23、お給料の使い道は?
大変長らくお待たせいたしました><
え? そんなに待ってねぇよ。つか、待ってなかったんだけど? ですと……。
……グスン……。
と、とりあえず、久しぶりな投稿、なので、うぅ、張り切ってまいりますっ。
いやぁ、テスト期間中というものはいいですなぁ。バイトし放題じゃないか♪ ん? 中学生のクセにそんな事してていいのかって? しかも、テスト期間中に。
ズバリお答えしよう! ダメですねぇ……。でもあれですよ、あれだからあれで大丈夫なんですよ。
「有澄君、今日もありがとうねぇ」
「いえいえ、こちらこそですよ」
優しく微笑むとえくぼが浮かぶこの人は、俺の友達のおばさん。テスト期間中に、経営している和菓子屋さんを手伝わせてもらっているのだ。レジ係じゃまさかのお客様が来た時にまずいから、梱包とか裏で小さな作業とかしかしてないけどね。
「では、また明日〜」
「あぁ待って。はい、これ」
白いエプロン姿のおばさんが差し出したのは、茶封筒。
……こ、これはもしや!
「最近頑張ってくれてるから、ちょっと早めのお給料よ」
「い、いいのですか?」
「いいのいいの! 手伝ってくれるのは有澄君しかいないんだもの」
おぉ、神様仏様! いい事は、バイトはしておくべきですね!!
「有難うございます!」
「いえいえ。また明日もよろしくね」
「もちろんですよ!」
****
と、言う経緯で得たお金……。さぁ、何に使おうか?
「ソラ様、今日の当番は何でしたでしょうか?」
「ん? ローグは玄関掃除だよぉ」
「了解ですの!」
うむ、いい返事だ。
パタパタと実体化して去って行ったローグの背中を見送って、再び考える。
来月まで食材は余裕でもつだろうし、これといって必要な生活必需品はないかも……。
「おい、青年。食器を洗い終えたぞ」
実体化を解いて、ウネが頭の上でくつろぎながら言う。
「ん? じゃあ乾いたら食器棚にしまっておいてね」
「乾くまで何をしていてもいいのじゃな?」
「2階の部屋の掃除はした?」
「あぁ、まだだったな」
そして、ふよふよとウネも去って行った。
んで、再び考える。う〜ん……どうしたものか。
初めてローグ達が実体化して壊されテーブルも、なんとか修復出来たし新しく買う必要ないよなぁ。椅子も大丈夫だし、和室の畳はちょっと傷んでるけど、気になるほどじゃないし……。
「ソラァ、飯はまだかぁ」
「まだだよジャウネ。というか、さっきおやつにドーナツ食べたばっかりだろう」
「足りなかった」
「……」
ひ、人の分まで食べておいて、足りなかっただと!?
「なあ、飯ぃ」
ジャウネがべトッと頭の上に寝そべる。そして、ぎゅるるーと壮大にお腹を鳴らした。
「……分かったよ。おにぎりでも作ってやるよ」
「やっほーぃ! サンクス、ソラ!」
ローグとウネは週に2回くらいしか食べないのに、なんでジャウネは毎週俺らよりも食べるんだ……。
で、ジャウネにエサ……じゃなくって、本日二度目のおやつを与えたところで。
「なあ、さっきから何に悩んでんの?」
テーブルに置かれた皿の上におにぎりを抱える様にして座りながら、それを食べるジャウネが聞く。もう少し小さく作ってあげれば、もっと食べやすかったかな。
「んー、お給料はどう使おうかなぁと」
「おきゅうりょう? なんだ、うまいのか?」
「食べられないから……」
「なんだ、そうなのか」
「何の話をしてますの?」
掃除を終えたのか、ローグが実体化したままやってきた。
「お給料の使い道について話してたんだよ」
「おきゅうりょう? なんですの、チャーハンの具ですの?」
「いや、食べられないから……」
「あら、そうなんですの」
実体化を解いて、俺の右肩に座る。両足をふらふらと振った。
「ジャウネはまた食べてるんですの?」
「腹が減ったんだもん」
もう半分くらいになってしまったおにぎりを、大切そうに抱えながら、お米を少しずつ摘み取って次から次へと口に放り込みながら、もぐもぐとジャウネは言った。
「なんだ、みな集まって」
掃除から帰ってきたウネは、再び実体化を解いて、俺の頭の上に座る。もう、定位置になりつつあるな。
「ん、ちょっとお給料についてねぇ」
「おきゅうりょう? なんだ、新しいドラマの題名か?」
「だから、食べら……じゃないや、そういうんじゃないよ」
「ほう、そうなのか」
「お給料って言うのは、働いてくれたお礼にくれるものなんだよ」
「ふーん」
ジャウネは全く興味がなさそうに言うね。
「そうなんでしたか」
「ふむ、なら我らももらっても良いのではないか?」
「え?」
確かにローグは良く働いてくれるけど、ウネは時々サボるじゃないか。
「我らだって働いておるぞ」
「例外はいますけどね……」
ジャウネはだいたいサボるし、寝てるか食べてるだけだからねぇ。だからウミの堪忍袋の緒が切れるんだよ……。
「で、お給料って何がもらえるんですの?」
「ん、お金だよ」
「飯を買ったり服を買ったりするのに必要な物の事じゃな」
「だよぉ」
「服ですかぁ……」
そう言って、ローグは自分のドレスをちょっとつまんで、考えるように口をへの字に曲げた。そして横目に俺を見て、うーんと唸って、またドレスを見つめた。
ローグもウネもジャウネも、出会った時のまま服は変わっていない。赤を基調とした、ふわふわとレースが多いドレスのローグ。橙を基調とし、体のラインに沿う、スカートだけがフワッと膨れているウネのドレス。黄色のだぼだぼの半袖に、上着より薄い色をした七分丈のズボンに白いスニーカーのジャウネ。ローグとウネはいいとして、ジャウネはもう少し洋服に気を使ったりしないのかな……。
「新しい服くらい、欲しいよねぇ」
ボソッと呟いてみれば、ローグに激しく反応があった。
「ですわ!」
うーん、なんてキラッキラな瞳……。か、可愛いじゃないかっ。
「我もこんなドレスいやじゃ」
「んー、俺は別にかまわねぇな」
うん、ジャウネはなんでもどうでも良いって感じがする。そういうオーラを君は纏っていると俺は思うぞ!
「じゃあ、明日は学校あるから、明後日の休みの日にみんなで買い物でも行こうか」
「行きますわ!」
「まあ、青年がそういうのなら行ってやらん事もない」
「食いもの!」
ジャウネ、君はまずそれですか……。
「たっだいまー」
「おかえりー、ウミ」
リビングの入り口で、うーんと伸びをしてから、ウミは俺の隣の席に座ってまた伸びをした。そして、何かに気付いたように俺に言った。
「なんか楽しそうな話してたでしょ?」
「出かける約束しただけだよ」
「出かける!? そんなお金がどこに」
「ここに」
「あるの!?」
おーう、ローグより眩しいキラッキラな瞳だ……。
「で、何買うの?」
「とりあえず、ローグ達に新しい服でもと」
「えー。ローグ達はお人形の服あげるから勘弁して」
「に、人形の……?」
「たぶん、ギリギリではいるでしょ」
まあ、小さいしねぇ、ローグ達。でもさ、ちょっとでも可哀相だなとか思わないのかな、我が妹は……。
「あ、新しいのが良いですわ!」
「何よ、居候のくせに!」
「好きで居候している訳じゃないですわ!」
「じゃあ出て行きなさいよ!」
「他に行く当てがないのに追い出すつもりですの!?」
「波月さんの所か、矢吹さんの所があるでしょう!」
「矢吹さんだけは絶対嫌です!」
哀れなり、矢吹。君のその可愛い物好きが祟った様で、可愛いものから嫌われるなんて、ざまあみ……じゃない、ドンマイとしか言えないよ。
「波月さんは?」
「え、遠慮させていただきますわ」
まあ、お家柄がねぇ。
「とりあえず、買うなら私の服買ってよ、ソラにぃ!」
「うぇ!?」
か、蚊帳の外だと思ってて、何も考えてなかったぞ!
「いいえ、私達のも買っていただきますわ!」
「図々しいわね!」
「いいじゃないですの! ソラ様の方から買って下さるって言ったんですし!」
「ソラにぃの言う事を鵜呑みにしちゃだめよ!」
えぇ!? な、なんでさ!
「だいたい現実から遠くはなれた事言うんだから!!」
……そ、そんなぁ。俺だってちゃんと現実を見て言ってるのに。
「ともかく、約束は約束ですの!!」
「へんっだ!」
で、なんで君達はそこまで仲が悪いの? というか、なんで顔を会わせる度に火花を散らせるの?
そして、結果としてローグ達とウミの洋服を買う事になったのであった……。
「居候のくせに!」
「生意気な小娘のくせに!」
うーん、そろそろ口喧嘩は終わりにしようねぇ、ローグとウミよ……。
さてさて、一身上の都合でしばらく休載していた訳ですが……。
まあ、スランプの中のどスランプだったんですけどね……。
それ+私情で更新ができなくて大変申し訳ありませんでした。m(_ _)m
これからも『アルカンシエル』で人に笑いと、心に小さな温もりを与えていければと思っているので、どうか最終話までお付き合いいただけると幸いです。
ではでは、これにて失礼致しますっ。