。
「私の事は気にせずに。映画が始まる前に探し物が見付かるといいですね」
「そうですねぇ……っと!」
早速何かに躓いて転ぶなっちゃん。だ、大丈夫かな。
「せや、映画までまだまだ時間あるし、手伝いましょか?」
「え?」
そう、私達の目的は忘れ物を探す事じゃない。そもそも、忘れ物なんてありません。
「折角のバレンタインデーや、成功させてなんぼやろ?」
「だいじょーぶですよ、料理のお礼です! じゃない、お詫びですから!」
「作るのなら、綺麗に美味しく作りたいですよね!」
「……まあそうですね」
「なら遠慮せんでええよ。ウチらに任せとき!」
「え? あ、はいっ」
半ば強引ではあるけれど、なんとか作戦を実行できそうです。孝介君達もうまくいっているかな?
ふと、気づいてしまった。有澄さんを見つけるのって、ほぼ不可能なんじゃないかと。
僕らはただの通行人で、親しい仲ではない。矢吹さんの家には有澄さんが連れて行ってくれたから、なんとかたどり着く事は出来るだろう。だけど、有澄さんの顔だけしか知らない僕らはどうしろと?
「なぁ、孝介」
「何?」
「俺らってもしかして、……迷子か?」
「何を今更」
「だよな! そーだよな!」
頼むから耳元で叫ばないでくれないか。ホントに情けなくなるよ、いろいろと。
「あんの馬鹿にぃ! 家に帰ったら許さないんだから!」
「まあまあ、落ち着いて」
目の前を通り過ぎる2人。1人はかなり怒っている様で、もう1人はそれをなだめるのに必死みたいだ。
「なんかもめてんな」
「そうだね」
「私が食べたいって言ったのはグラタンよ? なのになんでチャーハンの材料を買ってくる訳!?」
「ソラも悪気が合った訳じゃないと思うんだ。だから許してあげて?」
ん、ソラだって?
「どした、孝介」
「え、いや。さっきの人達が有澄さんの名前を言っていたような……」
「ソラにぃは何考えてるのか分からなすぎるのよ!」
「あの!」
2人とも同じ反応で、振り返る。1人はまだ顔に幼さが残る女の子で、もう1人は男の僕から見てもカッコいい男の人だった。
「な、なにか?」
最初に口を開いたのは男の人のほうで、戸惑ったような笑みを浮かべてる。
「あ、のですね。今、ソラって言ってませんでした?」
「言ってましたけど、どうかしましたか?」
「僕達、有澄さんの家に行きたいんです」
「え、ウチに?」
今度は女の子が答えた。
「私、馬鹿にぃの妹なんです。あの馬鹿、また何かやりました?」
言われて見れば、確かにどこか有澄さんに似ているような……。それにしても、あんなに馬鹿馬鹿言われる有澄さんが少し可哀想だ。
「ちょっと用があるんです。けど、伝言を伝えてもらっても?」
「えぇ、構いませんよ。一発殴ってからだけど」
小声で言った最後の一言に、僕もタクも苦笑いした。
「じゃあ、お願いします」
*
「そっちも上手くいったみたいやな」
「なんとかね」
「うんうん、よかったよかった!」
そういいながら、見事に電柱に激突した。かなり痛そうだけど、大丈夫かな?
「だ、大丈夫?」
「うん、平気でごわすっ」
無駄に元気で何よりだ。それよりも、
「大丈夫か、タク」
「……ダメっぽい」
こっちはあの悪魔のもてなしが今になって腹に来たようで、歩くのがやっとの状態だ。顔色も悪いし。
「あんなん食べて大丈夫な訳がないやろ」
みんなうんうんと頷く。否定できないからね。
「でも、美味かったんだぜ?」
「だけど、こうなってる訳だ」
「き、きっと、食べ過ぎただけだよ!」
海梨ちゃんがフォローするけど、一概にもそうは思えない。とりあえず、食べなくて良かったと思う。
「今頃、あの2人はどうなってるかなぁ」
「多分上手くやってるんじゃない?」
「チョコも問題なしや、絶対大丈夫やて」
「うんうん。あ、そうだ」
何か思い出したのか、海梨ちゃんはカバンをあさり始める。それにあわせて、他の2人も何かを探す。
「どうしたんだ?」
「えっとね、……はい、これ」
海梨ちゃんがタクに見せるように出したのは、可愛いハートの形をした箱。ここまでくれば、誰でも予想は出来る。
「お、俺に!?」
「う、うん」
急に元気になったタクは、恐る恐る手を伸ばす。受け取った箱を、穴が開くほど見つめて。きっと、柴村琢人にとっては、かなり衝撃的な瞬間だったんだろう。
「孝くんにもあるさかい、安心しぃや」
「それはそれは有難いね」
胸を張ったひのでちゃんは、星形の箱を僕に渡す。それから、海梨ちゃんから予想外のプレゼントをもらえて、放心中のタクにも無理矢理握らせていた。
「私からもあるよ!」
え、な、なんだって!
「さっき転んじゃった時に、割れてないといいんだけど……」
「割れてたって構わないよ。食べれる物なら」
「えへへ、こーちゃんは優しいね」
そう言って渡されたのは、チェック柄の四角い箱。とても丁寧にラッピングされている。さすが女の子と言ったところかな。
「ホワイトデーが楽しみや♪」
って、ひのでちゃんはそれが目当てだったのか……。でもまぁ、
「みんな、有難う」
「い、井戸端……が、俺に、チョ、チョコを……」
家に着く前に、タクは現実に帰ってこれるだろうか。ひのでちゃんに叩かれてるのにも気付いてないけど、きっと大丈夫だろう。きっと。
やっと終わった! けどまだ次がぁぁぁ!
そんな作者の叫びはどうあれ。
どうだったでしょうか、このコラボ。
ハッピーエンドを目指して、そして『スクール・ラプソディー』のキャラを活かして頑張ったつもりなのですが、まだまだって感じでしょうか?
誤字や変な表現がなければいいのですが……。
やはり、私にコラボは向いていないのだろうか。
思考がどんどんネガティブになっていくばかりでございます。
さてはて、次回からしばらく本編に戻ります。
……え? 『平凡ではない日常。』とのコラボはどうしたって?
ネタを考え中です。えぇ、どうしたのものか。本気で悩んで夜も眠れません(実話
とりあえず、何かいいものが浮かんだら、即行で書きます。本編が終わる前には必ず書きますから!
それでは、また次回まで。