43、旅行ってのは、どこだってテンションが上がるもの
「おぉ……」
「すっごぉい」
「夢みたい」
「これ、ホテル?」
「ホテルですよ」
いつもニッコリ三枝さん。うん、ホテルって事は分かる。分かるんだけど、汐見の家並みにすごいよね。ワンダフル、ビューティフル、ベルギーワッフル! あれ、またなんかデジャヴなミスした気がする……。気のせいですよね、うんうん。
「お部屋へご案内いたします、ついてきてください」
「はーい♪」
楽しそうな女性陣。まあ、いいんだけれど、矢吹のスキップは不気味だ。
「なぁにボーっとしてんのよ、有澄に波月。おいて行くよぉ」
「あ、ありありさぁ…」
何その笑顔。何そのルンルンスキップ。何でそんな可愛い声で俺らなんて呼ぶんだよ。
「まあ、行こうか」
「そだね、波月」
珍しくハイテンションで、女の子らしい矢吹に、違和感がありすぎる。というか、怖い。怖い通り越して恐ろしいよ。
「では、私はこれにて失礼いたします」
「はい」
「お食事の時間になりましたら、お迎えに上がりますので、7時にはお部屋にいるようお願いいたします」
「はーい」
「それでは、3日間、よい1日をお過ごしくださいませ」
「はいはーい」
そう言って、三枝さんが出て行った瞬間。
「ひゃっほー! ふかふかだ、ふっかふかだよソラにぃ!」
「良かったね、ウミ。でも、あんまりベッドの上で跳ねちゃいけないよ」
「すごいよ、景色良すぎ! ねね、有澄、本当にすごいよ!」
「そりゃあ、一番いい部屋らしいからね」
「お風呂も広いよ、ソラ。みんなでは入れそうなくらいだ」
「露天風呂もあるらしいよ、夜行ってみる?」
「行く!」
食らいついたのは、波月だけじゃなく、ウミも矢吹もだ。妖精達も興味があるみたいだし。
「ねね、ソラにぃ」
「ん?」
「来れて良かったね」
「だねぇ」
寝室からテケテケと出てきたウミが、俺が腰掛けてるソファの隣に座って、腕を抱いて微笑む。うむ、幸せです。あ、でもあの人に殺されそうだなぁ、この光景……。
とりあえず、簡単な部屋の間取りを紹介します。はしゃいでる矢吹がうるさいのはご容赦くださいませ。
俺らが3日間過ごすこの部屋は、ホテルの最上階。最上階にはココともう一つの部屋しかないそうで、広いのは当たり前。普通の平屋より広いかも? で、そんなココだから、迷う事はなさそうだ。ココまで来るのは大変だけど……。
っと、そんな事より部屋の紹介をしないとね。部屋に入ってすぐは、広めの廊下。右側に全身が映る鏡、少し進んだ左側に、洗面所。異様に大きい鏡に大理石でできた洗面台、生まれてはじめてみたよ。で、波月がはしゃぐお風呂場は、そこの右側。泡風呂にもなるらしい。でも、あまりにも広いから、逆に緊張しそうだ。そこの反対側が、小奇麗なお手洗いになっているようです。
さらに進むとリビングに出て、家? って聞きたくなるような光景が広がる。ホテルの最上階だけど。馬鹿でかいテレビは地デジ対応。DVDも見れるしゲームもできる。しかも無料で。これをテイクアウトはなしですか? なしですよね、すみません……。正面に広がる、前面鏡張りの窓の外は、お城のようなバルコニーが。そこに出ると、海が良く見える。外でお茶できるように、テーブルとイスもちゃんとある。さすがというか、すごいよね。感心すらしちゃいますよね。
「有澄、ねぇ有澄」
「んだよ」
「夕飯まで、まだ時間あるよね」
時計を見る。まだ4時過ぎ。全然よゆーで時間あるじゃん。
「いってらっしゃい」
「探検したいんだけど……って、先に許可出さないでよ!」
「え、なんで」
「もっとこう、楽しそうにしたら?」
「え、楽しそうだけど?」
「私達じゃなくって、アンタよアンタ!」
「え、俺?」
「そんな仏頂面してないでさ、はしゃごうとか思わないの?」
「んー、思うよ。というか、はしゃぎたいんだけど、うん」
「何よ」
矢吹の眉が、不安げによる。心配はさせたくない。
「よし、探検しようか!」
「私も行く!」
ウミが元気よく挙手する。だから、修学旅行じゃないってば。
「俺も行くよ」
波月までもが挙手をする。でも可愛いから、許せちゃいますねぇ。あ、もちろん妹のウミだって可愛いよ!
「じゃあ、みんなでいこっか」
「さんせー!」
テンションが下がることを知らないようです。というか、下がらないよね。下げられないよね、こんな所じゃねぇ。
「ささ、ソラにぃ! 早くいこーよ!」
「わ、分かったから! 分かったから引っ張らないで!」
ウミの腕力は、俺をも超える。……え、もう十分承知? ですよねぇ……。
「ったく、どこでも有澄はトロいんだから!」
「んだとぅ!」
「何よ、事実でしょ!」
「まあまあ、旅行まで来て喧嘩を止める気はないよ」
「ご、ごめん……」
こ、この人、人を殺る目をしていたよっ……!
「さあ、夕飯前に探検を済ませちゃおう」
「ありありさ!」
「ワクワクするわぁ♪」
「何があるかなぁ♪」
みんなが楽しそうで良かった。俺も楽しまなくっちゃ、これは損ですよね!
おはばんにちわ。寒くなってきて、そろそろと冬眠時な下弦です。(ぇ
本当に最近寒くなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?
鴉だからって外ばっかり出て行くわけがありません。こたつにみかん、パソコンにストーブ、お鍋はおでん。そんな季節になってきました。お体にはお気をつけくださいませ。
さてさて、環境に悪い事ばっかりやり続けていいのか? とは思いつつ、寒さに弱い私をどうかお許しください……。
まあ、今回の後書きはこれだけなんですがね。
冷たい目線は送らないでください、凍え死にます。ごめんなさい、申し訳ない。
ではでは、長々と失礼いたしました。
地球温暖化を気にしながらも、暖かい部屋より。