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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第一章 妖精との出会い
4/80

4、女の子って怖い

 なんやかんやで一日経っちゃいました。ウミとローグの冷戦は、いまだ続いております……。

 「ソラにぃ、醤油」

 「……はい」

 「ソラ様、ソース」

 「……はい」

 「玉子焼きにソースって、あんたどんな味覚の持ち主!?」

 「いいでしょう!? 自分好みにして、何が悪いんですの!?」

 「悪いに決まってるじゃない! 朝から胸糞悪いもの見せないで!!」

 「貴方の顔を見なくてはならない、私の気持ちにもなってくれません!?」

 「何よ!! 私の顔が汚いって言うの!?」

 「別にそこまで言ってないですの! あとの事は勝手に貴方が考えた事ですわ!」

 「……あ、あの、二人―――」

 「ソラにぃは黙ってて!」

 「ソラ様は黙っていらして!」

 「……あい」

 てな感じで、もう、冷戦どころじゃない気がしています。これが平々凡々な平日の朝の光景であっていいのでしょうか?

 「ソラにぃ、おかわり」

 「ソラ様、おかわりですの」

 「……あい」

 「「返事は、『はい』!!」」

 見事なハモりで、空になったお椀を俺に突き出す。

 「……はい」

 こ、怖いよぉ。怖いよぉ、この2人。仲が悪いにも程があるっていうか、相性悪過ぎっていうか。……助けてぇ、波月ぃ。



                    ******



 「どうした、ソラ。朝からやつれて」

 「……女の子って、怖いね」

 「?」

 波月は分かってないみたいだけど、俺にはよく分かったよ……。

 「よく分からないけど、頑張れよ、ソラ」

 しゅ、瞬殺スマイル! 再び、朝から有難うございます!

 「何か、元気出てきたかも」

 「ポ○イみたい」

 「……マニアックじゃね?」

 「そうか? 俺、アレ結構好きだった。子供の頃からよく見てた」

 「へぇ〜」

 「今度、ソラも見てみたら?」

 「じゃあ、レンタルショップにでも逝くよ」

 「……気をつけてね」

 苦笑いの波月に、癒される。いいねぇ、いつ見ても綺麗だよ……笑顔。

 ……はっ! この不快なまでの背後の殺気! もしや、奴だな!

 「隙ありぃーーー!」

 「無駄だっ!」

 カバンを振るスイングで、返り討ち!

 モチ、攻撃しかけてきたのは矢吹です。死ね、このクソアマ!!

 「今、死ね、クソアマ! って、思ったでしょ?」

 「思いましたけど?」

 「あんたが死ねぇえ!」

 至近距離で跳び蹴りをくらった。ちょっと待て、それってありかよ!

 「矢吹は元気だねぇ、朝から」

 「一応これでも柔道部だから」

 「じゅ、柔道部のくせに、帰宅部の俺に、こんな弱い者いじめ的な事していいのかよ」

 「いいのよ、有澄だから」

 「また屁理屈!」

 「前にも言ったでしょ? これは―――」

 「ソラ様ーーーーーーー! 大丈夫ですの!?」

 まさかの眼球にタックル!

 「い゛っでぇーーーー!!」

 は、初めてだ! 眼球に直に突っ込んでくる人、初めてだよ!

 「そ、そんなに痛みますの? 私が介抱して差し上げますわ!」

 いや、とどめの一発入れたの、君だよ? それに気付いてますか?

 「……おはよう、ローグ」

 「あら、おはようございます、波月様」

 ……アレ? 介抱してくれるんじゃなかったの。

 「誰、この子?」

 「む……!」

 アレ? もしかして矢吹にも―――

 「ローグが、見えてる?」

 「見えちゃいけないの?」

 「いけない訳は、ないけど」

 「ならいいじゃない! ……それにしても」

 急に顔がほころぶ。……ん? これは、ヤバいかもしれないな。

 「ローグ、こっちに―――」

 「カワユーーーーーーイッ!!」

 「うへいっ!?」

 奇声を発するローグを、頬擦りしまくる矢吹。

 忘れてたというか、今更思い出した。こいつ、根っからの可愛い物好きだったんだ。

 「何これ何これ何これ! 可愛くない!? メッサ可愛くない可愛すぎない!」

 「な、なな、なんですの!?」

 「!」

 驚いてローグを遠目から見る矢吹。……何に驚いたんだ??

 「お嬢様口調萌えぇ!」

 「ひえぇーーー!」

 「可愛い! 真面目にマジ可愛い! ていうか可愛い!」

 ……何回可愛いって言ったら気がすむんだろう、この人。

 「ヤバいでしょ尋常じゃないでしょありえないでしょ!」

 お前の反応の方がありえないから安心しろ、矢吹。

 「何か言った? 有澄」

 「いえ何も!」

 こ、心を読んだ!? ま、まさか、そんな事できる訳なんて……!

 わ、笑ってやがる! こいつ、ローグを抱きしめながら笑ってやがる!! もしや、これも計算のうちか!?

 「まあ、ここで止まってても遅刻しかできないし、放課後にまた会おう」

 「えぇ〜。この子も持ってく!!」

 ローグは荷物ですか。

 「ローグはどうしたい?」

 「そ、ソラ様といたいですぅ」

 ヘトヘトのローグ。可愛いドレスもシワシワになってしまっている。……お疲れ様です。

 「だってさ。放してやりなよ、矢吹」

 「ちぇー」

 フラフラしながら俺の肩に止まったローグは、疲れきってへたり込んだ。

 「また会おうね、ローグちゃん♪」

 「も、もう会いたくないですわ……」

 そんな声が聞こえた気がした。……やっぱり女って、ある意味恐ろしい。



                    ******



 てな訳で、もう放課後。細かい事情とかは気にしないでください。というか、気にしちゃダメ!

 「ただいま、ローグちゃん!」

 「た、助けてください! ソラ様!」

 別のクラスの矢吹が、当然のように入り込んでくる。満面の笑顔で。

 見とれる男子生徒諸君よ、あんな暴力女のどこがいいんだ。理由を簡潔に20文字程度で述べて欲しいよ。

 「あれ。ねぇ、有澄。ローグちゃんは?」

 「ローグ? ローグなら―――フゴッ!!」

 突然波月に口を塞がれて、続きが言えなかった。……い、息が……。

 「気分が優れないからって、先にソラんちに帰ったよ」

 「えぇ〜、そうなの。つまんなぁい……」

 ギブだよ、波月! この手をどけて!! ち、窒息死するぅ……。

 「あ、ゴメンねソラ。忘れてた」

 わ、忘れてたって、かなりショックなんだけど……。

 「そうしょげないで、ソラ。今度また、百円マックおごるからさ」

 さ、爽やかスマァイル! もうやめて、その笑顔で俺は死ねるからマジやめて! あ、いや、やっぱやめないでくださいお願いします!

 ひゃ、百円マックでなくても、君の笑顔で十分だよ、波月。

 「どした、ソラ」

 「アホはほっといて」

 アホってどんな言われようですか。

 「で、あの子は何? ていうか、何で他の生徒には見えないの?」

 「それは俺らにもよく分からない。だけど、はぐれた仲間を探して欲しいって、頼まれたんだ」

 「……で、それを受けたのね、この馬鹿が」

 軽く頭をはたかれる。何をする、この暴力女め!

 「何で叩く! 何で俺だと分かる!」

 「そりゃあ、真面目できちんとした波月がそんな事を信じると思うの? ていうか、波月がYESって答える訳がない、そんな事ありえない!」

 「……それってある意味、心が冷たい奴だって事?」

 ひ、冷ややかな笑みが怖いよ、波月……。

 「あ、えっとぉ、そういう事じゃないんだけど……」

 「じゃあ、どういう訳?」

 さ、さらに冷ややか! 顔がハンニャみたいになってるよ!!

 どうしよう。波月のブラックスイッチ押しちゃった……。あ、ちなみに、ブラックスイッチって言うのは、この波月しかないからご安心を。……安心できないけど。

 と、とりあえず、ブラックスイッチて言うのは、ともかく黒い事。いつもはイケメンなH君も、怒れば鬼になるって言う事です。で、それが一番怖いのがこの人、波月です。だって実家が、組長だから。……って、意味分からないね。でも、ともかく怖い人なのです。

 「……それは、ねぇ、有澄」

 「え!? 何で俺に振るの!?」

 「だって、ねぇ?」

 「ねぇって、ねぇ?」

 「いいじゃない! ここは男らしく、ビシッと言いなさい!!」

 「何をだよ!」

 「……」

 「何故に黙る!」

 「……ごめんなさい、波月様。……ホラ、有澄も謝って」

 「何で俺も―――!」

 「ゴメン!」

 机と頭がゴツッンこ! 今綺麗なお星様が見えたよ!

 「い゛っでぇぇぇぇ!!」

 無理矢理頭を下げられたせいで、机と正面衝突事故だよ。俺のおでこは重傷なのに、机は平気な面してますよ。なんでこんな目に俺が遭わないといけないんだよ。机も何か言ったらどうなんだよ。口ないけど。

 「アハハッ! やっぱ面白いなぁ、ソラは」

 瞬殺スマイル! というか、見事なまでに美しい笑顔でごぜぇますだ!

 「よし、ソラに免じて許してあげよう。で、何の話してたんだっけ?」

 「「忘れたのかよ!」」

 ゲッ! 昨日みたいに、また矢吹となんかとハモっちゃった! ショック……。

 「何落ち込んでんのよ」

 「別に」

 「何かあるでしょ? 言いなさいよ!」

 「特にありませんけど?」

 「あんたはエリ○様?」

 「違いますけど」

 「アハハ! やっぱりソラってサイコーだよ!」

 腹を抱えて笑い転げる波月と、プンスカプンスカ怒ってる矢吹。何なんだ、この異色の共演は。

 てか、今回はこれで終わっちゃっていいの!?

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