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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第一章 妖精との出会い
5/80

5、手掛かりと、気付いた事

 てな訳で、というか、どんな訳だかサッパリ分からないけれど、矢吹も『ローグの仲間捜し団』(この変な名前、矢吹が勝手に付けました。)に加わる事になった。

 「で、ローグちゃん。仲間の行き先、全然知らないの?」

 「訳の分からない単語だらけでしたので、そういうのは、ちょっと……」

 「いいよ、気にしないで! 有澄だったら、ぶん殴ってるトコだけど!」

 「何で俺は殴るんだよ! 差別だ! 差別反対!」

 「だってローグちゃんは正直で可愛いけど、あんたは可愛くないし、見てると何かムカつく」

 「な、何かムカつくって……」

 「まあまあ、そうやってまたわき道にそれないで。なぁローグ、何言ってたか思い出せないか?」

 仲裁に入った波月。ああ、やっぱり今日もカッコいい。

 俺らは今、マックに来てます。モチ、百円マック目当てで。前はチョコだったから、今日はバニラです! ウマウマ~♪

 「そうですわねぇ。ウネビガラブは……浅草とかって言ってましたの。ジャウネも同じような事を言っていましたわ。ヴィオロシィは元々無口なので、あまり話してなかった気がしますですの。ベートと、ブルゥプロフォンドは、温泉だとか、おっきな城だとか、……一番いろいろな事を言って、よく覚えてませんわ」

 「ウネビガラブ? 何それ、早口言葉?」

 知らない単語だらけで、もう脳みそがショートしそうなんですけど……。

 「違いますわ、ソラ様。それらは私の仲間の名前ですの。『橙』のウネビガラブ。『黄』のジャウネ。『緑』のベートに、『藍』のブレウプロフォンド。最後は『紫』のヴィオロシィ。ちなみに『赤』は私、ローグですの」

 「……それって、前言ってた『仕事』に関係あるの?」

 「大有りですわ!!」

 そう言ってデンと構えたはいいけど、カップの蓋の上でバランスを崩して、真っ逆さまに落下運動。あんまり落ちた気はしないけど、本人にはかなりの衝撃だったようで、

 「痛いですのぉ!!」

 と、言って泣き出した。

 そんなローグを、そっと矢吹は手で包みながらあやしていた。こういうのは、得意だよなぁ、こいつ。何せ、下に妹や弟やらがいたからな。……あ、俺もそうか。

 ローグはしばらくして泣き止んで、矢吹に礼を言い、再び話は再会された。

 「私達の仕事は、空に虹を架ける事ですの。そして、それが消えるまで護るのも、私達の仕事ですの」

 「つまり、……どゆ事?」

 サッパリわっかりまっせぇん! お手上げです!

 「分かり易く説明しますと、私達は虹の妖精ですの。と、言う事は虹に関する仕事をするのが勤めという事ですの。……ここまではいいですか、ソラ様」

 うん、うん。だいたいOK!

 俺は頷きでそれを知らせた。ローグも1つ頷き返すと、話を続けた。

 「虹の妖精は、色に分かれて仕事をなします。『赤』なら赤い虹を、『橙』なら橙の虹をと言った具合にですの。あの、大丈夫ですの?」

 「……ま、まだ大丈夫」

 自信はないけど、とりあえず頷く。

 「では続けますの。私達がそれらを繋ぎ合わせる事によって、あの大きな虹はできているんですの」

 「て事は、それぞれ担当があるって事だよね?」

 ほー、そういう事だったんだぁ。初めて知ったよ。

 て、あれ? 何故か冷たい視線を感じるんだけど。

 「……漸く理解したの、有澄」

 「漸くとは失礼だな! お前も分かってなかっただろ?」

 「……ハァ」

 「何だ、そのため息は!」

 「細かい所まで聞いて、やっと理解できたあんたが、哀れになっただけ。気にしないで」

 「いや、気にしないでって……」

 ん? 何だこの気まずい空気は!? 何だ何だ!?

 「ソラ、もう少し勉強しろ」

 何故に命令形なんですか。波月なら許すけど、何故に命令形?

 「ま、馬鹿はほっといて、大体居そうな場所がつかめてる……なんて言ったっけ? アブラカタブラ? と、ジャストだっけ?」

 「いや、違う。開けゴマと、ジャガイモだ!」

 「……いや、二人とも違うからな」

 「もしかして、ウネビガラブとジャウネの事ですの?」

 「「そうそう、それそれ!」」

 うっ、またハモった。……どうせなら、波月とハモりたいんだけどなぁ。

 「ま、浅草はそこまで遠くないし、何とかなるでしょ」

 胸を張る矢吹。威張ってんじゃねぇ、脇役! て、心で叫ぶ。

 「そうなんですの?」

 「そうなのですのよ」

 「……真似しなくていいんだって、ソラ」

 苦笑気味にまた、同じようなツッコミされたけど、波月だから許す! 矢吹だったら、許さない!

 「じゃあ、早速明日にでも行く? どうせ、明日は学校ないんだし」

 「いいよ」

 「ありありさぁ」

 「……」

 「何人?」

 冷たい波月の言葉がやけに突き刺さったのは、言うまでもありません。



                     ******



 「ただいまぁ」

 「お帰りソラにぃ!」

 元気でいいよなぁ、中学生は。……って、俺もそうだった。

 「遅かったね? まさか、また寄り道してきたの? 今月ピンチなんだから、外出は避けてよね。ついでに、寄り道もね」

 「あ〜い」

 ……浅草の件は、黙っておこう。あとが怖いもん。

 「あ、ソラにぃ!」

 「あい?」

 階段登りかけで、不自然な角度で振り返る。

 グギッ。

 あ、今腰が……。

 「今日の食事当番、ソラにぃだからね。朝に学校の花壇に水あげないといけないから、早めによろしく!」

 「ありありさぁ」

 「……どこの人?」

 波月と似たようなツッコミをされ、再び心が傷つきました……。



 「ぷはぁっ! 狭かったですわ」

 「そりゃ、バックの中だからな」

 「教科書に踏み潰されそうになって、大変でしたのよ!」

 「あい、すみません」

 「まあ、ソラ様なら許して差し上げますの。……それにしても、何故こんな狭いものの中へ入らなくちゃならなかったのですの?」

 真っ赤なドレスに付いた、(彼女からして)大粒の埃を取ってやる。せめてもの償いに。

 「いやぁ、ウミに見つかると、また口喧嘩が始まりそうだったから」

 「ソラ様が下手にまわってはいけませんわ! 男として、堂々と構えなさいといけませんの!」

 「あい」

 「返事は『はい』ですの!」

 「はい!」

 ……う〜ん、スパルタの家庭教師が来たみたいで、ちょっとヤダかも。でもまあ、虹の妖精の仲間が集まるまでの短い間なんだから、仲良くしたいと思うのは俺だけじゃないですよね?

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