3、説得しなくては!
普通にマックに来ちゃったけど、普通にローグと会話しちゃったけど、常識だったら、彼女の存在疑うよね。この科学だなんだの時代にさ、妖精とか、掌サイズとか、萌えポイント満載とか。最後は関係ないか……。
「で、何で妖精がここに?」
探偵!? 探偵かい、波月! 単刀直入すぎね!?
「はい。実は、仲間とはぐれてしまったんです」
「仲間?」
「私達虹の妖精は、7人で仕事をなすのです。それで、今日は珍しく休みになったので、人間界に遊びに来たら、みんながみんな、好きな所に行ってしまって……」
「それで、ローグだけ迷ったの?」
ズズーッと、バナナ味のシェイクを啜る波月。……横顔も萌えぇ〜。
「はい。私は人間界なんて初めてで、右も左も分かりませんでしたの。そこに、ソラ様がぶつかってきたのです」
……ぶつかってきたって、なんか、俺が加害者みたいな言い方だな。
「それにしても、良かったですわ。ぶつかった方が、こんな親切な方々で」
なんて言いながら、バニラ味のシェイクを啜る。もちろんキッズサイズだけど、やけにおっきく見える。ストローもなんか図太いし……。
「見えると、何かいい事ある?」
「ないですわ」
早! 返事ひゃっ! あまりに早すぎて、舌噛んだよ。うぅ、痛い……。チョコレート味のシェイクでも啜って、舌を冷やすか。ゴメンな、舌。今、冷やしてやるからな。
「あの、お願いがあるのですけれど、私の仲間を、探してはもらえないでしょうか?」
急にかしこまって、赤いドレスの裾をぎゅっと握る。怖いものの前に出された、子犬みたいだ。……俺で例えるなら、隣のオバちゃんだな。あの人は怖い。一回ゴミの日間違えただけで鬼の形相で怒ってたし。思い出したら、余計に怖くなったなぁ。
「探すって言っても、どこにいるか分からないんだろ?」
「……はい」
すまなそうなローグ。ああ、可愛い……。って、こんな事言ってる場合じゃない!
「波月ぃ、探してあげてもいいじゃんか」
「ソラ様!」
急に笑顔になるローグ。ああ、萌えぇ……。苦い顔をする波月。ああ、こっちも萌えぇ……。ていうか、今、すごく幸せ……。
「本当ですか、ソラ様。本当に、本当に仲間を探してくれるのですの?」
「ええ、もちろんですの」
「だから、真似なくていいってのに。……でも、ソラ。俺らには学校もあるんだ。どこにいるか分からないやつらを探すなんて、無理だよ」
「……やっぱり、そうですわよね」
再び落ち込むローグ。……あ、泣きそう。
「悪いとは思うけど、俺らも俺らのやるべき事があるんだ。すまないけど、仲間は―――」
「奈津! 貴方ったら、いつからそんな薄情な子になったの!? お母さん、そんな子に育てた覚えはないわ!!」
「……ソラ?」
「お母さん、いつも言ってたでしょう? 人には優しく、自分には厳しくって!」
「ソラ、お前に育てられた覚えはないよ」
「まあ、本当の親に向かって言う台詞!?」
「いや、本当の親じゃないし」
「でも、人に優しくって、いつも言ってたでしょ? 忘れたの!?」
「言ってないから、忘れました」
つ、冷たい! 波月の心が、今、とてつもなく冷たい!! 絶対零度だ!!
「でも、困っている人は、助けたいよな?」
お願いです、助けたいと言って! 波月様!
「……ま、まあ、そうだけど―――」
「じゃ、決っまりぃ!」
「……へ?」
「と、言う事だから、暇を見つけたら、仲間を探してやるよ、ローグ」
「本当ですの!?」
「本当ですの! ね、奈津様!」
「……」
「……あの、せめてツッコミだけでもよろしくて? 何も言ってくれないのが、一番苦しいから……」
「……やっぱ、ソラって面白い」
出たよ瞬殺爽やかスマイル! ぐはぁ、もう無理吐血するわ!
「ソラ、汚い!シェイク吐くなよ!!」
「ご、ごふぇんふぁふぁい……」
か、可愛いものに囲まれてるのは幸せだけど、度が過ぎると息苦しい事を学びました。
******
「と、言う経緯でウチに泊まる事になったローグです。仲良しくてやれよ、いじめるなよ」
「……ソラにぃ。どんだけ馬鹿なの」
「こんだけさ」
「……疲れた、もう寝るよ、パ○ラッシュ」
「ゴメン! ウミ!! にぃちゃんが悪かった!! でも、嘘じゃないから、この子、物本だから!!」
「本と物が逆になってるよ」
「いや、わざとだからね! ホントに、わざとだって!! ……にぃちゃんを見捨てないでくれ、ウミぃーーー!!」
「そうですわ! ソラ様が可哀相じゃないですか、この乱暴女!!」
! ロ、ローグ!? な、なんか、第一印象とかなり変わった発言を……。
「はあ? こんな馬鹿に付き合ってるあなたも馬鹿でしょ、この能無し女!!」
「何ですって! 妖精の私を甘く見ると、痛い目に遭いますわよ!!」
「やってご覧なさいよ、おチビさん?」
「むむぅ〜。私を本当に怒らせたいようですわね!」
怒ったローグも可愛いから、安心して! ……って、何言ってんだよ、俺!?
「かかってきなさい。人間の恐ろしさ、その身にしかと焼き付けてあげるわ」
「上等ですの」
……なんか、話、ずれてません!? ていうか、ずれてますよね、コレ!
「まあまあ、会って早々喧嘩しないで仲良く―――」
「「できると思って!?」」
うおうっ!? 見事なハモり!! ていうか、口調変わってるぞ、ウミ。
「とりあえず、この子を家に置くの、反対だから。できるだけ早く追い出してね、ソラにぃ」
「え!?」
「じゃ、おやすみ」
「え? ……え!?」
な、何この展開! き、気まずいんですけど! 俺、ここに居ていいんですか、俺は存在していいんですか!?
「永眠する事をオススメしますわ」
ろ、ローグ!? 何気に黒い事をハッキリと言わないで! 心臓に悪いから、怖いから!
ちょっとちょっと! 睨みあわないで! 間に居る俺の事を考えてようか、ね。うん、ひとまず落ち着こう。なあ、お願いだから! ちょ、……頼むから、睨むのはやめてぇーーー!!
「ふん、それは貴方の事でしょ? 何言ってるんだか」
「何ですって? なんなら、もう一度言って差し上げましょうか? 言葉の意味がよくつかめていないようなので」
「ええ、お願いしようかしら? 私、貴方みたいな非常識な人の話は分からないもの」
「何ですの!」
「それまで!!」
もうたえられません!! 二つの意味で!!
1、間で睨まれているのは辛い。
2、仁義なき戦いみたいな口喧嘩とか、嫌いだから。
「詳しい事とか、また次の日に話すから。な? 今日はもう終わり! 解散! はい、おやすみ!」
「……おやすみ」
……こうして、ローグとウミの俺の取り合いは始まった。……って、話の内容変わってね?
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