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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第二章 穏やかに流れる日常
15/80

15、彼らの運命はソテー?

 ふっふ〜ん♪ ふふふ〜〜〜ん♪


 今日はちょっと奮発して、ソラにぃの好物ハンバーグなのだぁ♪

 あぁ、ソラにぃのあの馬鹿らしい笑顔が目に浮かぶわ。下ごしらえもちゃんとしたし、この前みたいに焦がさなければ大丈夫。テレビに夢中にさえならなければ、大切なハンバーグちゃんが悲惨な目に遭う事もないし、絶対大丈夫よ!

 「おぉ、ハンバーグだな!」

 ん? ソラにぃ早いわね……。それよりも、いつもより声のトーンが高い気がする。

 「おかえ……り?」

 読者の皆さん、これは……。

 「誰よ、アンタ」

 「ん? 俺か? 俺はジャウネってんだ。よろしくな」

 「え、よ、よろしく……」

 あんの馬鹿にぃ、また変なの増やしたわね……!

 「ウミィィィィィ! ストォップ!」

 噂をすればなんとやら……。右肩に橙の人形乗せた馬鹿が帰ってきたわ。

 「ダメ! ダメだよ! にぃちゃんは許さない!」

 「何をよ」

 「ダメなんだよ、ダメダメ!!」

 「だから何が」

 あ、そろそろいつも見てる番組が始まる頃ね。テレビのリモコンはどこ置いたかしら。

 アホ面下げたソラにぃの前を通り過ぎて、自分の席についてため息をついた。そういえば、リモコンの電池切れてるんだった。学校の帰りに買ってこようと思ってたのに、忘れたわ……。

 「その子はね、あれだよね。うん、あれ?」

 「主語を含めてしゃべってくれない? 何がなんだかサッパリよ?」

 よっこらっしょ。確か、予備の電池が和室にあったはずよね。どこにしまったかしら。

 「で、何がストップ? 何がダメなの?」

 「えっと、その、あれでして……」

 「それより、ウネは何してるの?」

 「見れば分かるだろう。青年において行かれない様にしがみついておったのじゃ」

 「ふーん。はぐれて迷子になればよかったのに」

 「「酷くない!?」」

 見事なソラにぃとのハモりですこと。あ、あったわ電池。リモコンのは……単3ね、コレなら大丈夫そうね。さーて、今日のゲストは誰だったかな。

 「で、ローグは? あの子、お風呂掃除当番でしょ?」

 「え、俺知らないよ?」

 馬鹿にぃ。ため息をつきつつ、電池を交換する。再びリビングに戻って電源を押したけど、なかなかつかないから乱暴にリモコンを叩いてみた。

 「青年が爆走するから置いて行かれたのであろう」

 ……ホント馬鹿にぃ。あ、ついた。なんだか今日のゲストはつまらなそうね。私この人知らないし。他に何かやってたかなぁ。

 「めっし♪ めっし♪」

 そうだ、忘れてた。ソラにぃが頑張って直したテーブルの上で、嬉しそうに踊る黄色い物体は何?

 「で、それは何?」

 「それって?」

 「そこで踊ってるオブジェ」

 「オブジェとは……」

 「黙ってなさい、ウネ」

 「すまぬ、だからソテーはやめてくれ」

 あー、なるほど。ストップの意味が分かった。ついでにダメの意味も。

 「大丈夫よ、こき使える人数が増えるんだから、ソテーなんかにしないわ」

 「ホントか!?」

 そこまで薄情者ではないって事よ、ソラにぃ。たまには妹を信じてちょうだい。

 「ふぅ、安心だ……」

 私だって悪魔じゃないからね。まぁ、働かないなら話は別だけど……。

 「なぁ、飯は、飯はまだか!?」

 「うるさいわね、ウネと布団でも敷いてきなさい」

 「うどん?」

 「布団!」

 「フトンってなんだ? 美味いのか?」

 ……この子、私に殺されたいのかしら。

 「う、ウミ? 握ってるリモコンが悲鳴をあげてるよ?」

 「じゃ、ジャウネよ! 我と共に来い!」

 「んでだよぅ」

 「いいから来いと言っとるだろうが!」

 ……絶対いつかソテーにしてやる。




 ふぃ……。ジャウネのソテー化は何とか防げたけど……。

 「ソラにぃ、おかわり」

 「あい」

 「返事は?」

 「はいっ」

 何このピリピリした空気! 夕食ってもっと和気藹々と、楽しそうに食べるものじゃないんですか? 張り詰めた空気の中で食べるようなものじゃないですよね、そうですよね!

 「ローグ、お椀はちゃんと持って食べなさい。ウネ、フォークとナイフの持ち方が反対よ」

 「「は、はいぃ」」

 迷子だったローグは何とか帰って来れたはいいよ、いいんだけど何この恐ろしい空気。ウミよ、兄は息苦しくて窒息死しそうだよ。助けてくれ、俺に空気と安心をおくれ。

 「ジャウネって言ったっけ?」

 「にゃんだ?」

 「しゃべる時は飲み込んでからにしなさい」

 「別にいいじゃねぇか」

 「見苦しいのよ」

 「そりゃ失敬。ごめそー」

 火に油を注ぐかの如く、ジャウネが返すものだからウミのオーラが黒いのなんのって。いや、もう慣れつつあるけど、怖いものは怖いじゃないですか。分かってください。

 「……ソラにぃ」

 「は、はい!」

 「フライパンを火にかけておいて」

 「そ、それは……?」

 「明日の朝食の準備をするの、そう決まってるでしょ?」


 ガチャガチャン


 「そこ、フォークとナイフ落とさない!」

 「「す、すみません!」」

 今更ですが、ローグ達は実体化して食事してます。別に食べなくてもいいらしいけど、お腹がどうしても減る時は、食べなきゃ生きていけないらしいです。

 「ソラにぃ」

 「な、なんでしょう!」

 「それ、フライパンじゃなくて土鍋よ」

 あへ?

 「あは、あははー……。間違えちった」

 「馬鹿にぃ……」

 そんなに飽きれないで! 俺だって、俺だって頑張れば何でもできる子だよ! たぶん。

 「ソラにぃ」

 「ん?」

 「それはフライパンの蓋なんだけど」

 あら?

 「たははー、ミスっちゃった♪」

 「アホにぃ……」

 うぅ、いつもよりため息が深いよ……。しかもアホって言った。久しぶりにアホって言われた!

 「ソラにぃ」

 「え?」

 こ、今度こそフライパンだよ? 何もミスは犯していないぞ。

 「もういいわ、なんか疲れた。お風呂入って寝るよ」

 「え、うん。おやすみー」

 「おやすみ、ソラにぃ」

 なんで? 俺が疲れさせたのか?

 「ソラ様、あのぅ」

 「なに?」

 「それ、油じゃなくて……」

 「放せ! 放せと言っておるじゃろうが! 聞えんのか青年!!」

 「あれ? えぇ!?」

 あれ、俺、油を手にとったつもりだったのに、なんでウネ握ってるの?

 「こっちが驚きたいんですの……」

 「えぇい! 放せと言っておるじゃろう!」

 「え、あ、ウネごめんね」

 「ったく、なぜ私がソテーされかけなければならんのだ!」

 「だっはははははははははは!!」

 「ジャウネ! 笑うでない!」

 「だって笑わなきゃ損だろ?」

 「まあ、ウネが無事だったからいいですの」

 「あはははははっ」

 「笑うな!」

 とまぁ、ウネとジャウネの不毛な争いが始まりまして……。

 「なぁ、ローグ」

 「なんですの?」

 「なんで俺、油じゃなくてウネ握ってたの?」

 「あぁ、それはですね―――あいたっ! 何するんですの!」

 「鈍いんだよ!」

 「ジャウネに同じく!」

 「物は投げるものじゃありませんのー!!」

 なぁんて、ローグも加わっちゃいまして。

 あい、なぜ油じゃなくて、ウネを持っていたのかは聞けずじまいでした。

 「コラ! 逃げるなジャウネ!」

 「へっへーんだ! 相変わらずトロいなぁウネビガラブ」

 「待ちなさい! 人様の家をめちゃくちゃにするのは許さないんですのー!」

 君もね、ローグ。




 翌朝、ウミにこっぴどく叱られていた三匹の妖精がいたというのは、また別の話。

水月五月雨さん作、『桜ヶ丘高校生徒会役員』とのコラボされました、はい。

こんなくだらないものとコラボなんていいのか? いいのですか!? なんて思いつつ、OKしちゃいました♪


私は書いていませんのですが、是非読んでみてくださーい。

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