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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第二章 穏やかに流れる日常
13/80

13、ソラと馬鹿と疲れと。

 あんな最低な日曜日は、何日ぶりだろう……。

 「はぁ……」

 「おはよう、ソラ」

 「おはよ…」

 「あら、奈津様。おはようございます」

 「おはよう、波月」

 「ローグとウネビガラブもおはよう」

 あぁ、白馬の王子様が隣にいるのにぃ、俺の癒しである存在が隣にいるのにぃ。

 「はあぁ……」

 元気100倍もでない、有澄ソラ……。

 「どうした? 元気ないけど」

 「なぁんかさぁ、疲れた」

 「何に?」

 「んー、いもう―――。なんて言ったら殺されそうだ……」

 「ウミちゃんか。あの子はソラ以上にいつでも元気だからね」

 「元気ありすぎなんだよぅ。あの元気、少しわけてもらいたいものじゃ……」

 「あー! ローグちゃんに、ウネちゃん発見!!」

 あ、一番疲れる存在、忘れてたわ……。

 「「ひえぇぇぇぇぇぇぇ」」

 急いで俺のカバンに避難する、ローグ&ウネ。……ご愁傷様。

 「あ、いたの馬鹿」

 「馬鹿じゃないやい、有澄ソラだい」

 「おはよー波月」

 「おはよ」

 俺はスルーかっ!

 「ねぇ、波月はこんな馬鹿と毎朝話しながら学校に通って、疲れないの?」

 「うーん。馬鹿っぽいところが面白いから、いいかな」

 「ぽいじゃなくて、完璧なる馬鹿だと思うけど?」

 「面白ければ、いいんじゃないかな」

 「馬鹿でも?」

 「うん、馬鹿でも」

 すみません、隣で馬鹿馬鹿言われると、心にグサッグサッと矢が刺さるんだけど……。

 「てか、俺には挨拶なしか、小娘」

 「猿に用はないわ」

 「猿じゃないやい、あす―――」

 「はいはいはいはい」

 「流したなぁっ」

 「いいでしょ別に。あんたと話してると、ストレスが溜まるのよね」

 「俺もだよ」

 「じゃあ話しかけないでよ!」

 「そっちが勝手に会話に入ってくるんだろう!」

 「あんたに話しかける馬鹿はいないと思うけど!?」

 「んだと!?」

 俺と矢吹の目線がぶつかり合って火花を散らす。その間にいる波月は苦笑しながら、頭をかいた。

 「俺、ソラに話しかけてるけど」

 「波月はもちろん例外ね」

 「波月以外にも話しかけてくる奴はいっぱいいるぞ!」

 「波月は慈悲の心で話してやってんのよ、その他諸々もね!」

 「優しいけど、ホントに波月は優しいけど、慈悲の心だけじゃないやい!」

 「まあ、親友だからな」

 「親友だから、仲良くしなくちゃいけない。あぁ、可哀相な波月」

 「お前みたいな奴にたかられるローグとウネも哀れじゃわい!」

 「んですって!」

 「やるのかこのやろうっ!」

 「柔道部主将の座を、甘く見ないで欲しいわね!」

 「帰宅部長の俺の逃げ足の速さあなどるな!」

 「ソラ、それ威張るような事じゃないよ。それにさ―――」


 キーーーンコーンカーンコーーーン


 「「む」」

 「遅刻記録更新かな、俺達」

 「私の今までの努力が水の泡に!」

 もうダッシュで走り出す矢吹、ならぬ悪女。

 「俺も遅刻は初めてかも」

 なぁんて、楽しそうに言いながら矢吹に続いて走り出す波月、ならぬ白馬の王子様。

 「あ、ホントに遅刻記録更新じゃ……」

 なんてのどかに思う俺、ならぬ疲れた農民。

 あぁ、なんでこんなに疲れてるのに、走らねばならぬか。

 「ソラー! 先生がもう階段登ってるぞー」

 「なんだとぅ!」

 「いそげー♪」

 ……あくまで楽しそうな白馬の王子様であった。



                   *****



 まあ、急いだかいがあって、滑り込み、超ギリギリセーフで遅刻は免れました。

 「間に合ったという奇跡……」

 「遅刻寸前って、あんなスリリングなんだな」

 「楽しそうだね、波月は」

 「遅刻なんて、初めての体験だったからね」

 「真面目な良い子じゃのぅ、波月は」

 「ソラがただ単に寝坊しすぎなだけさ」

 うは、今のはちょっと心に刺さったよ……。

 「ソラ様は反省するという心が欠けていますのよ」

 「そうじゃな」

 筆箱の上に偉そう座って何を言うか、ローグ&ウネよ。

 「ちょ、ひどいよ」

 「青年はもう少し波月を見習うべきじゃな」

 「そうですわ」

 激しく頷くローグに、真剣な顔つきなウネ。まあ確かに、授業の内容真面目に聞いてないよ。右から左に流れいくよ。意味を理解する前にもう次にいってますとも。でもさ、これでも結構頑張ってるんだよ。

 「ちょっといいかい。消しゴムとりたいから」

 「あら、ノートをきちんととっていたんですわね」

 「珍しいな、寝ないとは」

 え、俺ってそんな不真面目な感じですか? 不真面目な雰囲気ありますか?

 「そんな意地悪いうと、仲間探してあげないぞ」

 「「あ」」

 ん? なぜか見事なハモリング。机の右端に二人が

 「……そ、それはひどいですわ、ソラ様」

 「そ、そうだぞ、青年」

 んー、やけにあたふたしてるな。怪しい、これは怪しいぞ。

 「もしや……」

 「な、なんですの?」

 「……なんだ?」

 「わす―――あいだっ」

 先生! 教科書で頭をはたくとはっ。生徒虐待ですか!? しかも角が当たって痛かったじゃないですか!

 「ちゃんと聞いとるのか、有澄」

 「何をですか?」

 「教科書59ページ。3行目から読めと、何度言ったと思う?」

 「初耳です」

 「そうか」

 「そうです。あはは」

 「笑って済ませるな、全く……」

 そんなあからさまにため息つかないで。こいつはダメなやつだとか思わないで。やれば出来る子だよ、有澄ソラは! 頑張る時は、頑張るよ! ほどほどにだけど!

 「とりあえず、教科書開いて、さあ、読んでくれ」

 「えぇっと……」

 あー、何ページだったかな?

 「有澄」

 「あい? じゃないや、はい?」

 「それは国語の教科書だ」

 ん? 確かに国語の教科書ですな……。

 「今は何の時間だ?」

 ええと、月曜日課の2時間目は国語だね。うん。まちがいない。

 「国語です」

 「公民だよ、有澄……」

 あれ? あれれー??

 「あら、本当ですわ」

 「本当だな」

 時間割票の周りを飛ぶローグに、筆箱を枕にして横になっているウネ。

 あれ? 公民は4時間目じゃなかったかな?

 「あ、今が4時間目なのかぁ」

 「「今気付いたのか!?」」

 うむ、見事なハモりいただきました。まぁ、先生とウネじゃ、周りには分からないか……。

 「どうもすいやせんでした」

 「謝る時は、すみませんでしただろ」

 「そうですねぇ、すみません」

 えーっと、公民公民ムーミンッと……。あれ、何か違うのが混ざったような……。まあいいや♪

 「あれ?」

 「どうした?」

 「教科書がありませんでしたー。アッハハ~」

 あははー、どぉっこいっちゃたかなぁ。

 「お前って奴は……」

 あ、見捨てないで。見捨てないでよ、先生!

 「ソラ、俺の貸してやるから……」

 「おぉー。有難う波月」

 と、言う事で、無事に事件(?)は解決です。




 「ソラ様って、天然って言うか、なんと言うか……」

 「ただ単に、単純に、馬鹿なだけじゃ」

 「あら、珍しく意見が合うじゃない」

 「そうだな……」

 あぁ、やっぱりなんか疲れてるのかなぁ。ローグとウネに馬鹿だって言われた気がする……。

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