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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第三章 秘められしモノ
49/80

49、花の香りと緑色


はっきり言います。サブタイ、あまり意味がありません!

もう使い果たしちゃった感じですね、ネタを。もっと考えればどうにかなるんだろうけど、作者はもう限界を迎えたようです。あはは。(笑うな


そんなこんなで、投稿する時間が遅すぎる件はスルーすると言う事でお願いします!


まあ何事も気にせずに、ちょっぴりシリアス、ちょっぴり笑えるかもしれない本編へどうぞっ!

 急激に元気を取り戻しやがった矢吹に、見事にジャンケンで惨敗し、もう何度目かの料理を運ぶ事になった俺。パーティーが楽しくないの、はじめてなんだけど。

 「つまらなそうな顔してないでくれない? 料理が不味くなるわ」

 「あ、ごめんなさい」

 純白の体のラインが活きたドレスを着た女性に、これでもかと睨まれてしまった。

 およ、見た事あるようなないような顔だな。

 『こんばんは、有澄さん』

 「……っ!」

 よく耐えた、耐え抜いたよ俺。今叫んでごらんよ、冷たい目線にさらされてましたよ。

 「どうしたの、有澄?」

 「え、いや。汐見、綺麗だなぁと思って」

 「そ、そんなの当たり前でしょう?」

 さすがお嬢様。褒められなれているようで。

 『すみません、驚かせてしまいましたね』

 「気にしないで」

 小声で囁けば、安堵したかのように篠枝さんが笑った。んー、幽霊は慣れたつもりなんだけどなぁ。まだダメっぽいねぇ……。

 「あら、お友達ですか?」

 「いえ、ただの同級生です」

 「私は華見崎はなみざきささな。この礼奈の友達、よろしくね」

 「ども。……あ、俺は有澄ソラです」

 差し出された手をとって、軽く握手。人見知りにしては上出来だぞ、俺。

 『華見崎様は幼少の頃より仲良くしてくださった方なんですよ。一流のピアニストなのです』

 ほえー、ピアニストか。すごいなぁ。

 「礼奈がこんなに照れてるの、始めて見たわ」

 え、あれで照れてたんですか。

 「ちょ、ささなさん!」

 汐見は自分より背の高い華身崎さんを、見上げるように睨む。慌てすぎて、手に持ったグラスを落としそうになっていた。

 「照れないで、礼奈。大丈夫よ、とったりしないから」

 「とるもなにも、狙ってすらいませんから!」

 クスクスと笑う華見崎さん。汐見と似たようなドレスを着て、サラサラと流れる長い綺麗な黒髪と花のコサージュが印象的だ。

 「礼奈のプライベート気になるわね。有澄君、だっけ? ちょっと話さない?」

 「え゛?」

 初対面の人とろくに話せないですが。というか、プライベートも何も、汐見の事なんて全然知らないんですけども。てか、どっからそんな流れになるの?

 「礼奈、これは任せたから」

 細い指が俺の手から料理の乗った皿を取って、汐見に預ける。ぽかーんとして何も言わない汐見の後ろでは、あわあわしている篠枝さんがいた。

 『お持ちしてあげたいのにぃ~』

 もどかしい気持ち、痛いほど分かるよ。

 「じゃ、またね」

 華見崎さんは、優雅に手を振る。最近、俺に決定権とかの権利が全然ない気がするんだけど、なんでなの? 酷くね?

 「さてと……行きましょうか、陰陽師」

 俺の腰を抱いて、耳元で華見崎さんがそう囁いた。

 「んなっ」

 「大丈夫ですよ、騒がない限りは」

 「……」

 「良い子ですね。ホテルの外へ出ましょうか」




 そして、そのまま自然な動作で外へ連れてこられました。途中で三枝さんにあったけど、笑顔で見送られてしまった。見捨てられたよね、確実に。

 「わっとっと!」

 危うくアスファルトにキスするところだったじゃないかっ。急に放り出すのは反則じゃない!?

 「貴方、有澄家の血筋でしょう?」

 「そうですけど」

 なんで知ってんの? ストーカーですか? 一般市民の中学生相手に?

 「私達は力が必要なのです」

 「なんの話ですか?」

 カツカツとヒールをならして、距離を詰める華見崎さん。温和そうだった目が、どこか冷たい光を宿して睨んでくる。走って逃げるにも、さっきの言葉が気になって仕方ない。

 「知らないとは言わせませんよ。香雲かうんから聞いているはずです、私達の事を」

 「え、なんで母さんの名前を!?」

 香雲。珍しい名前だもん、そう何人といるわけじゃないだろうし……。それに、私達って?

 「華見崎ささなは別の名です。本当の名は、諏墺すおうささな。諏墺の名なら、聞き覚えがあるでしょう?」

 「いえ、全く」

 「ほら、おぼえ……てぇ!?」

 え、いやいや。そんなに驚かれても。

 「同級生か何かですか? 華見崎はピアニストとしての名前なんですねぇ。そーいうのってカッコいいですよねぇ」

 「あ、そうですけれど。え、あれ?」

 あれ? って言われても。こっちがなんでこんな状況になったのか聞きたいんですけど。

 「し、知っていても知らなくても、べ、べつ、別に構わないのです」

 構わないならそんなに焦らないでください。そんなにポロポロ涙流さないでください。ハンカチはないんですよ、矢吹に貸しちゃったから。

 「と、ともかく! 有澄家に伝わるひじゅちゅ、教えていただきます」

 「……ひじゅちゅ?」

 「ひじゅちゅ、ひじゅじゅ、秘術、です!」

 してやったり、そんな顔をしているけれど、それまでに可愛いミスをしすぎです。

 「秘術なんて知らないですけど。てゆーか、はな……諏墺さんは何者ですか?」

 「良くぞ聞いてくれましたね!」

 いや、気になったから聞いただけだよ? そんなハイテンションにならないで。

 「諏墺家は有澄家に次ぐ、陰陽道の名家です。力こそ敵いませんが、技術ではほぼ互角です」

 「ほえー。じゃ、結界も諏墺さんが?」

 「はい、ことごとく破壊されてしまいましたがね」

 「何のために?」

 「邪魔をされないよう、貴方の力も弱めるつもりだったのですがね」

 えっとぉ、これはどういう意味かな?

 「貴方に拒否権はありません。私達と共に来てもらいますよ!」

 ドレスを脱ぎ捨てると、見覚えのある袴姿に変わった諏墺さん。よくばっちゃんが着てたものにそっくりだ。そして、ごそごそとゆったりとした袖を荒らすと、何かを見つけて取り出した。

 「縛!」

 「ちょっ!」

 飛んできた札を避けて、一息。人に向けて、しかも無防備な人に術をかけようとは何事か!

 「卑怯じゃないですか?」

 「これくらいしないと、香雲も捕まらなかったものでして」

 母さんと一緒にしないで欲しいな。俺はそんなに力ないんだよ? 専用の札も筆もないんですけど?

 「逃げてるだけでは、いずれ捕まりますよっ」

 いや、抵抗できるものが何もないんですが。ローグ達がいれば、何とかしてくれたかもしれないけど、部屋でぐっすりオヤスミ中だし。

 「てか、人に術かけちゃいけないの、陰陽師なら知って」

 「ますが、人は人でも貴方は陰陽師。禁忌は犯していません」

 「札も筆もないんですけどっ」

 「え!?」

 これでもかと飛ばされていた札がピタリとやむ。ふぅ、よかったよかった。

 「で、でも、式を使っていたでしょう?」

 「あれはお清めしたチラシとティッシュに、呪をかけたサインペンで作ったものなんですが」

 「そ、そんなもので!?」

 だって、旅行にそんな物騒なものいらないでしょ、フツー。

 「そんなものに、そんなものに、そんな……」

 『そんなものに』をブツブツ繰り返し呟いて、仕舞いにはアスファストの地面にしゃがんで膝をついた。

 「そんな即席の式に、私の結界が破られたのですか……」

 「まぁ、そうなっちゃいますね」

 俺の一言にビクッと反応すると、地面に「の」の字を書き出した。

 「そうですよ、そうですよ。どうせ私は諏墺家でも最弱ですよ。ずっとずっと香雲に憧れて頑張ってましたけど、力も恋愛も惨敗ですよ。えぇ、私はなんのとりえもありませんよ。これっぽちもありません。もう三十路なのに、中学生に負けますよ。敵いませんでしたよ、全く。えぇ、えぇ、私は無力ですとも。なーんにもどうせできませんよ」

 これは、呪いの儀式ですか? それとも魔物召還の呪文か何か?

 「おーい、ささな。そんな気ぃ落とすなや」

 そんな彼女の肩を叩く男の子が1人。うん、落ち込んでる人を励ましてあげるとは、良い子じゃの。

 ……って、いつの間にいたの!?

 「そりゃあ香雲の息子だし、それなりの準備をしてきたんですよ? 自分なりに対策考えて今日の日を待ちましたよ。だけど―――」

 「負の世界から帰って来いよー」

 バシバシ肩を叩く男の子。それでも負の世界帰ってこない諏墺さん。悪い事しちゃったかな?

 「ったく、有澄家なめんなって言ったの、お前のくせにさ」

 バシッとトドメの如く頭を叩く少年。さすがにやりすぎだと思うよ?

 「いった! ちょ、嵐暫らんざん! なにを、ちょ、やめ!」

 嵐暫という名前らしい彼は、諏墺さんが負の世界から帰ってきたのにかかわらず、バシバシ叩き続ける。

 「おー、帰ってきたか。今日は遅かったな」

 「嵐暫が叩くのに夢中で、私に気付かなかったからでしょう!?」

 「あれ、そーだったか。そーりー」

 「ったく、貴方という人は……っ」

 「あのー」

 「なんですか!」

 「俺、帰っていいですよね?」

 「え、ダメに決まってんじゃん」

 ちょ、年上にタメ口か。タメ口なのかこのやろう!

 「少々口は悪いですが、嵐暫に同意です。このまま貴方を帰らせるつもりは、な!?」

 「縛!」

 「がびょーん」

 そこの、嵐暫とかいうやつ。やる気ナッシングだろ? そうなのか、そうだろう?

 「ふ、札と筆はないと言ってたじゃないですか!」

 ロープのようなものに絡まれ、地面に倒れた諏墺さんが、抜け出そうともがきながら言った。

 「確かにそう言いましたけど、ろ……お気に入りの式達が体調優れないって言うから、」

 胸ポケットをあさる。取り出したのは、サインペンとポケットティッシュ。

 「念には念を、て奴ですな」

 「ま、またそんなものに私は―――」

 そして再び負の世界へ帰っていく諏墺さん。

 「助けにきた俺まで捕まっちまったじゃねぇかよ!」

 諏墺さんを器用に足で蹴る嵐暫。ちょ、可哀想だからやめたげて!

 「ま、まあ。ラッキーだっただけですから」

 うん、ラッキーだっただけなんだ。偶然に偶然が重なった感じ?

 「こうなったらぁ! ベート、ベート!」

 むん? 聞き覚えのある名前だな。

 「緑ー緑色ー」

 緑? んー、緑なベート。ベートな緑。

 「ベート、呼んでいるのですが!?」

 「嗚呼、すまないでござる。気が付やないでござる」

 ふわふわと舞い降りてくるのは、もう見慣れた空飛ぶ人形。深緑のポニーテールが風に揺れて、真っ直ぐに切りそろえられた前髪から、髪と同じ色をした鋭い瞳がのぞいていた。服装は純和風。つまり、和服ですね。袴だと思うけど。

 「お呼びでござるか? 諏墺殿」

 っていうか、口調に特徴ありすぎない? キャラ濃いめじゃない!?

 「この、邪魔なものをどうにかして欲しいんです」

 「御意」

 脇に差した刀を抜くと、あっという間に札を切ってしまった。

 「助かりました、ベート」

 「礼には及びませぬ」

 ペコリと頭を下げると、諏墺さんと並んで俺を真っ直ぐに見ました。

 「恩輩に手をば出す人は、それがしが許さんで候」

 「うぇ? えっと、んーと、じゃ、じゃぱにーずでよろしく?」

 「じゃ、じゃぱ?」

 小首をかしげる、仮定虹の妖精さん。あー、ローグ達がいればよかったんだけどなぁ。本当に。

 「そうです、許してはならないのです。私達にはあの少年の血が必要なんです!」

 「え、陰陽師じゃなくて、吸血鬼だったんですか?」

 「そうですよ、実はにんにくがですねぇ……じゃありません!」

 お、いいノリですね、諏墺さん。

 「なーんか、完璧にアイツのペースにのまれてね?」

 君は年上を敬うという事を知らないのか。

 「ベート、頼みがあります。あの少年を捕らえて下さい」

 「真田の旦那が仰せがままに」

 え、旦那じゃないでしょう。諏墺さんは女性でしょ? ていうか、真田さんって誰っすか?

 「て、ちょっと! ちょーっと待った!」

 「待ったはござらぬ!」

 刀を構えるおそらく虹の妖精ベート。

 「覚悟!」

 「ちょ、たんまって!」

 止まる気配は見せずに刀を振りかざすベートに、もう説得は遅い。ならば、賭けに出るしかないじゃないか!

 「君、もしかして仲間とか探してない!?」

 「な、なんと申した?」

 ピッタリとすんでのところで止まった刀に一息ついて、安心した。

 「ローグとかウネビガラブとかジャウネとか、そーいう子達知ってるでしょ?」

 「何故それがしが友が名をば存じておる?」

 「そ、その子達は迷子になったローグが探してって頼んできたから、見つけた子達で、それで、もしかして君もそうなんじゃないかなぁと」

 刀を鞘にしまう。そして、切れ長の目で真っ直ぐに俺を見つめる。見つめ続ける。

 「ち、違うかな?」

 「……」

 ちょ、そろそろ恥ずかしいよ? 早いかもしれないけど、ギブアップ寸前よ?

 「諏墺殿」

 「なんです、ベート」

 「それがしとが契りをば覚えているでござるや?」

 「……仲間が見付かるまでは、私に仕えてくれると言いましたね」

 「見付やったでござるようゆえ、無礼するでござる」

 クルッと振り返って、その一言と共に深々とお辞儀。礼儀正しいのね、この子は。

 「え、あっさりしすぎじゃね!?」

 「ら、嵐暫の言うとおりですよ、ベート!」

 「すまぬが、契りは、契りゆえ」

 顔を上げずに、さらに頭を下げる。ジャウネとそこの嵐暫とかいう男の子、ベートを見習いなさい!

 「そ、そんな!」

 「ざけんなよ!」

 「ふざけるも少しも、 最初よりさふ申す契りでござった手筈でござるよ」

 顔を上げた彼は、しれっとそんなことを言ってのける。薄情というか、淡白というか……。

 「そいつがウソ吐いてたらどうすんだよ」

 「そう、そうですよ!」

 こっちはこっちで悪あがきというか、むなしい抵抗というか……。

 「こが若者が眼に濁りはござりませぬ。ほらをば吐いておるなぞ、到底思えないでござる、諏墺殿」

 かたじけない。そう言って、また深々と頭を下げる。

 「あぁ、諏墺家は終わりです。破滅です、壊滅です、絶滅です!」

 一方諏墺さんはヒステリックでも起こしましたか!? 急に叫ぶのはアウトです、心臓に悪いです!

 「どうしても、私達には、力が、力が必要なんですよ、有澄ソラ」

 涙で滲んだ大きめな黒目が、ゆらりと俺を捕らえる。地面に足が縫い付けられたみたいに動かなくなる。

 「この腐った国を作り直すためには、強大な力が必要なんです」

 ゆらり、ゆらり。諏墺さんの黒髪が揺れる。

 「私達だけでは足りないのです。諏墺家だけでは、足りないのです。だから、だから貴方の力が」

 肩をガッシリ捕まれる。俺の隣で、鞘に納まった刀に触れるベート。

 「どうしても、必要なんですよ」

 うなだれる、黒髪が流れて表情を完全に隠す。目で、刀は抜くなとベートに指示して、肩を掴む手に触れた。ゆっくりと指を解いて、肩からはずした。その手は、とても冷たい。

 「俺は、そんな力持ってないですよ?」

 「いいえ、ある。貴方にはできるはずです。秘術をあのクソババアから教わっていないとは言わせません」

 く、クソババアって……。アナタ、人の祖母をなんて酷い呼び方するかね。

 「秘術、『鏡花きょうか』。美しく強靭で、最高の術です」

 「……聞いたことありま」

 「いえ、あります! 絶対、ある! 伝統を重んじる有澄家に、あの術が後継者へ受け継がれない訳がない! 怨霊も妖怪も、人からも恐れられた最強の術を!」

 知っている。答えてしまえばいいのに。だけど、その凶悪なまでの威力を知っているから。

 「すみません」

 「……これだけ接近したのです。貴方、気付いたでしょう?」

 「……禁忌、犯してますね」

 禁忌とは。まあ、簡単に言えばルールを破ってる事。そして、それを犯した陰陽師は人の温度を失うって聞いた事がある。死人のように冷たく、暗いオーラを纏うとも。

 「私は怨霊を生み出し、礼奈の家へ送り込んだ張本人です。それは、礼奈を傷付けたいからではなく、実力が知りたかったから」

 「でも俺、怨霊は祓ってないですよ?」

 「けれど、魂と憎悪は引き剥がせた。あれだけ念入りに作り上げた怨霊から、善意だけ拾い上げた。それだけの実力と、判断力があれば十分。鏡花だって扱えるはずです」

 「例えそうだとしても、諏墺さん達には教えられませんよ」

 「だから、血が必要と言ったのです。鏡花に必要なのは、有澄家の血と美しい花だと言う事だけは、こちらも掴んでいるのです」

 「それだけじゃ、術には足りない」

 「だからこうして、呪を教えて欲しいと……!」

 喉元に、冷たい感触がする。

 「こっちは命賭けてんだ。アンタも命賭けやがれ」

 「有澄殿っ」

 「ベート、手を出さないで。これは陰陽師こっちの話」

 全く、だから嫌いなんだよね。陰陽道ってさ。

 「鏡花を使ったって、国は変わらないんじゃないです?」

 「力ある者に平伏す。それが人というものです」

 「力だけ振り翳したって、なんの意味もないですよ」

 「俺達の支配下にいれねぇなら、そんな人間切り捨てちまえばいいんだよ」

 なんて残忍な考え方するんだか。

 「どっちにしろ、あんまり血ぃ使われると俺が辛いと言う事に変わりないね」

 「妹の血だって構わないですよ?」

 「ウミに力はないよ。でも、ウミに手を出したら、俺は自殺でも考えないとね」

 押し黙る2人。歯を食いしばるベートは、抜けない刀をカチカチ言わせていた。

 「あー、お腹減ったぁ」

 「この不利な状況で、よくそんな事が言えますね」

 「減らず口もいい加減にしねぇと……!?」

 「吹きすさぶ風に、身を裂かせよ」

 ダンッと足で地面を踏みつければ、コッソリと足で描いていた陣が発動する。ごめんね、こういう卑怯なのは好きじゃないんだけど。

 「空腹には敵わないから、失礼するよ~」

 猛烈な風に吹き飛ばされていった諏墺さん達を見ずに手を振り、唖然として口を開けたまま動かないベートを掴んでホテルへと俺は引き返した。

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