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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第二章 穏やかに流れる日常
31/80

31、黒いあれには気をつけて。

 テストという、恐るべき敵との戦いを終え、平穏な日々を取り戻して約2週間。ちょくちょくと激しい戦いの結果が帰ってきたり、矢吹にポテトを盗み食いされたりしながらも、のんびりゆったり過ごしてました。いたって平和で、矢吹との喧嘩は除いて、争いごともなく、逆にヒマくらいな日々をのんびりゆったりと過ごしていた、そんなある日の事じゃった。

 「あの、ソラ様」

 「ん〜」

 リビングの隣、襖だけで区切られた和室で、扇風機にあたっていたローグが、少しうわずった声で俺を呼んだ。ちなみに俺はリビングで、麦茶を啜ってました。

 「あの、えっと……」

 「ん? どうかした?」

 「青年、庭掃除終わったぞ。水をくれ」

 「はいはい。お疲れ様でした」

 のっそりと立ち上がったついで、ローグの様子をうかがった。頭にポテッと何か乗った気がする。ウネかな?

 「みぃずぅをぉ〜」

 「ありありさー」

 うん、予想通りウネだった。

 「……あ、あの、ソラ様?」

 「ん〜?」

 一滴、おもちゃのコップに水を入れて、上にあげた。ウネがそれを受け取ったのを鏡で確認してから、また動き出す。

 「うむ、感謝する」

 「どういたしまして。で、さっきから何? ローグ」

 「ソラ様、あれが出て、あれですわ」

 「あれ? あれじゃあ分からないよ」

 「腹減ったぁ! ソラァ、飯〜」

 ローグのいる和室へ向かう途中に、ジャウネに行く手を阻まれてしまった。

 「その前、何か言う事は?」

 「ウミの部屋と廊下とトイレの掃除ちゃんとやったぜ。だから飯〜!」

 「はいはい。お疲れさん」

 「おにぎりおにぎり」ジャウネがうるさいから、またキッチンに引き返していく。ローグは後回しでも大丈夫だよね。

 「ソラ様ぁ」

 「ん〜?」

 今にも泣きそうな声でまたローグが呼ぶ。やっぱり後回しじゃダメ?

 「あれがあれでして、あれがあれですわ」

 「だから、あれって何?」

 小さめにおにぎりを作りつつ、眉をよせる。あれじゃ何も浮かばないよ。k

 「ローグがあれと呼ぶのはあれしかいないな」

 「そのあれって何さ。はい、ジャウネ。お待ちどー」

 「サンキュー」

 テーブルに置いた小皿に、できあがったおにぎりをのせると、それを抱えるようにして、ジャウネはかぶりついた。かぶりついたといっても、おにぎりが大きいからそう見えるだけだけどねぇ……。

 「あれはズバリ、あれであろう」

 「そうですの。あれはあれ以上でもあれ以下でもなく、あれですの」

 「……そのあれは俺には分からないんだけど」

 「うむうむ……。あれってあれだろ? あのあれだろ?」

 むしゃむしゃとおにぎりを食べながら、ジャウネが言った。その頬についた特大の米粒を取りつつ、思う。

 だから、あれって何なのさ。

 「キャーーー!」

 「づだっ!」

 ローグが悲鳴をあげて、俺に眼球にダイレクトアタックをくらわせた! いい加減にやめて! 視力が、俺の大切な目がぁぁぁ!

 「なんだよ、あれくらいで騒々しいなぁ」

 何があれくらい? というか、俺の心配はしてくれないの?

 「だって、だって飛ぶなんて卑怯ですの!」

 ローグ(きみたち)も飛べるでしょう。ていうか、頬をつねらないで、ローグ。痛いから、口に出して言ってないけど、痛いから!

 「あれが飛んだからといって、騒ぐ事じゃなかろう」

 そろそろ教えて、あれって一体何なんですか?

 「あの黒く輝くボディーが目の前にきても、怖くないんですの!?」

 黒く輝くボディー?

 「全っ然」

 「怖くなどないな」

 「うにょうにょ動く触角もですの!?」

 うにょうにょ動く触角?

 「もちろん」

 「あぁ、怖くない」

 「おかしいです、おかしいですの!」

 ローグはもう泣き出していた。本人は気づいてるかどうかは知らないけど、ぽろぽろと次から次へと涙が零れ落ちる。

 「どこが?」

 「何故だ?」

 黒く触角の気持ち悪い奴と言えば……。

 「あぁなんだ、ゴキちゃんか」

 席に座りつつ、残っていた麦茶を飲んで、一息つきながら呟いた。

 「あんな恐ろしい生物を『ちゃん』呼びしますの!?」

 「恐ろしくなかろう。なあ、青年」

 「うんうん」

 「どこが怖いんだか、逆に聞きたいよな、ソラ」

 「うんうん」

 「ソラ様もウネビガラブもジャウネもおかしいですの! あれが怖くないだなんて、どんな神経をお持ちですの!?」

 あまりに怖すぎて、感情の全てが怒りに変わっているようです。涙はとうに止まっていて、変わりに目と頬を真っ赤に染めながら憤りを露わにする。

 「どんな神経つったって……」

 「う〜む……」

 「ん〜。こんな神経だよ」

 「どんなですのよぉ〜」

 ローグがものすごい勢いでポカポカと頭を叩いてくる。眼球タックルより痛くないから安心だ。

 でもさぁ、怖くないものは怖くないんだもん。仕方ないよねぇ。

 「とりあえず、害虫は駆除しなくっちゃだね」

 「そうですの! 一刻も早く駆除しなくてはならないのですわ!」

 「……そんなに嫌い? ゴキちゃん」

 「えぇ嫌いですの! 大っ嫌いですの!」

 この世から虫は全て消えてしまえばいいんですの。なんて恐ろしい事を口走ってる。本当にやりかねなくて、そっちの方が怖いよ。

 「ゴキブリだけじゃなくって、虫は全部無理だもんなぁ」

 「この間はクモの巣に引っかかって泣いておったな」

 クモの巣に引っかかるのは確かに嫌だけど……。うっとうしいと思うけど、泣くほどではないかなぁ。

 「なんで虫なんてものが存在しますの!? ありえないですわ!」

 「何がどうありえないのかよく分かんないけど……。でも、虫って結構役立ってるんだよ」

 「ほう、それは少し興味深いな」

 「一応俺も聞きてぇなぁ」

 「あんな見た目も恐ろしいものが、どう役立つんですの?」

 「えぇっとねぇ……。思い出すから待っててぇ……」



                 〜かれこれ数分後〜



 「ごめん。やっぱわかんないやぁ」

 あははーと笑うと、3ひ……3人の妖精から冷たい目線が……。

 「……阿呆」

 「なんだよ、つまんねぇな」

 「……ソラ様……」

 ……なんかごめんなさい。全ての人に、ごめんなさい……。

 「とりあえず、ゴキちゃん退治だぁ」

 「そうですの! とっととあれを排除するんですの!」

 排除って……。まあ、気にしないでおこう。

 よっこらせ、と立ち上がり、ゴキちゃんがいる和室へ向かう。その時、右肩にローグ、左肩にはもうおにぎりを食べ終えたジャウネ、頭の上にはたぶんウネが座っていた。

 リビングから見て、正面にはお仏壇があって、右側には扇風機が涼しい風を送り出しながら回っており、窓から夏の日差しを浴びながら、それは懸命に働いている。和室の中央にある、今は使わない掘りごたつは、使ってくれる日を待つかのように、寂しく細い脚を見せていた。左側は、廊下と和室を襖で区切っているだけで、特に変わった事もなく。あえて言うなら、冬は隙間風が入ってきて寒いんだ……。

 「で、どこにいたの?」

 「窓のところに……」

 ローグが指差す方向に、虫の姿は見当たらない。

 「いないようだが?」

 「さっき飛んだからじゃねぇの?」

 「そうですの。私に向かって飛んできましたから……掘りごたつの方ですの」

 「ふむ」

 戦闘武器、新聞紙を忘れたな……。まあいいか。

 「さてさてゴキちゃま。出ておいでぇ」

 「ゴキちゃまってお主……」

 気にしたらダメだよ、ウネ。

 かがんで、掘りごたつを覗いてみる。いないっぽいなぁ……。

 ふいにガサガサと何かがこすれあうような音がして、リビングの扉が開かれた。

 「ただいま……ってソラにぃ。何やってるの?」

 「おかえりー。何ってあれだよ、ゴキちゃん探し」

 「え゛」

 ドサッとおそらく今日の夕飯に使われるであろう食材さん達を、テーブルの上に落として、ウミがぎこちなく振り向いた。

 「ソラにぃ。頼むから素手でゴキと戦わないで」

 「え、ダメ?」

 「ダメに決まってるでしょ!? 何考えてるの!?」

 やっぱりかぁ……。

 ってあれ? 読者さん読者さん。なんでひいてるんですか? なんで顔真っ青なんですか? 俺、何かしましたか?

 「ほらソラにぃ、新聞紙」

 「おぉ、サンクス」

 投げてよこされた、ゴキちゃん専用戦闘武器、新聞紙を装備! と、ちょっとカッコよく言ってみる。ダサいとかは言わないでください。

 「ちゃんと後始末までしてよね」

 「ありありさー」

 さってと、その前にさぁ。ゴキちゃんどこよ?


 カサカサカサ


 ん、このいかにもな効果音はっ……!


 カサ……カササカサカサカサ


 いるぞ、奴だ。奴がいるぞっ……!


 カサカサ……カササササ!


 「そこだぁぁぁぁぁ!!」

 バッシン! といい音をたてて、ゴキちゃん専用最強戦闘武器、新聞紙が振り下ろされたのは、リビングと和室の境目。

 ……ふ、手ごたえありだぜ。

 「やったのか?」

 「たまにはやれば出来るんだなぁ、ソラも」

 ちょ、たまにはとか酷くない?

 「それより早く後始末、後始末を!」

 「そうよ、無神経の馬鹿にぃ!」

 ちょっと!? なんで英雄的な存在の俺がそんな事言われないといけないの!? もっと兄貴を大切に、恩人を大切に扱いたまえよ……。




 「はーい。今日のご飯、できたよー」

 「ひゃっほーい! 腹減ったトコだったんだ!」

 誰よりも先にテーブルの席についたジャウネ君。居候してるというのに、遠慮しようとは思わないんだろうね、この子は。

 「……ホント、ジャウネはよく食うな」

 「ですわねぇ」

 お茶を啜る2ひk……2人の妖精を尻目に、ジャウネは嬉しそうな顔で笑っていた。

 「おぉ、今日は豪華にハンバーグですか!」

 「おくらで作ったハンバーグだけどね。ささ、冷めないうちに食べちゃおう」

 「そだね。じゃ、いっただっき―――」


 カサカサ……カサカサカサカサカサカサ


 む、この効果音と気配。もしや、また奴かっ……!


 「ひやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 ローグの叫び声と一緒に、平和な食卓が悲惨な食卓になったのは言うまでもなく……。


ネタがない、ネタが、ねt……。


どうも、お久しぶりに下弦でございまーす!(サ○エさん風に

更新がちまちまとしか進まなくて申し訳ございません。作者なりに努力はしているんですが、誤字脱字、意味不明な言葉が多すぎる……。そして、話が完成しても訂正で時間がかかるとか、作者として失格ですよね……。あぁ、泣きたい。


こんな情緒不安定な作者が更新してまいりますので、またピッタリと更新が止まってしまうかもしれませんが、どうか見捨てず、応援してくださると嬉しいです。


それでは、長文失礼致しました……バタッ←死

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