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アルカンシエル  作者: 下弦 鴉
第二章 穏やかに流れる日常
11/80

11、緊張しすぎかな?

しばらくの間、更新が出来なくて、大変申し訳ございませんでした。

これからは、こつこつ地道に頑張っていこうと思うので、応援よろしくお願いします。

 愛しの給食の時間も終わって、今は職員室の前に来ております! 状況が把握できていない方は、前回をチラッと読んで、またお越しくださぁい。

 「失礼しまぁす」

 「有澄、ノックを忘れてるぞ」

 「あ、すみません。やり直してきます」

 「いやいや、時間の無駄になるからやらんでいい」

 「じゃ、普通に失礼しまぁす」

 時々ノックの存在忘れちゃうんだよねぇ。なんか、やらなくてもいい動作に思えちゃってさぁ。アハハ〜。

 あり? そういえば、なんで俺ってここに来たんだっけ? ……まあ、いいや。話の流れで分かるだろう、多分!

 「有澄、とりあえず、こっちに来なさい」

 とりあえずって……そっちは校長室じゃないですか? 何? 俺、そこまで悪い事しましたか!? ……あ、バイトの事か? ああでも、バイトしないと生活費が……。

 「失礼します」

 「失礼しまぁす」

 先生が入る前にノックしたから、俺はしなくていいんだよね? これ、常識(?)だよね。

 「ああ、来ましたね。桜井さくらい先生、それに有澄君」

 軽く会釈する先生に習って、俺もちょっとだけ頭を下げておく。礼儀として、これくらいはやらないといけない気がした。あ、桜井先生ってのは、俺の担任だから。……言わなくても、分かる……かな?

 「まあ、貴方がソラね」

 いきなり下呼び? しかも誰このおばさん! 全然知らないんだけど!?

 あ、もしかして、教育委員会の人? え!? 俺って、そこまで悪い事した? え!? この状況的に退学処分? えぇっ!? そんなの嫌だよぅ!

 「立派に育っているようだね」

 そうやって褒めて、地獄のそこに叩き落すつもりだろ? 分かってるぞ! こんなに馬鹿な俺だって、それぐらい、……それぐらい分かるさ!!

 ていうか、おじさんまでいらしたんですか!? え!? 教育委員会委員長的な人!? ヤバいじゃん、俺! 俺の立場、かなりヤバいじゃん!!

 「ど、ども」

 い、一応、挨拶はしとかなきゃ! い、印象を良くすれば、きっと退学処分が軽くなって、停学処分になるかもしれない! てか、そうなってください!!

 「そんなに固くならないでいいのよ」

 「そうだぞ、わしらは君を叱りに来た訳じゃないんだから」

 いや、普通固くなって当然じゃ……。

 あり? でも、叱りに来た訳じゃないって事は、何? え? 身柄を拘束しに来たとか? あり? もう思考がネガティブな方にしか働かなくなってるぞ。

 そだ! ウミだけは許してもらえるようにしなきゃ! あいつには、何の罪はないんだからな!

 「あ、あの……」

 「なぁに、ソラ」

 すみませぇん。異常に緊張するので、下呼びしないでください。いや、ホントにマジで緊張するんで、やめてください!

 「あの、こいつにはまだ説明してないんです。元から上がり症な部分があるんで、ちょっとそっとしておいてはくれませんか?」

 おお、先生! 有難う!! 俺の心は、先生の一言で救われましたよ!

 「有澄、ちょっといいか」

 「はい」

 部屋の角におしやられてぇ、

 「あの方達は、有澄の親だと言っているんだよ。……でも、有澄の両親はずっと前に事故で亡くなったはずだろ? それに今はおじさん達が面倒を見てくれているはずだ。何か身に覚えはないか?」

 え、親? へ? 俺らの? は? この人達が?

 「混乱するのは分かる。だが、本当にそう言っているんだ。私達は有澄ソラと、有澄ウミの父と母だって」

 え、ちょいまち。俺らの親って、死んじゃったよね? 事故で。あり? て事は、もうこの世にはいませんよね。じゃあ何、この人達。俺らの親が、この人達? 全然似てないし、血の繋がりすら微塵も感じないし、上がりまくってるのに? ……最後のは違うか。

 で、でも、とりあえず言える事。この人達は、全く知らない人であります!

 「身にも心にも頭にも、全く覚えがございません」

 「そうか。なら、それでいいんだ」



                    *****



 「てな感じで、もうずっとパニック。おかげでお嬢様に叱られるし、親衛隊を名乗る人達に拉致られそうになるし。もう、ロクな日じゃなかったよ」

 「そうでしたの」

 「まぁ、親が出来るってのも、いいのではないのか?」

 「ウネ、俺らの親は、あの2人だけでいいの」

 お仏壇を指差して、麦茶をズズッと啜る。それにあわせて、実体化してるローグ達も、麦茶を啜る。……う〜ん、いい加減ドレスは見飽きたなぁ。服でも買ってきてあげようかな。あ、お金がないんだった……。

 「さあ、ウミが帰ってくる前に掃除しないと」

 「あ、私は部屋の掃除をしないといけなかったんですの」

 「我は洗濯物を取り込まなくてはならなかったのぅ」

 で、自分の仕事をすべく、去って行きましたぁ。



 「♪♪〜」

 「ご機嫌ねぇ、ソラ。学校で何かいい事でもあった?」

 「いい事ですか? う〜ん、特にないです……ね!?」

 振り向いてみてびっくり! な、なんと、昼間のおばさん達がいるではありませんか!

 「ふ、不法侵入じゃ……」

 「なぁに?」

 俺の呟きなんてつゆ知らず、呑気でいいねぇ、この野郎!

 「お母さん、何か手伝おうか? 掃除なら、得意だから」

 「……いいです」

 お、お母さんって、俺の母さんは、事故で死んだ母さんだけなんですけど……。

 「そんなに緊張するな。私達の息子なんだから」

 いや、緊張するなって、無理なお願いじゃないですか? ていうかこれは、不法侵入ですよね? 訴えますよ? そんな勇気があったらの話ですけどね。

 「じゃあ、お母さんが腕によりをかけて夕ご飯作るから、待っててね」

 え、いやいやいや! 勝手な事しないでくださいよ、困るから!

 って、口に出して言えない! 緊張しすぎて、舌が回らない。

 「あら? お客様ですの?」

 ローグ! 君は心の救いだ!

 「あら、このお嬢さんは誰?」

 そんな嫌そうな目でローグを見ないでください!

 部屋の掃除を終えて、実体化したまま戻ってきたローグは、俺の隣まで来た。訝しげに2人を一瞥すると、俺の耳元で囁いた。

 「ソラ様のお知り合いの方達ですの?」

 「ホラ、昼間言ったおばさん達って、この人達の事だよ」

 ローグはうんうんと頷くと、さらに囁き返す。

 「悪そうな人には見えませんけれど……、ソラ様は嫌なんですの?」

 「だって、知らない人って俺は苦手……」

 「じゃあ、私が何とかして帰ってもらいますわ。その代わり、今日の残りの当番を全て代わってくださいですの」

 「喜んで!」

 「なぁに? お母さん達には秘密の話?」

 「すみません。気にしないでくださいですの。何でもありませんの」

 「……そうなの?」

 おばさんは眉を寄せて俺を見たけど、その視線の間に割って入ったローグが、ニコリともせずに俺が言いたい事を言ってくれた。

 「はい。それより、ここには何をしに?」

 「何って、私は母親ですよ。ここに帰ってくるのが当然でしょ?」

 「けれど、ソラ様達のご両親は、既に亡くなってますわ。アナタが母親のはずがありませんわ」

 「まぁ、失礼な子ね。私は、ソラとウミの母ですよ」

 いえ、違います。お仏壇にある写真の人が、俺らの母さんです! そして、父さんです!

 「じゃあ、あの写真の方々は?」

 「あの方々も、ソラとウミの両親です」

 「2人も両親はいませんわ。何かの間違いじゃなくって?」

 いいぞ、ローグ! 畳み掛けて、ここから追い出しちゃえ!

 「それもそうですよ。私達はソラの叔母様達から頼まれて、ここにやって来たのですから」

 「叔母様達から、頼まれたって? じゃあ、叔母さん達に会ったの?」

 「そうよ、ソラ」

 思わず口挟んじゃった……うう、気まずいよぉ。

 「いくら頼まれたからと言って、他人が勝手に人の家に上がっていいものではありませんわ」

 おお、ローグ。まだ粘ってくれるのかい! 有澄ソラは、嬉しいです!

 「勝手じゃない。きちんと許可は取ったよ」

 お、黙ってたおじさんが口を開いた。寄り添うようにおばさんの隣に立つ。だけど、なんだか偉そうな立ち方だなぁと思った。

 「誰にですの?」

 「叔母さん達と、国にさ」

 「え!?」

 言い返す言葉も出ないいよぅ。国に許可取ったって事は、もう、戸籍上は家族にされてるって事だよね? ど、どうしよう、ウミが帰ってきちゃう。ウミが混乱しちゃうよぅ。

 「息子達の意見も聞かずに、勝手に決めた事なんて誰が認めるか。彼らの意見を尊重しろ。それから親を名乗れ」

 全員の視線が、その声の主に集まった。リビングの扉を開け放って、そこに寄りかかるオレンジの少女。ウネは口をへの字に曲げて、明らかに不服そうな面持ちでため息をついた。

 「けれど、決まった事は決まった事だよ。覆されない」

 「で、でも、……俺ら、今のままで、十分幸せにやってますよ」

 は! また口を挟んでしまった!!

 「本当に?」

 「……」

 「聞いているんだよ、ソラ」

 どうしようどうしようどうしよう! こういう空気が嫌いだよぅ。言葉が出ないから、大嫌いだよぅ。

 「ソラ」

 「お、俺の親は、あの2人だけです。死んでしまったけれど……。あの2人だけが、俺の、俺らの両親……なんです」

 よ、弱気になるなよ、俺。もう少し頑張るんだ、俺!

 「それで?」

 「……は、初めて会って、今日話したばっかの人に、あの2人につけてもらった名前で呼ばれたくない、です」

 よく言い切った。偉い、偉いぞ! 今日だけは褒めるよ、俺!

 「そうか。……じゃあ、気が変わる頃に、また来るとするよ」

 すみません、もう二度と来ないでください。できればじゃなくて、本気で来ないでください。

 「じゃあね。また、来るからね」

 そ、そんな寂しそうな顔したってダメです! お、俺は、気持ちを変えたりしませんからね!


 ガッチャン


 ドアが閉まる音がした。ウネは小さく愚痴を言うと妖精の姿に戻って、俺の頭の上に乗った。ローグも同じように実体化を解くと、俺の右肩に乗る。はあ、やっと息が出来るよぅ。緊張しすぎ&酸欠で倒れそうだったよぅ。

 「ただいまぁ。ねね、今誰か出てったけど、何だったの?」

 「ウミ!」

 もう帰ってきちゃったの!? いつもより、早くない!?

 「どうしたのソラにぃ。いじめられた?」

 「うぅ、違うよ。俺がいじめられる訳ないだろ」

 「一番いじられキャラに見えるわよ、その顔」

 「どんな顔だよぅ」

 「そんな顔よ。で、あの人達、誰? 教育委員会か何かの人?」

 おお、さすが妹。考える事が似通ってる……。

 「バイトがバレた?」

 「んにゃ、バレてないよ」

 「じゃあ、何? って、どうしたのソラにぃ。泣きそうな顔して」

 「今だけ泣かせてぇ」

 「え!? ちょ、ちょっと待―――!」

 怖かったよぉ。初対面の人、メッサ怖かったよぅ。ローグやウネ達がいなかったら、俺、俺ぇ……。

 「……よしよし。いい子だから、泣き止みなさい、ソラにぃ」

 「う゛う゛〜〜〜」

 「良く初体面の人と会話できたわねぇ。偉い、偉い」

 よしよししてくれるウミの手が、こんなに優しいとは思わなったよぅ。

 「さあ、早く夕飯にしましょ。私、おなかが空いて、餓死寸前だよ」

 「……うう、そうだな。夕飯にしよう。俺も、腹減った」

 もう、こんな事は二度といやだぁぁぁぁぁ……。

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