44、信じたくない現実もあるはず
まえがきで、ごちゃごちゃ言うつもりはございません。あとがきにて、さんざん謝らせていただきます……。
今更ながらに思う。三枝さんに案内恃めば良かったんじゃん。本当に今更だけど。
「そういえばソラにぃ。さっきから何見てるの?」
「もらったパンフレット」
「どれどれぇ」
エレベーターのただでさえ狭い空間の中で、ウミが横から覗き込む。俺らと同じ事を思う人が多いのか、やけに込んでいるために狭い。荷物とかもあるから、余計に狭い。
「お、プールもあるんだ」
「温泉もあるよ」
「露天風呂だけじゃなくって?」
「そうそう。確か……ここだ」
織り込まれたパンフレットを捲って、目的の場所を見つけて指をさす。1階フロアの半分くらいがそれらしい。男湯、女湯、混浴もあるみたい。
「ココの外にも露天風呂あるんだよ」
「ココにもって事は、他にもあるの?」
「屋上と、俺らの部屋にも小さいけどあるはずだよ」
「へぇ。すっごいね」
なんて話してたら、2階に着いた。1階まで下りない理由は、めぼしい物がなかったから。2階ならお土産屋さんとかいろいろあるらしいので、ここを探検です。
「さぁて、何見る?」
「適当にブラブラでいいんじゃないか?」
「それもそうね」
有澄家は会話に入れていただけませんか。そうですか。
「お土産、何買って行こうかなぁ」
「まだ1日目すら終わってないのに?」
「あー、言われてみればそうね。ここまで来るのに肩がこっちゃって」
また伸びをする矢吹。苦笑いするのは波月。
「ソラにぃ! これ美味しそう!」
腕を引っ張るのはウミ。いい加減、放してはくれないのかな?
「お、可愛いね」
ウミが見つけたのはお饅頭。可愛い何かのキャラクターが焼き付けられてて可愛い。その隣に、同じようなキャラクターの形をしたサブレーもある。
「わぁ、これもいいなぁ」
ニコニコあっちへこっちへ。矢吹も波月を引っ張って、俺らと同じお店を見ている。あぁ、王子様が人身売買のバイヤーに捕まってしまわれたようだ。
「このホテルのマスコットか何かかな?」
「んー、そうかも」
パンフレットの表紙の左上と、裏表紙の真ん中に堂々と描かれてた気がするぞ。
「有澄、お土産があるのってここだけ?」
「あとは1階に簡単なお店があるだけだね」
ちなみに、そこはもう覗いてきました。女子陣の力に敵わなかったんです。三枝さんも苦笑いしてたし。
「さ、次行きましょう!」
「ごーごー!」
楽しそうだね。でもさ、いい加減に本当に放して。引きずられるのは嫌だ。兄として嫌だよ!
「……女子って、すごい」
波月のそんな呟きが聞こえた。思わず頷いてしまったのはご内密に。
次は高そうな物が売っているお店だった。高そうなワイングラスとか、高そうな食器セットとか、高そうなガラス細工とか。あれ、全てにおいて「高そうな」が付いていた気が……。気にしたら負けだと思っておこう。
「綺麗……」
「わぁ……わぁ……」
ガラス細工に負けんばかりに、目をキラキラさせるのはやっぱり女性陣。町のお祭りで見るような、手ごろな値段で買えるガラス細工もあれば、20万以上もする大きな物もあった。全部がガラスでできているなんて思えない。それくらいに精密に、美しく作られている。
「うーん、1つほしいなぁ」
ウミが唇を少しかんで悩んでいる。兄が助けられる値段なら買ってあげるよ。
「どれ?」
「ん、これ」
「綺麗だね」
矢吹から解放された波月と一緒に、ウミが指差したのはなんとも可愛い天使のガラス細工。小さくもなければ大きすぎるわけでもなく、淡い色でグラデーションされた翼は羽ばたきそうだ。胸の辺りで手を合わせて、ガラスでつけられた鈴を握っている。顔までは作られていないけれど、丸い顔が愛想良く笑っているように思える。裾がひらひら広がるガラスの服を着せられ、風に吹かれている所を固められたみたいだった。
そして値段。1500円。
もう一度見る。値段、1500円。
念のために、もう一度確かめる。15000円。
・・・。
え、待った待った! 今、0が増えた! 絶対増えたよね!?
そうして、現実を受け止める。
「1500円かぁ」
少々、厳しい。旅費と宿泊代は別だけど。これからの生活的に、少しだけ厳しい。
「きっぱり諦めるかなぁ」
名残惜しそうに、ウミがその場を離れて別の物を見ていた矢吹を驚かす。明らかにオーバーリアクションで驚いたあの小娘は、手に持っていたコップを落としかけていた。
「辛い?」
「え?」
いつも不意に聞く王子様、もとい波月。びっくりして、その天使の隣のイルカを数匹倒してしまった。店員さんの鋭い目が、俺を射抜く。こ、怖い。けど、壊れてはいないようで、財布が悲鳴を上げる事はなさそうです。
「いや、バイトをこっそりやってたとしても、1500円って辛いんじゃないかなぁって」
「波月って、ぐっさり的を射るよね」
「勘が良いって言って欲しいな」
「勘が良いですなぁ」
「そうじゃろう」
そんなノリで返すとは思わなかった。というか、ノってくれるとは思わなかったアルヨ!
「俺が出そうか?」
「え、いやいやいやいやいやいやいや!」
両手をぶんぶん振ったら、またさっきのイルカを倒す。落ちそうになったそれをキャッチする俺を、さらに冷たい目で店員さんは睨みつける。大丈夫です、壊したりしませんから。
「そんな、波月に悪いよ」
「俺は……ほら、家柄が家柄だし」
汐見と違ったお金持ちというか、うん……。
「1500円なら、まだお土産も買えるからいいよ」
「いや、借りは作らない主義なんで」
「借りだと思ってくれなくていいよ」
「いやいや、お金は人を壊すものであるからにして。その、ごっちゃりごちゃりと、うーん……」
「大丈夫だよ、ソラ。俺はソラを嫌いになったりしないよ」
爽やかスマァァァァァァァイル! ヤベッ、今なら死ねる! 死にたくないけど!!
「だけど、悪いからいいよ。波月は波月の買いたい物を買って」
「ソラの為に、俺はこれを買いたいんだ」
「でも、それだと悪いから。俺、波月には何もしてあげれないし」
「何もしなくったっていいさ。隣で笑っていてくれれば、俺はそれでいい」
何、愛の告白ですか? そうなんですか、そうなんですか、そうなんですか!?
動けなくなった俺を真っ直ぐに見つめる波月。鋭い光を宿した漆黒の瞳から、目が離せない。心の奥底まで見られているようで、今まで懸命に隠してきた事さえも覗かれているようで、怖い。
「ごめん、波月。俺は俺の友達を大切にしたいから」
だから、お金は払わせない。だからどうか、その澄んだ瞳でこれ以上俺の心を覗かないで欲しい。
「分かった。そこまでソラが言うなら無理強いはしないよ」
「ありがとー」
ニッコリ笑えば、波月も笑い返す。そして、目線をはずして天使とにらめっこ。
「……ないし、いいかな」
「ん?」
「え、俺何か言った?」
「いや、分かんない」
困ったように笑う、そんな波月もかわい……カッコいいよ!
天使とにらめっこの末、羽の色が綺麗でウミが好きな色のピンクの天使を手にとって、ポケットの薄い財布に触れた。
「ソラ、買うの?」
「家に着いたら、こっそりプレゼントしようかなって。贅沢させてあげられないから、これぐらいはしてあげたいんだ」
「そっか」
今度は天使のような笑みで、波月が笑顔で返す。この笑顔があれば、地獄だっていける気がする。行きたくないけど!
ウミが背を向けているのを確認して、お会計を済ませて波月の元に戻ると、矢吹とウミは別の店へと意気揚々と歩き出しているところだった。女子とは……本当に恐ろしい生き物である。
「忘れられてるみたいだな」
「ずばっと言っちゃう波月って、意外と腹黒だよね」
「ん? なにか?」
「いいえ! なんでもごぜぇませんだ!」
「苦しゅうないぞよ」
どこの大名? そしてちょっとデジャブなネタなんだけど。
「あ、馬鹿澄と波月忘れてきた」
追いつくと、小娘がそういうのが聞こえた。馬鹿澄、だと……?
「俺は有澄だから、有澄ソラだから!」
「! なんだ、来てたんじゃない」
「いや、訂正しようとか思わないのか?」
「何をよ」
「馬鹿澄って」
「事実じゃないの」
「事実は事実でも、ウミにも被害が及ぶだろう!?」
「何言ってるの? ウミちゃんはウミちゃん。アンタは馬鹿澄」
「差別だ!」
「いいえ、分別です」
「ぶ、分別って……」
隣で波月が笑いを堪えながら、矢吹の言った事を繰り返してやがる。なんだ、そんなに人の不幸が面白いか、腹黒王子よ!
「お前なんて誘わなきゃ良かった!」
「誘ってくれって頼んだ覚えはないわ!」
「ああいえばこういう。お前は姑か!」
「私が姑だったらアンタは何? 召使か何か?」
「んだとぅ!?」
「何よ、やる気!?」
「まぁまぁ、落ち着いてよ」
「ほ、他の人が見てるよ」
「他人なんて関係ねぇ! 俺ぁ、この小娘をこらしめなきゃならねぇんだ!」
「へぇ、良く言うじゃない! やれるもんならやってみなさいよ!」
バチバチと廊下の真ん中で火花が散り、繰り広げられるのは目も当てられない口喧嘩。
喧嘩するほど仲がいい? 口喧嘩するほど仲悪いけれど何か!?
あわあわとする王子とウミを助けたのは、予想外の人物だったりする。
「あだっ」
「いたっ」
「道の真ん中で喧嘩はするものではありませんよ?」
「さ、三枝さん」
俺と矢吹に鉄拳を喰らわせたのは、三枝さん。「お客様に申し訳ございませんが」と、頭を下げながら付け加える。うん、結構痛かった。
「お食事の時間なのに見当たらないので探してみれば、聞き覚えのある声がしましたもので」
ニッコリ。
「口喧嘩のおかげで見つけられました。今回は無罪放免という事に致しましょう」
ニッコリと、怖い事を言う。有罪になってたら、俺らはどうなっていたんだろう……。
「さあ、ご案内いたします。ついて来て下さい」
「はーい」
声を揃える俺らに、また三枝さんは優しく笑いかけた。
すみませんでした!
はい、いきなり謝らせていただきました。あぁ、むず痒いこの気持ち。腹立たしいとはこの事か。
っと、すみません。自分の世界に入ってしまう前に、すみません。
書き溜めていくうちに、『あ、いいネタ思いついたかも♪』なんてひらめいてしまい、ついでにテスト勉強をはさみながらもつらつらと新作を執筆。
そして、今に至って自分は何をしでかしているのだろうか。あは、滅べばいいのに(
簡単に言いますと、勉強最中、あきて『アルカンシエル』執筆。新作ひらめきそちらを執筆。不器用なのに、2つも小説かけると思ったか!
すみませんとしかいえません、はい。。
そして更新していたと思っていた『アルカンシエル』最終更新日みてびっくり。
あっれ!? 11月!?
今何月だよって話ですよね。12月ですよ、しかもほぼ後半。12月はじめに更新するはずだったよね。しかも新年までもうそんなにないのに、来年はシリアス長編行くんじゃなかったのか、自分! ふざけるなぁぁぁ!
はぁ……はぁ……。
それだけなんです、なんか本編並みに長くて申し訳ないです。
と、言うことで、ココで宣言いたします。
週2回は更新しよう、ていうかしろよ自分!
やぶったらあれですね、切腹?(おい
ではでは、長々と更新もせず、投稿予定もない新作かいててすみません。『アルカンシエル』に力入れて、頑張っていきます!