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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第三章 秘められしモノ
34/80

34、お化け屋敷とお嬢様

よ、ようやく書き溜めていた長編にたどり着いた……!

が、しかし。書き溜めていたといっても、2,3話……。手直しと誤字脱字の確認して、話がそれていないか心配しながら投稿……。


おぉ、なぜだ。思考がネガティブになっていくっ……。


……っと、こんな無駄な事に前書き使っちゃいけませんね。失礼いたしました。

それでは、あまり緊張感のない本編へどうぞ!


 「じゃ、またね」

 「またな、ソラ」

 「またー」

 手を振って、波月達と別れる。その時に、波月の頭に乗っていたウネは俺の頭に移り、ローグとジャウネも、俺の周りをふよふよと飛んだ。

 「さぁて、今日の夕食は何にしようかなぁ」

 「どうせチャーハンじゃろう」

 「でしょうねぇ……」

 「またなのかよ……」

 妖精達が打ち合わせでもしたかのように、3人揃ってため息をつく。チャーハンに何の罪もないのに、その隠し切れない落胆の色はなんだ!

 「失礼な! この間はオムレツ作ってただろう!」

 この3人プラス1人が、チャーハンを作ろうとした俺をものすごーく冷たい目で見てきたので、仕方なく献立を変更したんだ。フライパンと卵を用意しただけで、人ってあそこまで冷たい目ができるものなのかと初めて知ったよ。

 「アレはオムレツというのか」

 「ソラ様が作るものといわれると、どうしてもチャーハンしかでなくって……」

 「だよなぁ」

 「悪かったな!」

 意外と俺は器用なんですぅ! やらないだけでいろいろできる事もあるんですぅ!

 「あれ? 有澄じゃない。何1人でしゃべってるの?」

 信号が赤で立ち止まっている時、後ろから話しかけられた。振り返ると見覚えのない女性が俺を睨みつけていた。お団子にした綺麗な黒髪。V字に開いた襟口に大きなフリルがついた純白のシャツ。淡いピンクのスカートが、腰のくびれを強調させる。そこから流れ出るようにスラッと長い足は、違和感なく綺麗な赤のハイヒールを履きこなしている。

 すんません。俺、こんな綺麗な人に見覚えないんですけど。

 「……ドチラサマデ?」

 「まあ、同級生の顔すら忘れたって言うの?」

 え、マジで。同級生なのこの人!? どっからどう見ても年上だと思った。先生かなと思った!

 「学級日誌、ちゃんと書いてよね」

 何に不貞腐れたのか、頬を膨らませてその顔に似合わない言葉を吐き捨てた。そしてその言葉には聞き覚えがありまくりでした。

 「あぁー、汐見か」

 「声かけた時に分かりなさいよ」

 腕組みして仁王立ちする。その姿に妹の怒っている時の姿を見た。女の子って、みんなこうなのかな……。

 「いやだって、私服で会うの初めてだし……」

 「だからって顔で分かるでしょう。全く」

 今にも唾を吐き捨てて、今より鋭い瞳で睨まれそうで怖いほどの剣幕で怒られる。俺はそんなに酷い事してないと思うんだけど……。

 「えっとぉ……。謝るべきかな?」

 小声で右肩に乗っているローグに聞いてみる。

 「相手の方は気分を害しているようなので、何か褒めて差し上げたらいいのではないですの?」

 「なるほろ」

 「何? また独り言?」

 あれ? そういえば、汐見には見えないんだ……。俺の右肩のローグも、左肩で欠伸をしているジャウネも、頭の上でうとうとしているウネも。

 「なんでもないよ。そう言う汐見は買い物?」

 「……いえ、ちょっとね」

 汐見は視線をそらすと、俺に背を向ける。少し解れた髪が、風に吹かれて弱々しくなびいた。

 あ、信号青になってら。

 「じゃ、俺は帰るか、ら!?」

 手を振って去ろうとしたら、振ってた腕を思いっきり掴まれました。

 「はあ? こんな美人を置いて1人帰る気!?」

 「え、え!? ちょ、ちょっと……えぇぇぇ!?」



                   ****



 「かれこれあったからして、こーゆー訳だからさ、」

 「どういう訳でよ!」

 「はぅっ」

 今にも噛みつかん勢いでウミが迫る。怖いです。ものすごく怖いっ!

 「だって、強引にゆうか……連れて来られたら、ねぇ……」

 「ソラにぃそれでも男なの!?」

 「これでも男だよっ」

 「女々しい兄をもってちょっと、ねぇ……」

 視線をそらして、ため息を軽くつく。なんだかはっきり言われるよりも、心が痛いんだけど……。

 「で、どうすんのよ?」

 「どうするって言ったって……」

 目の前に座って、ウミがいれてくれたお茶を啜る汐見。今の問題は彼女だ。

 なんでも、一度帰宅してみたら、お手伝いさんが1人もいなかったらしい。俺からしたら当たり前なんだけど、汐見からしたらかなりおかしい事なんだそうです。買出しにでも行ったのだろうと思い、1人で着替え、特にする事もなく、部屋で雑誌を読みながらうつろうつろしていた時、物音が聞えたそうな。誰もいないはずの屋敷に、足音がカツン、カツンと。それも、消えたと思ったら、急に近くから聞えてきたりしたようじゃ。そして、怖くて飛び出してきたそうな。

 なんて昔話っぽく語ってみたり……。

 ま、まあそれなりに理由あってだけど、偶然出会った俺の家じゃなくても良かったんじゃないかと思う。友達の家とか他にもあるだろうし、ねぇ?

 そして、ローグ達はいつも通りに好き勝手にやってます。えぇそりゃもう、我関せず。無関係、他人事! 言葉にしなくてもはっきり分かるという哀しみ……。

 「ねぇ、有澄」

 「な、何か?」

 「おかわり」

 「え?」

 「だから、お茶のおかわりよ」

 そう言って、湯飲みを前にズイッとだす。ふんっと鼻を鳴らすと、手持ち無沙汰に前髪をもてあそび始めた。

 「あぁ、そゆ事」

 「おかわりって言われた時に分かりなさい。鈍いわね」

 「と、言う訳だから、ウミヨロシク」

 「……ったく、仕方ないわね」

 当のウミはムスッとした表情をすると、半ば奪うように、あ、いや、明らかに奪うように汐見の前から湯飲みを取り上げ、キッチンに向かった。

 「ったく、お客様にあの態度はいけないわね」

 いや、お客様がよくない態度を取るからだと思います。普通の人はね、土足で家に上がろうとしないよ? アメリカじゃないんだから。で、靴ぐらい自分で脱ごうね。学校と同じようにさ。ここにはね、手を叩いて合図しても、お手伝いさん、所謂メイドさんは来ないんだよ? そして、スリッパが汚いだとか、椅子のクッションが固いとか、湯飲みが小汚いとか、そういうのも傷付くからやめてくださいませ……。

 「で、何で帰らないのさ」

 「ちょっと、女の子にそうズケズケと物事を言うもんじゃないわよ」

 「え、あぁごめん……」

 か、会話しにくっ!

 「とりあえず、一晩で良いの。泊めてよ」

 「でもさ、こっちだって食費だとか光熱費だとかその他云々が……」

 「何、あのお化け屋敷に1人で帰れって言うの!?」

 「え、いや、そーゆー訳じゃ……」

 「じゃあ、どういう訳よ!」

 汐見が勢いよく立ち上がって、椅子が倒れる。長い前髪から覗く大きな瞳が、涙で少し潤んで見えた。

 「いつも、両親がいなくて当たり前だったけど、お手伝いさんはいつもいてくれたの! 突然いなくなったりなんか、しなかったのよ!? 1人・・は慣れてるけど、独りぼっち・・・・・は慣れてないのよ!」

 「……ごめんね、汐見。えっと、座ってくれる?」

 「……」

 こちらもムスッとした表情で、椅子を起こして、ため息をつきながら座る。テーブルに両肘をついて、両手で顔を覆った。彼女はもう一度ため息をつく。その時、ウネが俺の髪をぐいっと引っ張った。

 「いつつ! な、なんだよ」

 「こいつ、憑かれているぞ」

 上から降ってくる声は、やけに辛辣だ。

 「疲れてる? あぁ、だから幻聴が聞え」

 「違うわバカタレ!」

 「あぅっ」

 バシッと頭を叩かれた。い、意外と痛い……。

 「はい、おかわりです」

 「ありがと」

 ビリビリバチバチと火花を散らせる2人に苦笑いしながら、頭の上でくつろぎ始めたウネに聞く。

 「疲れてるんじゃないの?」

 「その疲れるではなく、悪しき者に憑かれているという事だ」

 「足着物?」

 「……どんなものだ、それは」

 「え、うーん……。足の、……着物?」

 「まんまではないか!」

 「だぅっ」

 再び叩かれた。うん、さっきの倍の威力で。手加減というものを知らないのかい、君達は!

 「悪しき者だ、悪に染まりし魔物」

 悪に染まりし魔物って、フツーの魔物とどう違うんだろう。俺の知ってる魔物と同じなのかな? 人に害を加えて、その人を不幸にさせたり、死に至らしめたりするのがそれだよね。それは、人の心の暗い部分、憎悪とか悪意とかに感化されてやってくるとか何とか……聞いたような聞いてないような気がするよ。そんな危ないものが、どうしてこんな不満のふの字もなさそうなお嬢様に?

 「そんなのが、どうして汐見に?」

 「知るか。連中に関わるとロクな事がない」

 我関せずですね、分かりたくありません。もっと積極的になろうよ。

 「でもさ、連中に憑かれちゃってる汐見にも、ロクな事がないよね?」

 「だろうな。このまま帰せば、やつらの餌食になるだろう」

 「え、餌食って……」

 「頭からパクッと喰われるじゃろうな」

 「それはいけないでしょうや!!」

 勢いあまって立ち上がると、四方八方から冷たい目線の鋭い矢が飛んでくる。

 「ちょ、何?」

 「ソラにぃ、ついにイカれた?」

 あぁ、そんなに冷たい目で見ないで。ちょ、読者さんも引かないでくれません!?

 「まあ、祓おうと思えば我らが祓えるがな」

 「ふーん、そうなら……」

 冷たい目線を送り続ける汐見の瞳は、まだどこか不安げに揺らいで頼りない。それならば、できる限りで救いの手を伸ばせばいいじゃないか。

 「な……。青年、変な気を起こすでないぞ」

 「えー、別に変じゃないよぉ」

 「……」

 爽やかぁに笑ったつもりなのに、ウネは顔の筋肉を引きつらせる。え、何? 今頃俺の魅力に……なんて事はないよね。大丈夫だよ、ウネ。自覚してるから読心術で俺の心詠んで、不満そうな顔しないでください。

 「よし、行こうよ!」

 「ど、どこによ」

 戸惑う汐見の手を取って、

 「もちろん、お化け屋敷しおみのいえさ!」

 「で、でも、ホントにお化けとかだったら……」

 「大丈夫! この俺に任せておけぇい!」

 「……ソラにぃだからこそ頼りないんだけど……」

 ん? ウミが何か言ったような……。気にしたら負けって事で、聞かなかった事にしよう。

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