28、人のせいにしたい時だってあるはずですよね?
さてさて、お久しぶりです、下弦であります。
今回から、3〜4話ほどソラVSテスト編であります!
え? 長編じゃないのかって?
……どうなんでしょうか?(聞くな
ま、まあとりあえず、ソラとテストが戦います。えぇ、誰もが憎み忌み嫌う、あの最強のテストと……!
そんなこんなで(どんなだ)、本編へどうぞっ!
平和なはずの朝。涼やかな風が吹き抜け、小鳥達のさえずりが―――。
「ちょっと有澄! 現実逃避しても無駄よ!」
そう、今日は平和な朝を迎えるはずだったんだ……。
「ソラ、帰っておいで」
あぁ、王子様。あなた様にそんな事言われたら、何があろうと現実に帰って来ますとも。
そして現実を見て思う。
「あぁ……帰りたい!」
「ソラにぃ! しっかりして!」
ダメ、ダメなんだよ。こんなにハードな現実、嫌なんだよ!
……あぁ、読者の皆々様には何の事だかさっぱりですよねぇ。
ザクッとバシッとグシャッと言いますとね、目覚まし時計が遅れました。え? 意味分からない? つまりあれですよ……。えぇ、寝坊しましたよ? いけませんか? セットした目覚まし時計が悪いのに!?
「有澄、考えてる事大体分かるわよ。アンタがいけない!!」
隣を走る矢吹が俺の頭を叩いて前に出る。俺もスピードをあげて、その隣に並んだ。てか、なんで叩いた!
「えぇ!? なんで? どうして!?」
「この世界にタイマーいれないで寝て、目覚まし時計のせいにするのはアンタだけよ!」
「そうだよ、そうだけどさ、ジリリリリーぐらい鳴ってくれてもいいじゃん!」
「命令されなきゃ、目覚まし時計は働かないの! これくらい、小学生でも分かるわ!」
「で、でも、でもさぁ……」
「言い訳考えてるくらいなら、しっかり走りな!」
「言われなくても走ってるし! 一生懸命だし!」
「とりあえず、テストに遅刻はかなりマズい。受けられなかったら最悪だ」
2人のいつも通りの口喧嘩を、波月の冷静な声が一瞬だけ終わらせる。矢吹の怒りはいつも以上で、喧嘩の勢いは弱まらなかった。
「そしたら有澄のせいなんだから! ウミちゃんまで巻き込んで!」
「一番最初に起きた俺に言う台詞か!? 起こしてやったの誰だと思ってるんだよ!」
「あーもう! なんで有澄の家なんかに泊まっちゃったのよ!」
「勝手に決めて、勝手に乗り込んできたのは矢吹だろ!?」
「とーもーかーく! 急ぐぞ!」
「朝からこんなに走るの部活くらいよ!」
「だったら歩いて遅刻しろ!」
「なんですって!?」
「んだよ!?」
波月がいくら仲裁しても、なかなか終わらない口喧嘩を続けながら、平和なはずの朝をひたすらに走って行く俺達なのであった……。
****
ウミと別れて、3年生用の下駄箱まで全力疾走し、階段を1段抜かしに駆け上がり、右に曲がればホラ、教室が……!
「ま、間に合ったぁ……」
「ホント、ギリギリって感じだけどね」
「だねぇ」
ふぅ〜と深く息を吐いて気付いてしまった。そう、とても重要な、ベリーインポータントな事に!
「ソラ、どうかしたの?」
「は、波月……。ど、どどど、どうしよう!」
「何か忘れたの?」
コクコクと激しく首を縦に振る。
「筆箱とか? シャーペンなら貸せるよ」
「違うよ波月! もっと重要なものさ!」
「もっと重要な? ……う〜ん、今日提出する物あったっけ?」
「えっと、数学の問題集だね」
「じゃあそれ?」
「まあ、重要と言えば重要だけど……。もっと、俺にとって重要な!」
「ソラにとって重要なものねぇ……。あぁ、ローグ達を忘れてきた事か」
「あぁ! す、すっかり起こしてあげるの忘れちゃった……」
怒ってないかな……。うーん、ジャウネとローグは機嫌がとりやすいけど、ウネがやっかいだな。
「って事は違うの?」
「……うん」
ダメだぁ、人生の終わりだぁ……。あぁ、なんて短い俺の人生だったんだ……。もう少し生きたかったなぁ。結婚とかしちゃってさぁ。幸せにほのぼのと生きていきたかった……。
「そ、ソラ?」
「なんだい波月君」
「なんでよそよそしい呼び方……。まあ、いいや」
ん、軽く流されるのも悲しいよ?
「ソラが言う重要な事って、もしかして―――」
その時でござんした。
ぐうぅぅ……。
なんという事でしょう。俺のお腹が我慢できずになってしまったではありませんか。
「やっぱり、朝食の事だったんだね……」
「……うん」
元気の源、朝食をとらなくて、どうして生きていけるのか、逆に聞きたい! そして訴える! 俺に食べなかった分の朝食を、今日だけでいいからください!!
「なんだかジャウネに似てるね、ソラって」
「似てないよ! 俺は加減を知ってるけど、アイツは加減を知らないよ!」
いくら俺でも、人の分まで食べないもん!
……あれ? さっき言ってる事が少し矛盾してる気がする。き、気にしちゃいけない! 気にしたら、何かに負ける気がする!
「おー、有澄。絶対遅刻すると思ったが、ちゃんと来てるじゃないか」
ゆっくりと教室に入って来た先生は、俺の頭をぽふぽふと叩きながら言った。
「俺だってやれば出来るさ! ……ですよ」
「何語だ」
……何語だろ?
「しかし、席にきちんと着いていれば満点だったんだが」
「席の付近にいるから、90点くら」
「よ〜し、みんな席に着いてるな。じゃ、筆箱意外はしまえよ。……あぁ、あとカンペもな」
生徒無視ですか!? 言葉さえぎったのに、何事もなく進めちゃいますか!
「有澄。座れー」
「薄情者、先生の薄情者!」
と、心の中で叫んでおく。
多少イライラしながら席に座ると、それを確認した先生は、頭をボリボリかきながら言った。
「さてと、今日のテストは……なんだったかな?」
「数学、理科、社会です」
「おぉ、そうかそうか。ありがとな、汐見」
先生、生徒に確認するような事じゃないでしょう。ていうか、問題用紙持ってくるの先生なんだから、忘れちゃダメでしょうが!
「準備はいいか? 机の落書きを消してあるか? カンペはちゃんとしまったか? 机の中は空にしておけよ、後々面倒だから」
大丈夫だよ、生徒を信じて。
「とりあえず、今カンペ持ってる奴は死刑な」
マジですか! ていうか、どんだけカンペを警戒してるんですか!
「じゃ、1時間目。数学のテスト用紙配るぞ」
うわぁ、初っ端から苦手なやつだよ……。で、でも、昨日頑張っていろいろ詰め込んだんだ! 頑張るぞっ!
「……よし、全員に行き渡ったな?」
静けさの中で、やけに先生の声が良く通って聞える。
キーンコーンカーーーンコーーーーーーーーーーーーーン
チャイムが鳴る……って、最後だけやけに長くない!?
「よし、始め!」
俺とテスト。+aで空腹との戦いのゴングがなった。
……何てカッコよく言いたかっただけで、真剣にお腹がならないように……じゃなくて、テストとの戦いが始まった。