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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第三章 秘められしモノ
47/80

47、夏といえば、暑さと海とカキ氷!

あけました、おめでとうございました!


はい、もう過去形ですね。遅いですね、完璧に出遅れました。


そしてまだまだ寒いこの季節に、おいサブタイ。それでいいのか!?

年明けても、アルカンシエルは『夏』です。何度でも言います、更新が遅いがために『夏』です!


ずるずると引きずっても仕方がありません。ゆえに、パパッと本文へ行きましょうか。


では、まだまだ真夏のアルカンシエル、47話っ。どうぞ、お楽しみくださいませ!


 三枝さんが言った通りに、朝はサンドウィッチだった。温かいコーンポタージュと、簡単なサラダ付。俺からしてみれば、これだけ出れば十分というほど十分すぎて、タッパーでのテイクアウトを切に希望します。というか、お持ち帰りさせてください。どうか、どうかお願いします!



 とまあ、美味しい朝食を終えて。そして、興味があるのでダンスパーティーに参加する旨も伝えて。

 「海だー!」

 「夏だー!」

 「ハワイアンだー!」

 波月、2人のノリにのるのはいいけど、ハワイじゃないよ。砂浜ここにいるの、完璧に日本人だから。

 急に話が飛んじゃってすみませんねぇ。矢吹という子供が、「海だっ海だっ海だぁ♪」うるさいから……。無理矢理つれて来られた訳です。食後すぐに水泳は体に良くないらしいのに!

 「ジャパンにいながらハワイに来たみたいねっ」

 「ですねですねっ」

 矢吹、意味分からないぞ。そしてのるなウミ。悪いものがうつるぞ。

 「ソラにぃ、カキ氷が売ってるよ!」

 「なんだって! ブルーハワイは、ブルーハワイはあるか!」

 「あるよ! 私イチゴね」

 「じゃ、私はメロンで」

 「俺は無難にグレープかな」

 で、小銭を突き出す3人組み。え、何これ。嫌な予感しかしないんだけど。

 「我はレモンが食べたいぞ」

 「俺はウネに分けてもらおー」

 「わ、私はウミ様にイチゴをいただきたいんですの」

 「いいよー」

 「ありがとうございますの!」

 「私達はソラさんからブルーハワイをいただこうかしら」

 あの、妖精さんまでなんですか。え、これはあれですか。あれなんですか。

 「と、言う訳だから買ってきて」

 「悪魔! 鬼! 人でなし!」

 「露天風呂にも海にも入らないんだから、暇でしょ」

 「暇じゃないやい。砂の城でも作って遊ぶんだい」

 「破壊してあげるから、買ってきなさい」

 「いやいやいやいや! 破壊されたら困るから! 破壊されたら嫌だから!」

 「っさいわねぇ、つべこべ言わずに買ってきなさい!」

 なんですか、これ。イジメですか、イジメなんですか、イジメですよね。

 普通はさ、ジャンケンとかして負けた人が行かない? なんか勝負して負けた人が行くんじゃない? 無差別に、嫌味に、無理矢理お金を押し付けないよね?

 「頼んだわよ、有澄」

 「お願いね、ソラにぃ」

 「ごめんね、ソラ」

 「よろしく頼むぞ」

 「いってこーい」

 「えっと、その……お願いします、ソラ様」

 「私達はついてきますよ、ソラさん」

 俺の味方は、いないようですね。泣いても……いいですか?



 「はぁ、財布が泣くよ……」

 「あら、それにも心があるんですか?」

 「いやぁ、たとえだよ」

 ズボンのポケットに入った財布がね、明らかに薄くなった気がするんだ……。小銭が減っただけさ、小銭がちょっと、減っただけさ。うん、ポジティブで偉いぞ俺。頑張ってるぞ、俺!

 「とりま、冷たい……」

 店員さんにも驚かれたじゃないか。1人でこんなに食べないってーの、いくらなんでも。

 しかし、両手を使ってカキ氷を5つは辛い。冷たい、溶ける、シロップベタつく。あぁ、最悪……。しかも矢吹だけお金足りなかったし。ふざけてる。俺はアイツの召使でもなんでもないぞ。友達だとも思ってない。腐れ縁だ。……って、結局は友達だって認めてないか? いやいや、そんな事は無いだろ。だいたい、あの小娘はいつから俺に絡み始めた? 小学校だったか、幼稚園か? 引っ越してきた可愛い子がいるってドキドキしてた、淡い俺の男心をどうしてくれる。もしかしたら、隣の席にその子が座るかもしれない。もしかしたら、一番最初に仲良くなるかもしれない。もしかしたら、恋愛に発展してまさかのゴールインするかもしれない。そんな純粋な俺の、俺の大切な心を……っ!

 「きゃっ」

 「っとと」

 まさかの大激突。カキ氷は、ブルーハワイは無事か!

 ……なんて事よりも!

 「す、すみません、ちょっと考え事してて。だ、大丈夫ですか?」

 「……つつ」

 見覚えのあるような、長髪のビキニの女性が立ち上がる。んー?

 「って、有澄!?」

 「んー、どちら様でしたっけ?」

 「また同級生の顔を忘れたって言うの!?」

 お、なんかデジャヴ。

 「んーと、あー……お、汐見か」

 「気付くのが遅いわよ!」

 「ごめんごめん」

 苛立たしげに腕を組んだと思ったら、顔を真っ赤に染めて腰に巻いてたパーカーを羽織った。

 「顔赤いよ? 暑いんなら、パーカー着ないほ」

 「うるさい!」

 え、最後まで言い終わってないんですけど! 怒られるような事言ったつもりはないんですけど!

 「で、なんで貧乏人がこんな所に?」

 え、なんで急に冷たい態度? しかも貧乏人って酷くない? 確かに貧乏だよ、裕福じゃないよ。でも酷いじゃないか。俺だって泣くよ? カキ氷買わされる件からもう泣きそうなのに!

 「答えなさいよ」

 「うぇあ。あっと、当たったんだ」

 「何が」

 「え、えっと、抽選会で」

 「そう」

 え、素っ気な。つーかそれだけ!?

 「そういう汐見は?」

 「え?」

 「旅行かなんかじゃないの?」

 友達一緒とか、家族とか、妖精とか……。妖精はないか。

 『あー、有澄さん。どうも』

 にょっきり汐見の後ろから篠枝さんが現れた。うん、不気味だからやめて。怖いから、心臓に悪いからやめて。とりあえず、目だけでお辞儀をして挨拶。

 「汐見は1人?」

 後ろにいるけども。

 「いいえ、パパが一緒よ。あのホテルの設立者がパパだから」

 指差すホテルは、シェルバランホテル。おー、なるほど。反応が薄い理由が分かった。

 「主催のパーティーがあるから来たんだ」

 「ダンスは嫌いじゃないの。それに、家にいてもする事がないのよね」

 家って書いて『やしき』と読むんですよね、分かります。

 「宿題は?」

 「貴方とは違うの。終わってるに決まってるでしょ」

 「俺だって終わってるよ!」

 「それは失礼しましたね」

 謝る気は全くないんですね、痛いほど良く分かります。

 「ねぇ、有澄」

 「ん?」

 「そんなに1人で食べる気? お腹壊すんじゃないの」

 「食べねぇから! 流石にそこまで馬鹿じゃない!」

 「届ける人がいるんなら、早く行った方が良いんじゃないの。溶けるわよ」

 「おおぅ、そだね。じゃあ、またねぇ汐見」

 「じゃあね」

 照れくさそうに笑って汐見は手を振る。まだ顔が赤い。暑いのにパーカーなんて着るのがいけないんだ。



 「遅い! トロい! のろま!」

 「買ってきてやったのに、何だよその言い草!」

 「溶けてるじゃないのよ!」

 「少しだけだろうが! つーか、お前だけお金足りなかったんだぞ! 払ってやった俺に敬意ってものはないのか!?」

 「ある訳ないじゃない!」

 「んだとぅ!」

 「なによぅ!」

 「まあまあ、食べられるだけ良いじゃないか」

 「つめはーい」

 「ですのー」

 シャクシャク大人しく食べてるウミ達を見習いたまえ! そして「ありがとう」の一言でも述べよ!

 「しっかし冷たいな」

 「頭にキーンってくるぜ」

 いつの間にやら実体化した妖精達。と、言ってもブルゥとフォンはかわってないけど。ジャウネの実体化をはじめてみたけど、ローグとウネみたいに俺らと同い年って感じじゃなくて、小学生みたいだ。

 あぁ、言い忘れたけど俺以外はみんな水着です。

 「おいしいカキ氷に免じて、今日のところは許してあげる」

 「そーですか。そりゃーありがたい」

 「何よその棒読み。文句でもある?」

 ありありですけど? ありすぎて困るんですけど?

 「ねぇよ」

 「そーですかー」

 うっわぁ、いちいちムカつく! 一言一言が癪に障る!

 「パラソル頑張って立てたんだよ、矢吹さん。ソラにぃが海に入らないって言うかりゅあ!?」

 「あーらウミちゃん。お口に何かついてますよー」

 それ、拭くって言わないんだよ、矢吹。塞ぐって言うんだよ。そして、妹を殺そうとしないでくれるかな!?

 「ま、有難うと言ってやる」

 「仕方なくよ。ず、ずっと泳いでても楽しくないでしょ」

 顔が赤い。頬が赤い。

 「ちょ、な、なななななな!!」

 おでこに温度差なし。俺が冷たく感じるって事は、大丈夫って事かな?

 「ソラにぃ、離れてあげて」

 「むん?」

 「矢吹さん、違う意味で倒れちゃうから」

 「違う意味??」

 「はいはい、とりあえず、離れなさいソラにぃ」

 「りょーかい」

 くっつけてたおでこを離す。ウミがさっきより赤くなった矢吹を手で扇ぐ。波月が笑いを堪えている。ローグは顔を手で覆い、ウネウネコンビは大爆笑だ。ブルゥは満足げに頷いてるし、フォンは表情が変わらない。その前に彼女の表情が見えない。

 え、何。俺なにかしでかした?

 「ソラ、女性に無闇に近づいちゃダメだよ」

 「え、なんで? 熱があったら困るだろ?」

 「でもね、その……」

 波月がポリポリと頬をかく時は、本当に困っている時なのです。

 「以後気をつけまする」

 「うむ」

 にっこり爽やかスマァァァイル! だ、ダメだ。可愛い、素敵、惚れます!

 「おやおや、もう少し賑やかだと思っていたのですが」

 場違いだよ、三枝さん。ばっちりスーツで砂浜はダメだよ。

 「昼食の準備ができましたので、お呼びにあがったのですが、よろしいでしょうか?」

 いつから気付いていたのか、妖精達は実体化をこっそり解いて俺の周囲に集まる。ローグは例外として。

 「はーい、行きます行きます! ね、矢吹さん」

 「ふぁひ」

 「様子がおかしいようですが、大丈夫ですか?」

 「大丈夫です。ちょっと事故がありまして」

 「事故、ですか?」

 あからさまに不安そうな表情をして、胸ポケットからハンカチを取り出し、持っていたペットボトルの水をかけて濡らす。それを矢吹の額に当てて、水を持たせる。

 「熱中症でしょうか? ホテルに戻りますか?」

 「たいろーふです」

 「ですが」

 「だ、だいじょーぶれす」

 「……そこまで言うのでしたら。ご案内いたします、ついてきてください」

 「はーい」

 「ふぁーい」

 矢吹は魂が抜けたような歩き方&しゃべり方で、まだ心配そうな三枝さんの後を追う。食欲がなせる業か、はたまたこの夏の太陽の影響か。女性陣はそれに従う。

 「気がつかないソラって、鈍感だよね」

 「ん?」

 「なんでもないよ、俺らも行こう」

 「ありありさー」

 気付かないって何に? 鈍感って何に対して? 分かんないぞ、どうしよう。ものすごーく、置いてけぼりな気分。気持ちが悪い、あーもやもやする!

 「おふぉいわよ、有澄」

 「うるさい、千鳥足」

 中年サラリーマンの酔っ払いと化した矢吹を、支えるようにするウミが悪い笑みをした。何か耳元で矢吹に囁くと、動きが止まって、振り向く。俺を、俺を睨んでいる?

 「バカ」

 たった一言それだけ言われて、夜のパーティーが始まるまで口を利かなくなった。

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