1、出会いの前の嵐
ドタバタコメディー、始動です!
「―――! ―――ちゃん!! ソラ兄ちゃん!!!」
「おわぁい!?」
激しく左右に揺さぶられている気がするけど、なんだ!? 地震か、もしや火事か!? それともゴジ○でも来たのか!?
「やっと起きた、ソラにぃ。ホラ、早く学校行かないと、遅刻記録更新だよ?」
へ? 学校? そんな生易しいものでたたき起こされようとしてるの?
「ぼうっとしてないで、さっさと制服に着替える、着替える!」
「……今、何時?」
と、とりあえず聞いとく。でも、答えが怖い……。
「7時ジャスト!」
親指を立てて、グッ! ってする、妹のウミ。ついつい俺も、グッ!! ってやっちゃった……。アハハ、笑えないや。
「ヤッッッベェじゃん!!」
「だから行ったのに、早く寝ろって」
そんなの関係ねぇ。そんなの関係ねぇ……って、言わせてくれぇぇぇ!!
ベットから飛び上がった俺は、制服を掴んで階段を駆け下りる。その後ろで、
「転ぶなよぉ」
なんて、呑気な妹の声を聞きながら。
あ! 自己紹介遅れました! 俺ふぁ、あふみフォふぁっていいまふ。
「ソラにぃ。そんなに急いで食べると、のどつっかえるよ」
「ダイジョブだよ! じっちゃんばっちゃんじゃないんだから!」
「これ、警告だよ? 若さにかまけてると、あとで痛い目に遭うよ」
「だいふぉふっていっふぇんたほ?」
「……何言ってるか分かんないし。ま、いいや。ソラにぃが言ってる事なんて、気にならないし」
「ひふれいなふぁふだふぁぁ」
「だから、分からないって。……じゃ、お先に」
そう言って、セーラー服姿の妹は去っていた。
が、しかぁし! 俺の危機はまだ去ってはいない! てか、真っ只中!!
残りの味噌汁をかき込んで(妹の手作り。親はいないから、俺と交代制で飯を作ってる)、皿を全部キッチンへ運ぶ。洗うのは……帰ってきてからでいっか。うん、時間がないから許してくれ。
なんて呑気な事言ってないで、洗面台にレッツ・ゴー! おっきな鏡の前で、歯を磨く。そして、顔を洗う。……そろそろ邪魔になってきたな、この茶髪め。黒目できつく、長くなってきた茶髪を睨む。短くなれぇ、短くなれぇ。節約の為に、みじか―――
「って、こんな事してる場合じゃないって!」
制服に急いで着替えて、学校指定の靴を履く。バックを持って、いざ鎌……じゃなくて、学校!!
そんなこんなで、俺の一日は始まる。え? 俺の名前がまだ分かってない? アレ? 途中で言わなかったっけ??
まあ、いいや。じゃあ、気を取り直してもう一度。俺の名前は、有澄ソラ。櫻台中学校、3年C組2番。身長は一番後ろ! から二番目。席も、一番後ろ! から二番目……。体重は……並?
こんな奴ですが、これからよろしくお願いします!!
*******
学校、学校楽しいなぁ♪の、年頃はもう過ぎて、学校、学校苦しいなぁ♪の、年頃になってます。嫌いじゃないんだけど、行きたくない?そんな感じだな、うん。
……お! あの背の高さ! そして、あのスタイル! アレはもしや……奴か!?
俺が目に付けたのは、楽しそうに話しながら過ぎ去っていく同じ制服を着た生徒の中で、独り浮いてる、のに存在感のある奴! 飛び出た頭もそうだけど、一回見たら、二度見したくなる顔? 良くあるじゃん、カッコウィからもう一回だけ♪そんな顔です。
その、細い背中にぃ――― 突っ込む!!
「おっはよぉ!! 波月ぃーーー!!」
「!! ……なんだ、ソラか」
「何、その冷静な扱い! 酷いじゃないか!!」
「どこが?」
「……どこがって、その、えっと―――」
「理由がないなら、無理して考えるな。それより、よく遅刻しないで来たな」
「……いきなりそこいく?」
「悪いか?」
爽やかスマァイル!! 直球ストライク!! バッターアウト!!
うん! 女じゃなくてよかった! ホモじゃなくて、ホントよかった!! もう、こんな笑顔したら、飛び付きたくなるよね!! 直球ストライクでも、手は出さないもんね!!
「奈津……お前って奴は……」
「お前って奴は?」
おい、朝陽にお前の微笑みは眩しいぜ……ちくしょう……。
「何でそんなにカッコカワユイの!!」
「は?」
思わず抱きしめたくなる人って、身近に一人はいるでしょ!? それが、(俺にとってはだけど)波月奈津。俺の友達です!!
グッチョブ、俺!! 良かったな、俺!! こんなにいい人が、こんなに近くにいたなんて、幸せ者だよ。
「笑って登場したと思ったら、今度は泣くの? 忙しいな、ソラは」
再び爽やかスマァァイル!! 瞬殺!! 瞬殺だよ、物本で!!
ていうか、サラサラって、サラサラって前髪が目にかかるのって、カッコよくね!? 男の俺が言うのもなんだけど、本当にカッコよくね!!
「また笑ってる。やっぱりお前って、おかしな奴だな」
はい、おかしいです。おかしい事を、俺は認めます。認めさせていただきます! 王子様!!
「そうそう。こんな馬鹿と付き合ってたら、馬鹿がうつるよ、波月」
そうそう、馬鹿がうつる―――
「って、何でお前がここにいんだよ!!」
「何よ。学校が一緒なんだから、仕方ないでしょ!?」
「だったら他の道行け、矢吹!」
「あんたこそ他の道行ったらどうなの、有澄!」
「んだと!? お前が道帰れば、こんなに不幸な事は起こらなかったね!!」
「何ですって!? あんたがこの道通らなければ、朝からこんなに気分が悪くなる事がなかったわ!!」
「なにぃ!?」
「なによぉ!?」
「まぁまぁ、二人とも。朝から喧嘩はよそうよ、な?」
はい! 王子様!!
「……ま、まあ、波月がそう言うんだったら? 別にいいけど……」
ちっ、黙ってろよ。せっかくのいい雰囲気が、マジ台無しになっただろ!?
……こいつは、紹介したくない。何が何でも、したくない。地球が火星になっても、したくない。けど、適当に。パパッと紹介しときます。
こやつの名前は、矢吹真璃。櫻台中学校、三年。組とかは興味ないんで飛ばしてっと。いつも邪魔そうに見える長い栗色の髪は、だらしなくさげてる。ちょっとカールしてるから、可愛いと思う奴には、可愛く見えると思う。けど、俺は断じて可愛いとは思わない。団栗眼のくせに、負けん気が強い。あ、子犬に似てるかな? うんうん。
「そいえば、長いのに髪結わかないのって、校則違反だろ? いいの?」
「そうだそうだぁ!!」
「あんたも長いでしょ!」
「俺はいいんだよ、肩までだから! お前は、腰まであるだろ!!」
「いいでしょ、別に。授業が始まる時だけ、結わいてればいいんだからぁ」
「そんなの卑怯ですぅ。ちゃんと校則を護っている人に謝りなさいぃ」
「嫌ですぅ。人なんて関係ありませんからぁ」
「それ、屁理屈って言うんですぅ。ちゃんと身だしなみを整えないから、モテないんですぅ」
「屁理屈じゃありません〜。私の理屈ですぅ。ていうか、身だしなみ整えてないのは、あんたの方ですぅ。だから、モテないんですぅ」
「絶対に、違いますぅ。俺はぁ」
「絶対に違いません〜」
「神に誓えますかぁ?」
「誓っていいわよぉ」
「ファイナルアンサァ?」
「ファイナルアンサァ」
「……」
「……」
「……残念! 神は許してくれませんでした! て、事で、結びなさい!!」
「それ、あんたの勝手じゃない! 卑怯よ、卑怯!!」
「やるのか?」
「やるの?」
「そんな事してる間に遅刻するよ」
「「へ?」」
ゲッ! 矢吹と声重なった!! ……ショック。
「あっ! ヤバい! じゃね、波月!!」
「おう、転ぶなよぉ」
手を振る王子と、あっかんべぇをしてくる下町の少女。うん、つり合わない。気に食わない。俺には挨拶なしかよ、あの小娘!!
「さあ、俺らも行こう。遅刻は嫌だからね」
「はい、おう―――」
「おう?」
ヤッベ! 王子様って言いそうになっちゃった!! 焦るな俺、落ち着くんだ、俺。よし、深呼吸!!
「?? 変なの、ソラ」
また微笑み! や、やられた……。その笑みは反則だよ、波月君。
「さ、行こう」
「あい、波月様」
「??」
俺、今、幸せッス!!
他にも連載してる小説があるのに、新しい連載を始めた、馬鹿な下弦デェス。以後、お見知りおきを。
さてさて、まだヒロイン的なポジションである妖精は出てきてませんが、次回、登場予定です!
こんな怠惰な作品でよければ、これからも読んでください!