表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第三章 秘められしモノ
45/80

45、お風呂といえば、露天風呂っ

 「おいひ~♪」

 「しあわふぇ♪」

 「ウマウマ♪」

 「たまらんのぅ♪」

 「皆様のお口に合ったようで、私共も嬉しい限りでございます」

 にっこりと半分以上減ったコップに、水を注ぐ三枝さん。幸せすぎて、涙が出そう。

 俺らが連れてこられたのは、3階のレストラン。和食に洋食、中華もあれば、それら全てあわせたバイキングだってある。俺らは和食レストラン、『静廉せいれん』で夕食いただいてます。上手いです、上手すぎです。

 三枝さん曰く、「皆さんの笑顔が最高の調味料」だとか。分からなくはないけど、料理が美味しすぎる。笑みがこぼれるのは当たり前すぎる。あぁ、夢なら覚めないで。

 ナスの焼浸しに酢の物、冷奴。酢の物初めて食べたけど、美味しい。家でも作ってみたい。レシピとか教えてもらえないのかな?

 里芋の煮物。口の中でほろほろと崩れてたまらんです。どうやったら型崩れしないでこんなに美味しく煮えるんだろう。これもレシピを求めます。

 鮎の塩焼き。しんぷる・いず・ざ・べすと! ……英語は苦手なんです。ごめんなさい、もっと勉強します。程よい塩加減に、少し柚子の香りが漂って清々しい。

 ご飯とお吸い物。うん、日本人でよかった。日本に生まれてよかった。生まれてこれてよかった! お吸い物は優しい味で、しつこくなくあっさりしてる。これなら毎日でも飲みたい。

 和菓子。もったいなくて食べれない。コロコロして可愛いもの、花びらが綺麗なもの、見た目が良すぎて食べれません。というか、本当に和菓子ですか? 置物かなんかじゃなくて?

 「夢じゃないよね」

 「夢じゃないよ」

 「ひっぱたいてあげようか?」

 「やめれ!」

 夢から覚めたら嫌じゃないか! って夢って決め付けてどうする俺!

 丸いテーブルを囲うように時計回りで俺、矢吹、波月、ウミが座る。幸せそうに食べ続けるウミは、始まりかけた口喧嘩を気にしていないようです。というか、俺らの存在すら忘れてない?

 「うへ、うへへ」

 ふいに不吉に、不気味にウミが笑った。正直に言おう、怖いと。

 「ふぅ、美味しかった」

 食べるのはやい、はやいよ波月!

 「隙ありっ」

 「あぁ!」

 矢吹コノヤロウ! 俺の煮物返せ!




 まあ、そんなこんなで完食し。

 「お腹いっぱいだぁ」

 ぽんぽんとお腹を叩くウミは、まだ幸せそうな顔をしてる。

 「ご馳走様でした」

 「喜んでいただけたようで、私達も嬉しいです」

 ニコニココンビの波月と三枝さん。

 「んー、夢みたいだったわぁ」

 「ひっぱたいてやろうか?」

 「やり返してあげるわよ」

 変わらない矢吹。

 「では、お部屋に戻りましょうか」

 「はーい」

 「あの、明日の食事もココですか?」

 波月が立ち上がりながら聞く。

 「夕食でしたら、洋食の『アンショリー・ドゥ・アンディ』になります」

 「朝とお昼は?」

 なんとなく、俺も聞いてみた。

 「朝は私がお届けにあがります。サンドウィッチかパンの詰め合わせになると思います。昼食は、海辺にあるレストラン、『かりかぜ』になります」

 「ほー」

 うーん、今から楽しみだ。

 「昼食はなんで外なんですか?」

 矢吹が聞く。ってお前、歩くの速いな。

 「明日はパーティーの準備のために、レストランは全て休業になるのです」

 「パーティー?」

 エレベーターが来るのを待ちながら、ウミが聞く。……おー、きたきた。

 「ダンスパーティーです。このホテルの創立者主催なのですよ。衣装の貸し出しもやっていますから、ぜひご参加ください」

 「それは何時からですか?」

 ぼーっと、回数を数えて上る数字を見つめていると、波月がそう聞いていた。

 「確か、7時頃からのはずです」

 「食事とかもできるんですか?」

 扉がゆっくり開いた時に、開くボタンを押してくれている三枝さんに問う。

 「はい、でますよ。参加しないお客様には通常通りにご夕食を準備いたします」

 「参加届けは必要なんですか?」

 「私に一言言ってくだされば、その旨をシェフにお伝えします」

 「参加するもしないも、自由って事ですね」

 「その通りです」

 三枝さんが部屋の扉を開けて、ニッコリと答えた。本当に良く笑う人だなぁ。

 部屋に入って、備え付けの豪華な時計を見る。9時過ぎかぁ。結構のんびりしてたんだなぁ。

 「お風呂はどうなさいますか?」

 「露天風呂で!」

 即答する女性陣2人。あの、俺らに選択権はないんですか? 俺らって言うか、波月はノリノリだから、俺だけか……。

 「では、これをどうぞ」

 矢吹の掌に、金の小さな鍵を渡す。

 「バルコニーを出て、細い通路をずっと行ってください。そこに小さな小屋があります。そこがもう1つのお部屋のお客様も使える、露天風呂になっております。扉を開ける時は、この鍵を回しながら、押し開けてください。湯冷めしないよう、お気をつけくださいませ」

 「了解です!」

 「はーい」

 あくまで楽しそうな女性陣。三枝さんに負けないくらいの笑顔の波月も、露天風呂が楽しみなようですな。

 「あ、そうそう」

 思い出したかのように、白い手を打って三枝さんが笑顔で付け足す。

 「申し訳ありませんが、混浴しかないのです。それでもよろしいですか」

 「構いませーん」

 「せーん」

 まるで選手宣誓のように、矢吹とウミが答えてしまいます。あの、俺にこれっぽっちも選択権はないの?

 「あまり湯船につかりすぎて、のぼせないでくださいね」

 「大丈夫です!」

 「ですっ」

 「では、私はこれにて失礼いたします」

 「有難うございます!」

 「ございます!」

 ぺっこりと頭を下げる矢吹とウミ。ついに、俺の権利は消えうせたようです。というか、きっと最初っからそんなものなかったんだろうけど……。

 あれ、なぜだろう。悲しくなってきたよ?

 「よーしっ、早速行こうかウミちゃん!」

 「行きましょう、矢吹さん!」

 「あのー……」

 「タオルと石鹸とぉ」

 「シャンプーにリンスにぃ」

 「すみませーん……」

 「よぉし、準備OKかな?」

 「OKだともー」

 「それ、いい○もじゃない? じゃなくって……」

 「あれ、波月とそのオマケは行かないの?」

 「俺は一応行くよ」

 「おま……っ」

 お、オマケ……だと!?

 「ソラにぃも行こうよぅ」

 「あ、え、いや」

 腕引っ張らないで。行くにしても手ぶらじゃいけないでしょうが。

 「お、俺は遠慮しておくよ」

 「えー」

 ぷーっと頬を膨らませるウミが、フグに見えたのは秘密です。告げ口されたら、俺死ぬよ? 殺されるよ!?

 「何、私の裸見て鼻血でもでそう?」

 「でるわけねぇじゃん」

 「無理しなくていいのよ」

 うふふと笑って、自分なりにセクシーなポーズをとろうとする矢吹。ごめん、気色悪い。

 「俺は、その……いろいろとやりたい事があるから」

 「いろいろとねぇ」

 「やらしい事するんじゃないでしょうねぇ」

 ずずいと近づく、鬼娘達ウミとやぶき。やらしい事ってなんだよ。お前がやらしい事考えてるだけだろうが。

 「無理に連れて行かなくてもいいんじゃない? ソラは嫌がってるみたいだし」

 「そーいえば、学校のプールも入ろうとしないわよね」

 「なんで?」

 「な、なんでって……」

 言える訳がないじゃないか。

 「ほ、ほら。誰も部屋にいないのって物騒だろう?」

 「ローグちゃん達がいるじゃない」

 「頼りないけど」

 「鍵かかってるから大丈夫と思うよ?」

 さりげなくウミの毒舌が挟まって、首をかしげるのは矢吹と波月だけ。

 「ちょ、ちょっと食べ過ぎたみたいで、気持ち悪いからさ、きょ、今日は行かない」

 「『今日は』? じゃあ、明日は?」

 「あ、明日は……」

 ウミだけが諦めずにずいずい寄ってくる。

 「明日は一緒に入るよな、ソラ」

 「う、うん」

 「じゃあ、約束ね!」

 右手を取って、小指を絡ませる。

 「指きりげんまんウソ吐いたら針千本のーますっ。指きった!」

 これでもう、明日は入らねばならぬ。みんなと一緒に……。

 「約束だからね、ソラにぃ!」

 「おうさ」

 「じゃ、行ってくるわね」

 「行ってくるね、ソラ」

 「いってらっさ~い」

 手を振って、いつの間にかお風呂セットを持った波月と矢吹達を見送る。一息ついたら、俺も部屋のお風呂に入ろう。

 「ねぇ、ソラ様」

 久しぶりにローグ登場。ずっと傍には居たんだけどね。

 「ん?」

 「なぜ皆様と露天風呂とやらに行かなかったんですの?」

 「あー、諸事情により、だね」

 「諸事情ねぇ」

 ふあぁぁと、ジャウネが欠伸をする。夕飯を食べ損ねたから、少々不満げなようだけど。

 「お主には謎が多いな」

 「そうでもないよ」

 「隠したい事を無理矢理は聞きません。私達ようせい貴方達にんげんでは、干渉しあうような筋合いがありません」

 随分ときっぱり言い放つね。妖精って意外と毒舌多め?

 「俺がお風呂に入っている間は、悪いけど気持ち悪いの我慢してもらえる?」

 「髪の毛の1本や2本あれば、大丈夫じゃろうな」

 1本や2本て……。髪はかなり大切なものなんだぞ。将来俺がハゲたらどうしてくれる!

 「私達の事は気になさらないでいいですわ」

 「有難う、ローグ。じゃ、お言葉に甘えて……」

 旅行用の大きなカバンから、お風呂のセットを取り出し、洗面台まで行って、部屋に漂う揃いかけの妖精達に一言。

 「覗くなよ」

 「誰が覗くか!」

 「の、覗いたりしませんですの!」

 「興味ねぇなぁ」

 「覗いたりしませんわ」

 「……」

 冗談なのに、本気で返す律儀な虹の妖精様。可愛いというか、なんとなく癒されるよ……。

今回の話を読み返して思ったこと。


季節感がないぞー、アッハハ~!


どうしようもないのですが、作者の私の更新速度が遅すぎるだけの話だったりするんですよね、これが。


来年までには長編に持っていくため(持っていきたいため)、下弦 鴉は頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ