25、誰もが嫌いなテスト君。
さて、気がつけばアクセス数1万突破! 嬉しい限りでございます!
もう一つの連載小説の方が長くやってて人気も多少あるけれど、ネタが浮かばないと言う事故(?)が……。
ネタ切れ気味にめげずに、これからも下弦 鴉は頑張らせていただきますので、生温い目で見守っていただけると嬉しいです。
ではでは! 本編へどうぞーっ!
「さて、明日から期末テスト期間になるのだが―――」
あぁぁぁぁ! 聞きたくなぁい! テストなんて言葉、聞きたくないよっ!
「おーい、有澄。話を聞いてるか?」
そりゃあ勉強出来ないよ? ちょっとくらい得意な科目はあるけど、ちょっとだからね。頑張っても、本当に頑張ってもダメなもんはダメなんだよ……。
「ソラ、ソラ!」
自分は本気で頑張ってるのにさ、「頑張れ」って酷くない? もう精一杯頑張ったんだけど? 全力投球だったんだけど何か? みたいなさ。
「ソラ、聞いてる?」
大体、なんでテストなんてあるんだよ。実力、中間、期末。オマケに小テストとか。そんなにやらなくてもいいじゃないか! まあ、どれだけちゃんと覚えているかとか、内容を理解しているか知りたいんだろうけど、一夜漬けされたら? 開始5分前に丸暗記とかされたら? その時だけの知識に早変わりじゃないか! それでもきちんと覚えている人はいるんだろうけど……。
「ソラ、先生が怒ってるよ。ねぇ、ソラ!」
「もういい波月。無駄な努力だ」
そうだ、そうだよ! テストなんてなくなってしまえば―――
「いだっ」
「有澄。きちんと人の話しを聞こうな」
「生徒にチョップは虐待じゃないんですか?」
「お前は例外だ」
そう吐き捨てて、もう一度、今度は頭をクシャクシャになでるようにして、先生は教卓の前に戻る。
「中学校生活最後の夏休みまでもう少しだ。有意義に過ごしたいなら、テスト頑張れよ」
頑張れない、もう頑張れないんだよ、先生……。
「じゃ、それなりに気をつけて帰れよ」
だから、本当に生徒を想うなら、それなりにじゃダメだと思うんだけど……。
****
「はあ〜……。憂鬱だぁ……」
べっとりと、テーブルに突っ伏して言うと、波月がさらりと地獄の訪れを告げた。
「明日から3日間テストだから?」
「うん」
「3日間なんてあっという間でしょ」
軽く言い放つ矢吹が、こんなに憎い事なんてあっただろうか。
「矢吹はそうかもしれないけど、俺にとっては地獄の3日間なんだよ」
「地獄って……」
呆れたようにため息をつく矢吹。
ちなみに今は、もうお馴染みのマックに来ています。テスト1日前なのに? というツッコミはなしで!
そうして、ポテトを食べていた矢吹が、ひらめいたように言う。
「勉強すればいいじゃん」
「してるんだぞ、これでも」
「じゃあ、勉強の仕方がわるひんでほ」
「食べながらしゃべるなよ。最後の方意味分かんないぞ」
ムスっとした顔で、ポテトの飲み込んだ。指についた塩までちゃんと舐めとって、ペーパーで残りを拭き取る。
「ともかく、今日アンタの家に泊まってあげるから、ちゃんと勉強しなさい」
「はあ!?」
なんでよりにもよって、矢吹が泊まりに来るんだよ! 波月なら許可しそうで怖いじゃないか!
「あ、なら俺も。1人じゃ他の事しちゃいそうだから」
「え!?」
ちょ、ちょっと待って! それは拒否できないぞ!
「泊まるってあなた、俺は一応男だぞ!」
「そうね」
さらりと返すなよ! 心の中だけで悪態をつく。
「男はあれだぞ! あれなんだぞ!」
「あれって何よ。ていうか、有澄は対象外だから大丈夫よ」
「対象外ってなんだ!」
「それはあれよ、うん」
「どれだよ!」
「まあまあ、落ち着こうよ」
これが落ち着いていられると思いますか!?
「波月はいいとして、矢吹は却下だ!」
「いいじゃない。ほら、ウミちゃんにも教えてあげられるし?」
「ウミは頭の良い子だから大丈夫!」
「この前、数学が苦手なんだって相談されたけど?」
「それはあれだ、うん」
「どれなのよ」
「じゃ、今夜はソラの家でお泊り勉強会って事で」
「けってーい。私、親に電話してくるね」
「うん」
あ、あの、俺の意見は聞く気なしですか? というか、何で俺の家なんですか。何で許可もしていない俺の家で決定なんですか。
「じゃ、頑張ろうね、ソラ」
「ぇ……あ、うん……」
ずるい、ずるいよ波月! そんな爽やかな笑顔されたら絶対に断れないじゃん!
「そういえば、最近ローグ達は学校に来ないね」
「ウミにこき使われてるから、疲れてるのかも」
風呂掃除に洗濯、布団干しに玄関掃除。残り食材のチェックに、ジャウネの暴食を防ぐための監視……。ばたばたと走り回っているからなぁ。
「そうなのかな?」
「何か気になる事でもあるの?」
コーラをなくなるまでズズズッとすすり、波月の返事を待つ。今日は何も頼んでいない彼は、矢吹のポテトを摘み食いして、少し困ったような顔をしていた。
「ソラは、変だと思わないの?」
「何を?」
「いつからかさ、急にソラに近づかなくなったと言うか、ちょっと疎遠な感じがしない?」
「うーん……」
この前買い物に言った時は、結構仲良く話してたし、変わった様子はなかった気はするけど……。
でも、波月が言うとおり、学校には来なくなった。前までは、先生の話が面白いとか、人の世界の勉強になるとか、給食をちょっと摘み食いしたりとか、他の人には見えないのかとか、いろいろ楽しそうに過ごしてたけど、最近は何かと理由をつけて来なくなった。矢吹が原因だと、俺は勝手に思っているけど……。
「何かあったのかな?」
「俺はそうだと思うんだけど」
「なんで波月はそう思うの?」
「いや、ちょっと気になっただけさ」
「たっだいまー。って、波月! 何人のポテト食べてるのよ!」
波月の隣に座りながら、矢吹が怒って言った。
「あぁ、ごめん。小腹が空いてね」
「だったら何か頼めばよかったでしょう」
「あの時はお腹が空いてなかったんだ」
「というか、前に人のポテトを散々摘み食いしてた矢吹が言うなよ」
「有澄のは私のもの、私のものも私のものよ」
「なんだよ、そのガキ大将みたいな言い草は!」
「何よ!」
「まあ、喧嘩が始まる前に、ここを出ようか。少し混んできたみたいだ」
「え、うん」
「ありありさぁ……」
矢吹が帰ってきちゃったから、あの話はそのまま流れてしまったけれど、ローグ達が少しよそよそしいのは事実だし、時間があったらローグ達と話をしてみようと思った。