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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
最終章 ユネプロミス―約束―
52/80

51、夏休み終盤戦?


暖かくなると、私の脳みそはとろけてなくなるようです。

簡単に言うと、なまけ度が上がりまくるという事ですね。はい。


更新がまた遅くなってしまった事を心からお詫びいたします。これからもまったりのそのそと遅い更新になってしまうと思いますが、お付き合いいただけると嬉しい限りでございます。


ん? そんなのあとがきで言え? ……そうですね、失礼いたしました。

それでは、長くなってしまいましたが、本文お楽しみくださいませ!

 「ふぁ、やっぱり我が家が一番よねぇ」

 ご飯が豪華じゃないとか、ご飯がチャーハンに限られるとか、ご飯のレパートリーが少ないとか、この際気にしない事にして。

 妙に緊張感のある豪勢な部屋よりは、狭くて少しうるさい部屋がいいなぁ。住み慣れてるから、どこに何があるとか、ちゃんと分かるし。お風呂は広すぎると、1人じゃ寂しいし。

 「でも、つまんなーい」

 ソラにぃは、友達に誘われて映画見に行っちゃったからいない。赤と橙、黄色に緑はそれについって行っちゃったみたいだしなぁ。青と藍色は、いつもと同じようにお茶飲んでから散歩に行ったみたいだから、静かなのよねぇ。

 「つまんなーーーい!」

 高城君は部活で忙しいみたいだし。早苗は彼氏とデートを自慢してくるし、美奈は家族旅行中らしいし。……自慢げにハワイの写メとか、彼とのツーショット送ってきちゃってさ。新学期、これでもかって程いじってやるんだから! みんな残り少ない夏休み、楽しんでる……。

 よっこらしょ、とベットから起き上がって、机を片付けてみた。暇すぎてやる事がないから、片付けているだけで、別にごちゃごちゃしている訳じゃないんだから。ちょっと目に付いただけなの。

 「……音楽でも聞こ」

 静かすぎて、やる気が出ない。お気に入りの曲でノリノリになりたいなぁ。

 「……暑いなぁ」

 窓でも開けようかな。あ、それより扇風機よね扇風機。扇風機つけるんなら、アイスも食べたいなぁ。確か、ソラにぃが買ってきたアイスバーがあったはずね。うーん、カキ氷もいいなぁ。だけど、氷ってあったっけ? 昨日そうめんに使ったような気がしないでもないわ……。


 ガチャ


 「ん?」


 バタン


 ソラにぃが帰ってきたのかな。……まだ3時。早すぎる、夕飯も食べてくるって言ってたもん。

 「もしや、空き巣!?」

 え、でもでも。私がいるから空き巣じゃない? じゃあ強盗?

 「じゃ、なくて!」

 ソラにぃがいない間、うるさい虫達もいない今、この家を守れるのは私だけだものね!

 机を片付けている時に、偶然見つけたリコーダーを持って、静かに部屋を出る。抜き足、差し足、忍び足……。ソラにぃの部屋の前を通り過ぎて、階段に到着。ゆっくり曲がる所まで降りて、下を覗くと……。

 「お、おばさん!?」

 「! あら、ウミちゃん。元気だった?」

 「おぉ、大きくなったね」

 不法侵入者じゃなくて、私達を預かってくれているおばさん達でした。2人とも優しい笑みを浮かべて、リコーダーを慌てて隠す私を見上げる。大きな荷物が玄関を塞いでいるから、ソラにぃが帰ってくる前にどうにかしてあげないと。

 「お土産いっぱい買ってきたのよ。……ソラはいないの?」

 「友達と映画を見に行っているの」

 「そうか」

 そして、2人ともちょっとソラにぃに冷たいんだ。なぜかは分からないけれど、私に対してはニコニコ接してくれるし、欲しい物も買ってくれたりする。だけどソラにぃとは話したくないみたいで、いつも不機嫌な顔をする。ソラにぃは何もしてないのに。

 「ソラが帰ってくる前に、いろいろ私達がいなかった時の話を聞かせてくれない?」

 「あ、じゃあお茶いれるね」

 「ありがとう」

 「その前に、おかえりなさい」

 「ただいま」

 優しい笑顔でそう答えて、重そうな荷物を引きずりながら、久しぶりに自分達の部屋へと帰っていくおばさん達には、ローグ達の事は黙っていようと思った。




 「つまんねぇ!」

 「まあそう言わないの、ジャウネ」

 「そうですの。私達はあくまで居候なんですのよ?」

 「しかも常人には目に映らん居候じゃな」

 「かく申す事になり申してしまうのは、詮ない事なんでござる」

 「……うん」

 ソラにぃより、小うるさい虫達が先に帰ってきちゃって、さっきから「つまらない」を連呼してる。おばさん達にもしかしたら見えるんじゃないかってハラハラしてたけど、全然見えてないみたい。テレビを見てるおばさんの前であっかんべぇしても、新聞を読んでるおじさんの前で変な顔しても、頬を引っ叩いたって鼻をつまんだって、髪の毛を引っ張ったって絡ませたって、気付かなかったもん。

 「つまんねぇ! 反応皆無でつまんねぇ!」

 普段から一番うるさいジャウネが、さらにうるさくなった気がするわ。あぁ、早く帰ってきてソラにぃ。

 「ソラ、遅いわね」

 「そうだねぇ。そろそろ帰ってくると思うんだけどなぁ」

 「いつもソラはこんな時間まで遊んでいるのか?」

 「いつもはウミにこき使われてるよ、バーカ」

 「お黙り」

 「痛っ!」

 あんな事言った罰よ。それと一言余計だから。

 「ウミ?」

 「ん、いや……なんでもないの」

 「妹をこんな時間まで1人にさせおって」

 「違うよ、今日は遅いだけで」

 「ウミちゃんだけに家事を任せて出かけるなんて、兄として最悪だわ」

 「違うって!」

 「ソラ様はウミ様より良く働いてますわ」

 「そうね。掃除も洗濯も、言われなくてもやってますし」

 「このジジィとババァはソラの何を見て言っとるんじゃろうな」

 「うむ、左様じゃな」

 妖精達に何を言われても聞こえないおばさん達は、明らかに嫌そうな顔をしてまだブツブツ言ってる。

 「ただいまー」

 んもう、なんてタイミングで帰ってくるのよ、バカにぃ……。

 「ごめん、遅くなっちゃった。玄関に靴があったけど、誰かきて……」

 リビングの扉を開けて、その誰かがおばさん達だと分かったソラにぃは固まった。

 「……おかえりなさい、おじさん。おばさん」

 ソラにぃがそう言ったけど、おばさん達は無視してテレビを見たり新聞読んだり。

 「おかえり、ソラにぃ」

 「うん、ただいま。……ごめんね、ウミ。今日は俺が洗い物の当番だったよね? ささっとやっちゃうから」

 「洗い物はさっき私がやりました」

 「あ、そ、そうですか」

 妙にトゲがあるおばさんの言葉に、妖精達がまた言い返す。まあ、聞こえないけどね。

 「……じゃあ、お風呂入ってくるね」

 「うん」

 「その前に言う事があるんじゃないか?」

 「そうね」

 部屋を出て行こうとしたソラにぃが、ロボットみたいにカクカク動いて固まった。

 「ウミちゃんが全部やってくれたのよ? あんたが遊んでいる間に」

 『あんた』じゃない、『ソラ』だよおばさん。

 「お前は謝る事もできないのか」

 ソラだってば!

 「……すみません」

 ソラにぃも素直に謝らないで言い返しなさい!

 「ごめんね、ウミ」

 「ううん、いいんだよ! 気にしないで!」

 「ウミちゃんに迷惑かけて……」

 「なんて奴だ」

 「聞こえてんぞ、くそジジィどもっ」

 ジャウネはとりあえず黙っていようか。

 「……ごめんね」

 私の頭に優しく手を置いて、ちょっとなでてからソラにぃは部屋を出て行った。それに続いてローグやウネ達も部屋を出て行く。

 「ったく、可愛げのない奴だ」

 「そうね。ウミちゃんとは大違いだわ」

 「……私、寝るね。おやすみなさい」

 「あぁ、おやすみ」

 「おやすみ、ウミちゃん」

 あんな空気の中、ずっといられないよ。




 「あぅー」

 夏休みが早く終わって欲しいなんて、生まれてはじめて思ったかも。

 「なんでおばさん達はあんなにソラにぃに冷たいのかなぁ」

 ゴロゴロとベットで転がりながら考えてみたけど、やっぱり答えが出てこない。

 「人は人を貶す事に快楽を得る事もある」

 「わっちょ!」

 勢いでベッドから転がり落ちた……。こ、腰打ったぁ。

 「えっと、……藍色?」

 「ブルゥプロフォンド」

 「そうそう、フォンとか言ったわね」

 「……」

 「うん」とか「はい」くらいは言おうか。違うのかそうじゃないのか分からないじゃない。

 「で、どういう意味?」

 というか、単体でいるなんて珍しいわね。いつも青い子がくっついてたはずだけど。そいえば、他の赤とか橙は?

 「人は人の下では生きたくない。優位に立ちたいと、どこかで欲望が渦巻いてる」

 え、なに? なんかの論文?

 「怒り、憎しみ。その全てを制する事はできない。だから、何かに怒りをぶつけて発散する」

 珍しくよくしゃべる藍色……じゃない、フォンね。

 「ねぇ、よく分からないんだけど。ソラにぃが、おばさん達に何かしたの? それともおばさん達がソラにぃに何かしてるの?」

 「……」

 どっちなのよ……。あぁ、むしゃくしゃする! なんなのよ! いったいに何が何で何なのよ!

 「人の善と悪。見分けるのはボクじゃない」

 そう言って、窓から出て行った。うん、私の言葉は完全に無視だったわね。意味の分からない言葉残して、私にどうしろって言うのよ。

 「あぁ、窓閉め忘れてたんだ」

 夏でも夜風はさすがに冷える。そんな事より、今の会話が外に聞こえてないかも心配だわ。

 窓から顔を出し、左右を見渡し、下を見下ろす。白いネコが一匹、道路を歩いて行くのが見えただけだった。夜空を見上げて、ため息をつく。

 「私が知ってるソラにぃと、おばさん達が知ってるソラにぃは違うって言うの?」

 帰ってくるはず見ない答えに、またため息をついた。「みゃぁ」と猫の鳴き声が聞こえて、また下を見る。

 見慣れた風景の中に、変わったところはない。ソラにぃもおばさん達も何も変わっていない。しいて言えば、ローグ達がいる事くらいだけなのに。

 「私は、本当に知ってるのかな?」

 ソラにぃ、おばさん、おじさん。みんな優しくて大好きだ。その気持ちに、嘘偽りはない。けれど、

 「私って、知らない事の方が多いって事なのかな」

 きっと、そうなんだと思う。藍色も言ってたじゃない、『人の善と悪。見分けるのはボクじゃない』って。私自身で考えて、本当と嘘を見抜かないといけないんだ。

 「寝る、今日は寝るー!」

 いろいろと考えるのは嫌いなの。どちらかというとすぐに行動したい、今すぐにでも。だけど、寝るって言っちゃったし。眠くなってきたから、今日はおしまい。また明日があるんだから、明日でいい。

 ……嫌な事は1日1つだけでいい。

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